7.「アトロ帝国街」
ギルドを出て、街を見学する。家々はどれも赤いレンガで出来ており、四角い壁に三角の屋根に煙突と、軒先に置かれた植木鉢には色とりどりの花が咲いていた。
商店街通りに出ると、鍛冶屋や八百屋や雑貨屋など、様々な店が軒先を連ねていた。それが物珍しいのか、キョロキョロと忙しなく辺りを見回しているエンベリラ。すると突然、鎖のじゃらじゃらという音が響いた。音の聞こえた方を向く。
「おいローサー、なんだあいつら」
「ん?………あぁ、奴隷商人と奴隷たちだよ」
ローサーの顔が曇る。
「どれい?」
「あぁ、報酬も貰えずに働き続けさせられる人たちのことだよ」
エンベリラは改めて奴隷商人たちを見る。奴隷商人はきらびやかな装飾、シルクで出来た服を着ている一方で、奴隷たちはみな、古い布切れを纏っただけの姿に、手枷と足枷がしてあり、鉄の首輪をしていた。ニヤニヤと笑う奴隷商人とは対照的に、奴隷たちは暗く疲れきったような表情をしていた。見ていて、こちらも気分が下がってくる。
「………このアトロ帝国では、まだ合法的に奴隷の売り買いが出来るんだ。ほんと、胸糞悪い……。いくぞエンベリラ」
「………おう」
ローサーの後についてこの場を離れる。路地裏を抜け、人気がない場所までやってきた。はあ、と深いため息を吐くローサー。
「アトロ帝国はこの大陸一番の国だから、意見する国も少ないんだ。攻め込まれたら、終わりだからな。それでも、他の大陸の国から意見はされているんだ。奴隷を廃止せよ、ってな」
「ふーん。人間って面倒臭いな。ただ皆で飯食って眠るだけじゃダメなのかよ」
そのとき。
「――!!!!」
幼い少女の、叫び声が誰もいない路地裏に響き渡った。