高校入学したらデスゲームに参加させられました。
「次は在校生代表挨拶です」
「いや〜こんな空気の中で続ける〜サッちゃん!? 」
─────!?
先程のこともあり、体育館内はざわついた状態であったが、気にすることもなくステージ端でマイクを片手に淡々と司会進行を続ける女性。
そしてその横では、めんどくさそうな表情を浮かべながらゴネているダラシない男の姿が見えた。
あの人が生徒代表・・・大丈夫なのか?
体育館内のざわつきは変わらないが、皆が登壇する男の姿を目で追っていた。
「最英学園生徒会長八神秀人さんの登壇です」
司会の女性は表情一つ変えずに司会進行を務めている。
すげーなこの人……
「え〜初めまして、 僕がこの学校の生徒会長を務める八神秀人です。 皆さん、 ご入学ご愁傷様で〜す! 」
「 ───── 」
より空気を悪くさせたであろう一言。
気の毒だが、 完全にスベったな……
「え〜皆さんは、 わざわざ死にに来たおバカさん達の集まりです。 国に強制されても君たちなら余裕で抵抗することも容易であったばずなのに・・・ なぜ承諾したのか? 」
ぐだくだになるとは予想していたが、いきなりとんでもない事を言い出しやがったな・・・
だが、何故だろうか? 嫌な感じではない。 むしろこの人の言葉には説得力すら感じられる。
あんなダラシない見た目のダメ男の言葉なのに不思議だ・・・
「それは、 君たちに自覚があるのかないのかは知らないが、 自分なら何でも解決できる。 ヒーローになれる。 と慢心していたからだろ? 」
認めたくはないがそうかもしれない。
自分たちなら、 たとえ武力行使になったとしても十分に戦えただろう。 だが、 そうしなかったのは、 心のどこかで自分にしか出来ない。 と思っていたからだろう。
「入学して聞かされた内容はクラス団体での殺し合いデスゲーム、 そりゃビビるよ、 けど〜 入学前までの威勢はどうしたんだい? そんなソワソワして」
あの男…… 俺たち1年をわざと煽っているのか?
「でも、 新入生には安心して欲しい! 僕たち上級生がちゃんと君たちを殺してあげるからね! 」
この男は平然…… いや、 爽やかで清々しい表情で笑みを浮かべながら口を開く。
「まぁ〜 そんな感じだから、 先輩たちに殺されないように頑張ってくれたまえ」
男は一礼してマイクを置いた。
もちろんスピーチが終わっても拍手をする者は1人もいなかった。
「 ─────あっ!!! 」
何かを思い出したかのように生徒会長は置いたマイクを再び手に取った。
「忘れてた〜 殺されたくない1年生は是非とも生徒会へ入ってください! 命は保証します! 以上! 」
そう言い放つと生徒会長は登壇時とは打って変わって嬉しそうな様子を浮かべ、 軽い足取りでステージ上から降りていった。
あの人とは関わりたくないが、 生徒会か…… ないな
その後も淡々と彼女は司会進行を全うした。
「次は殺し合いデスゲームのルール説明です」
入学式に聞く言葉じゃねーぞッ!
ツッコミたくもないのにくそ…… ツッコんでしまった。
「本日は時間の都合上、 簡単に説明させていただきます。 詳しい詳細は、 後ほど配布される資料をご覧くださいませ。」
おい! 1番重要なことなんじゃねーのか !?
もっと割愛する場所あっただろ !!
「それでは、 クロイさんお願いします」
その言葉とともに、 幼女魔王と登壇していたスーツ姿の男がステージ上に現れた。
「生徒の諸君、先程はすまなかった。魔王の機嫌を損ねるわけにはいかんのでな」
生徒の機嫌よりも、あの幼女の機嫌を優先するほど危険な存在ってことなのか…?
俺はそんな事を考えながらも彼の話に耳を貸した。
「先程も言った通り、簡単にだけ説明させてもらう。
1.各クラス同士で殺し合いをしてもらう。
殺し合いは最後の1クラスになるまで行われる。
2.クラスリーダー
クラスごとに1人リーダーを決める。
リーダーの決め方は問わない。
3.規定時間外での戦闘は禁止する。
学校の定める時間外で異能力者同士での戦闘が行われた場合、関与した全ての者を処する。
4.3年間以内に決着がつかない場合、世界は消滅する。
以上が大まかなルール説明になる。」
───流石に笑えない。 異能力手に入れてるから殺し合いデスゲームするって事だろ?
そもそも、 世界が消滅しようが知ったことかよ !
って叫びたいけど、 そんな勇気は俺にはない。
「世界が消滅しようが知ったことねーだろ! 」
「俺たちが殺し合う意味はねーだろうがッ! 」
「そうだ! 俺たちを勝手に巻き込むな! 」
生徒たちから波紋が広がる。
俺の代わりに叫んでくれてありがとう!
こうなる事も分かっていたのだろう。
スーツ姿の男もとい、 クロイだったか? は質問や意見に回答する事もなく話を続け始める。
「5年前に神々は人間に誤って与えてしまった異能力が後に自分達の脅威になると恐れ、 魔王率いる魔族達に始末するように命じた。 だが、 魔王達は人間を脅威とは考えていない。 故に、 奴らは遊び感覚で殺し合いを強要してきた」
いきなり、 神々やら魔王とか無茶苦茶な事を言われてももう驚かない自分が怖いよ。
仮に殺し合いをしたとしても、 魔王が世界を消滅させる可能性はゼロじゃないだろう。
それに、 魔王1人くらいなら異能力者全員でかかれば勝てるのではないだろうか?
「殺し合いが終わっても魔王が世界を消滅させるのではないだろうか? 自分達なら魔王に勝てるのではないだろうか?と思った者も多いだろう」
ピンポイントで心を読んできやがって…
「まず、 君たちでは魔王を殺せない。 奴らは魔力を持つ者。 奴らは異能力が効かない存在なのだ。 そして強力な魔法が使える。 そのため、 能力を持たない私達では兵器を持ってしても近寄ることすら叶わなかった」
上には上がいるってことか……
「だが、1クラスだけが生き残った際、 魔王は世界を消滅させることは出来ない。 」
「 ─────! 」
「この世界では、 魔力ある者は一定数の異能力が存在していない限り、 この世界に現界できないからだ」
なるほど、 その一定数がクラスってことね……
なんとなく分かった、 ついでにクロイって人は不器用で説明もスゲー下手くそって事も……
「私からは以上だ」
そう言い放ち、 クロイはステージの袖へと姿を消した。
不満や疑問も多く残っているのだが、 ひとまず開会式は幕を閉じた。
週2で投稿していきたいと思います。




