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プロローグ 戦場にて

 その国同士はずっとずっと争っていた。

 北の海に面する領土を持つフィルガンの蛮族の猛攻は激しく、諸王国の連合軍は神を信じ戦う者が多くけして折れないために、戦闘は長期化し泥沼と化していた。




「異教徒に粛清を!」


 おぉぉ! と響く騎士たちの声にに大気がびりびりと震え、それぞれの武器を手に彼らは走っていく。わたしもまたそれに後れを取らないようにと走り出していた。


「あの紅の甲冑」


「あれが噂の脳筋ゴリラか!」


 走りざま聞こえた揶揄は聞こえない振りをする。わたしに今必要なのはその言葉ではない。甲冑の重みに助けられるようにして、さらに足を進める。兜をかぶっているから視界は悪いけれど、目指す獲物さえ見えればそれでいいのだ。


「やあやあ! 遠からんものは音に聞け! 近くば寄って目にも見よ!」


 走る中で声が枯れてしまわないように、先ほど喉を潤しておいて本当によかったと思う。喉も裂けよとばかりに張り上げた声は、果たして周りにいる者たちに無事に聞こえたようだった。


「紅の獅子だ!」


「フォルトゥリオンが来たぞ!」


 ポールアックスを肩に担ぎ直す。こんなゴツい形をした武器なのに、この肩に担ぐ形を淑女の型というのはなかなか皮肉がきいていてわたしは好きだ。


「マリー・フォルトゥリオン!」


 すると相手方の陣列からひとり、若武者らしい男が出てきた。わたしより細っこい体格をしている。軽装鎧と両手の剣が印象的だ。


(女と侮ったか)


 ちっと思わず舌打ちしていた。大将格を呼び出せるとは思っていなかったが、こんな若い男ひとり倒したところで名をあげられるとは思えない。


「我こそは、百雷のミゲール! お相手仕る」


 二つ名があるとは思わなかった。軽装鎧はよくよく見れば使い込まれていていくつもの傷が見える。わたしは少し嬉しくなって、獲物を構えた。




 相手の男はひらりひらりとわたしのポールアックスを交わしていく。この武器自体に悪いところはない。わたしの器量と男の器量の違いなのかと思うと焦りも出てくる。リーチの長さも今は関係がない。男はまるで風のように距離を詰め、そして離しわたしを翻弄する。何度も訓練をしていても、やはり目が回る瞬間はある。どうしても、そこだけは鍛えきれなかった自分を恨むしかない。あごの下から思い切り突き上げを食らった。舌を噛まずに済んだのだけはよかったと思うが、頭がぐらぐらとしてそのままバランスを崩されて地面に引き倒された。


(ああ、ここでおしまいなのか)


 兜を開けられ顎のあたりをもう一度を思い切り殴られる。そこでわたしの意識は飛んで、真っ暗な闇の中へと沈んでしまったのだった。

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