6.「コーヒー」
ギルドの天井から黒い紐のようなもので繋がっている魔法具の照明がギルド内を黄色く照らす。魔光源はライトクリスタルという魔鉱石から供給しているようで、ギルド内で人が忙しく動いて暖炉のような物に魔鉱石を投げ入れているのがよく見える。
ヒューズキャタピラーを倒したローサーとエンベリラは、エイトにコーヒーを淹れてもらってギルドのテーブルで寛いでいた。そこへエイトが自身の分のコーヒーを持ってローサーたちのテーブルに腰を下ろした。
「それにしても、エンベリラは相当速いドラゴンなのね。先に向かったはずの冒険者たちが、ヒューズキャタピラーの死骸を見て驚いていたわ」
エイトがコーヒーに口をつける。それを見ていたエンベリラが、同じようにコーヒーに口をつけたが、ドラゴンの舌には合わなかったのか、べっ、と舌を出して渋い顔をしていた。
「ところで、これからどうするつもりなの?」
「あぁ、そうだなー……」
ぎっ、と椅子の背もたれにもたれ掛かる。
「まだ街をちゃんと見てねぇから、街の散策でもしようと思うんだ。こいつも連れてな」
ポン、とエンベリラの頭に手をのせる。当のエンベリラは何をするのか分かっておらず、自身の頭に乗せられたローサーの手を訝しげに上目遣いで見ていた。
「それがいいかもね。改めて街を見るのはいいことよ。新しい発見もあるだろうしね。あんた、どのくらいお金を持ってるの?」
「んーと、金貨4枚と、銀貨14枚、銅貨5枚だ」
「少ないわね」
エイトが顔をしかめる。
金貨は1万円、銀貨は1000円、銅貨は100円と考えると、少ない方である。エイトは改めて、ローサーがどうやって冒険者を続けていられるのか疑問に思ったのだった。
「まぁ、食料は魔物から回収できるし、正直、金って使い方分かんねぇんだよなー」
「………あんたらしいわ」
「なぁ、かねってなんだ?」
「え?あぁ、物を買うときに使う物よ」
「ふーん……」
エンベリラは、自分から聞いたものの、興味がないのか、素っ気ない返事を返すと、キョロキョロと辺りを見回して、面白いものが無いか探しているようだ。
「じゃ、そろそろ行くぞ、エンベリラ」
「んー………」
「いってらっしゃい。もう帰って来なくていいわよ」
「相変わらず酷いやつだな、エイト……」
ローサーが椅子から立ち上がると、それに続いてエンベリラも立ち上がる。
「さぁ、街見学といこうか!エンベリラ!」
「おー!」
コーヒー代をエイトに払い、ローサーたちはギルドを後にした。