ひとときの罵倒と買い物。
是非読んでみてください。
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「じぁ、 戦闘は任せたわよ」
「 ───── 」
ん!?
結構カッコいい感じに決まったと思ったんだけど?
そんだけ? 涙流してハグって流れは……
うん、 期待した俺が愚かだった。
「そうと決まればッ! さっそく倒しに行くわよ!」
「「 ────なっ!? 」」
流石に俺と同様に霧雨も驚愕していた。
「早いほうがいいわよ、 どの道戦わなきゃいけない訳だし、 まだ情報が知られてないうちに倒すべきよ!」
「それはそうだけど……」
「私は反対です、 相手の情報を手に入れてから、 確実に倒して行くべきです」
「霧雨の言う通り、 今はまだやめた方がいいと俺も思う」
「 ん…… 分かったわよ」
少しご立腹な様子ではあったが、 月影も納得してくれたらしい。
「せっかくだし、 夕飯くらい……」
「いや、別に」
「同じくです」
なんだこの状況
ご飯でも食べて行けば?って誘いを一周で断りやがったぞ。
それも2人
え? お母さん的な人の登場とかないんだから勘弁してくれよ!
まぁまぁ遠慮しないで〜 的な救済が欲しい。
めっちゃ気まずいんだけど……
ヤバイ、 ここはひとまず冷蔵庫の中にある物を確認してみて……
俺は慌ててキッチンへと向かう。
「───────── !!」
冷蔵庫を開けて気づいた。
「どうしたのよ?」
「えっと、 その…… 冷蔵庫の中、 空っぽで……」
忘れていた…… このマンションには昨日引っ越して来たばかり、 買い物にも行ってないし、 冷蔵庫も当然のごとく空っぽだ。
俺と同じくらい焦った様子の月影と霧雨の様子を察するに…… 俺は質問する。
「昨日の夕食は……?」
「外食」
「同じくです」
3人全員、 食べるものがない状況。
「買い出しに行きますか?」
「そ、 そうね! 仕方ないから私も買い物に付き合ってあげるわよ」
「近くにスーパーありますし、 私もご一緒させていただきます」
「10分後に変態の家に集合」
「変態って呼ぶのやめねもらえませんか…… てか、 制服のままで別に」
「雲雀くんはお馬鹿なんですね」
霧雨にまで罵倒された。
てか、 初めて名前呼んでもらったんじゃ……!?
そんな嬉しくないがな。
元の姿で名前呼んでもらってたら、 どれだけ嬉しかったか。
俺は着替える理由もその時、 しっかりと理解した。
「最英学園の生徒ってバレないようにってことか?」
「 ──────なっ!?」
「はい、 罵られて気づくだなんて……」
「やめろやめろ!」
言い出した張本人が驚いていたのを俺は見逃さなかった。
おおよその予想はつく。
今日はかなり気温が高かった。
ただ汗をかいたから、 着替えたかったんだろう。
「らしいですよ、 月影さん」
「分かってるわよ、 変態! 死ね!」
「 ────── 」
言わなきゃ良かったと後悔した。
────数分後、 俺たちは買い物へ出掛けた。
女の子2人と買い物とか、 なんかスゲーそわそわする。
いや、 1人か……
霧雨はもちろん、 おデブに変身していた。
「とりあえず、 1週間分くらい……」
「私、 自炊できない」
「マジですか?」
「は? 料理できなくて悪い?」
月影からの唐突なカミングアウト&逆ギレで、 俺は驚きと恐怖のダブルパンチを喰らった。
「じゃぁ…… 毎日外食なんですか?」
「そんなお金ないわよ」
「じゃぁ、 どうするんですか?」
「は? 決まってるじゃない、 料理を作ってくれる両親が居ないんじゃ、 アンタしか居ないじゃない」
「 ─────え!?」
「は? あんた舎弟でしょ?」
くっそ…… さっきは夕食の誘い断っておいて今度は飯を作れだと……
「けど、 さっきは夕食いらないって……」
「ええ、 変態とご飯を食べても美味しくないもの」
月影は悪役令嬢の遥か上にいる悪女だ。
───10分ほど歩くと、 ようやくスーパーが見えてきた。
もちろん、10分間俺はののしられたり、 無視されたり、それはエグい時間でした。
一応言っておくが、 俺はMじゃない。
歪んだ性癖の持ち主などでもない。
純粋無垢な男子高校生である。
「やっと見えて来ましたね」
「案外近いわね」
霧雨と月影は楽しそうにおしゃべりしている。
数歩遅れて俺は後ろを歩く。
俺の目に映る光景は、 美少女が2人仲良くおしゃべりしている様子なんかじゃなく、 美少女とデブが楽しそうにおしゃべりしてる光景だ。
実に怪しからん。
「じゃ、 買い終わったら出口の近くで集合よ」
そう言い放って、 一旦バラバラに別れた。
正確には、 霧雨と月影は一緒に買い物。
俺は1人になった。
ぼっちショッピングだ。