入学式は一人の命と共に幕を閉じる。
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堀内が自殺したように見せかける。
自ら名乗りを上げた 八代勇気は、 自信ありげに話す。
「俺の異能力、 『七色の声』を使えばな」
「いいのかい? 自分の能力を皆に知られてしまうが」
長谷川が尋ねる。いや、 探りを入れているって感じか……
「別にいいぜ、 長谷川だって皆んなに能力知られてんだろ? 俺も知られたって構わねーよ」
「そうか、 ならいいんだが…… その能力でどうする気だ?」
「簡単だ、 俺の能力『七色の声』は、 一度でも聞いた事のある声なら、どんな声でも真似できる」
八代勇気、 4月なのに日焼けの跡があり、 正に体育会系って感じの男だ。
ほんと、 見た目とは全く似合わない能力だな。
「俺が堀内の声で窓から叫ぶから、 そのタイミングで死体を窓から落としてくれ」
「 ──────! 」
ここは4階だぞ……落とした肉体はバラバラだろう。
とんでもねーサイコパス脳筋じゃねーか!
ほんと、 見た目通りの脳筋体育会系男子!
「誰が死体を運ぶんだ?」
「そりゃ…… えっと……」
八代はそこまで考えてなかったらしい。
「俺がやる……!」
1人の男が、 その胸糞悪い役回りを自らやると名乗りを上げた。
「直也……お前、いいのか?」
原木直也、 長谷川の味方をしていた2人組のもう1人である。
「構わない、 これかだって人を殺す事になるんだ……こんくらい当然だ」
「俺にも協力させてくれ」
最後にもう一人、名乗りを上げた生徒がいた。
「長谷川……」
「僕では、 彼を殺す事が出来なかった。 本来なら僕がやるべきだった…… これくらいは手伝わせてもらうよ」
1人のクラスメイトの死で、 3人はデスゲームへの覚悟を決めたのだろう。
「よし、 早いこと始めるぜ」
そう言い放って、八代は窓を開けて、 大きく息を吸い込む。
「『こんなふざけた学校があるか! 僕には無理だッ! 人殺しなんて出来ないッ!! 僕には耐えられない! ああああああああああああああ!!!』」
八代が手で合図を送ったと同時に、 原木と長谷川の2人が堀内の死体を窓から投げ捨てた。
「 ───────!!!」
真っ逆さまに死体はコンクリートに叩きつけられ、血が飛び散る様子が見える。
死体は見るも無残な姿であった。
流石にそれに気づいた他クラスの生徒が窓から顔をのぞかせているのが分かる。
自殺に見せかける事に成功したのに、 まったく笑顔がない。
分かってる、 自分たちが正しいことをしていないと自覚しているからだ。
今感じているこの罪悪感を感じなくなったら。 なんて考えたら吐き気がする。
─────こんな形で、 入学初日は幕を閉じた。