5.「ヒューズキャタピラー」
「ヒューズキャタピラーって、村人でも追い払える弱い魔物じゃねぇか。どうしてそんなに焦ってるんだ?」
近くにいた商人らしき男が、やって来た男にそう返す。
「それが、かなりの量で村人では捌ききれねぇんだ! すでに負傷者も出ている!」
再びギルド内が騒然となる。数人の冒険者らしき人たちは、すでに立ち上がり、男の横を通り抜けていく。現場へと向かったのだろう。
「僕らもいくぞ、エンベリラ! 乗せろ!」
「やだ___」
『ゴッ!』
しゅうぅとエンベリラの頭から煙が上がる。
「~~~っ! どんな力で殴ってんだよ! 化け物ローサー!」
「いいから乗せろ! 間に合わなくなったらどうすんだ!」
「ああもう分かったよ!」
人間化を解き、竜の姿になる。
「さっさといくぞ!」
「分かってらぁ!」
ローサーがエンベリラの上に飛び乗る。直後、爆風を生み出し、ギルドの扉を突っ切る。
しばらく飛んでいると、街外れの農村で、3mはあるかという巨大な紫色の芋虫が畑を食い荒らし、村人を襲っていた。
「グゥルガアァァァァァアッ!!」
ドスンと地響きを鳴らして地面に着地し、大きく咆哮を上げる。近くでヒューズキャタピラーと対峙していた村人たちがエンベリラの咆哮を聞き固まる。が、ローサーが降りてくると、村人たちは安心した表情を見せた。
「援軍が来たぞぉッ! 諦めるなぁッ!」
「「「おおっ!!」」」
ローサーがエンベリラに指示を出す。
「僕たちもやるぞ! エンベリラは村人に気をつけながら戦え!」
ローサーが鞘から剣を抜き、素早くヒューズキャタピラーに素早く近づく。
「ギシャアァァァァァァァァアッ!!」
ヒューズキャタピラーが大口を開け、ローサーに噛みつこうとした刹那、しゅっとヒューズキャタピラーが真っ二つに裂ける。ローサーが剣で斬り倒したのだ。
「やはり速いな………どうなってるんだ? あいつ」
「感心してないでお前も戦え!」
「へいへい」
すぅ、と息を吸い込むと、辺りに炎のブレスを吐き散らす。ヒューズキャタピラーたちが炎に焦がされ、悲鳴を上げながらボロボロに朽ちていく。
数時間後、辺りはヒューズキャタピラーの死骸で溢れ返っていた。
「ありがとうございました。畑の損害は激しいですが、死んだ者は1人もおらず、こちらとしても助かりました。本当にありがとうございます」
村人の1人が頭を下げる。
「いえいえ…んじゃ、帰るぞエンベリラ」
再びエンベリラに乗ってギルドに着く。中から赤髪長髪、整った顔立ち、高身長の鎧姿のエイトが出てくる。
「あら、案外早く終わったのね。私も久々に行こうと思っていたのに」
「残念だったな。お前の出番はなかったよ」
「まぁ、いいわ。さ、ギルドの中で一旦落ち着きましょう?」
「ああ、そうするよ」
エンベリラが人間化したのを見届けて、三人はギルドの中へと入っていった。