4.「ギルド」
ローサーと共に街へ出てみる。完全に人間に擬態しているからか、誰もエンベリラを怪しむ人はいないようだった。
数分後、街の中心部、赤いレンガでできた円上の大きな建物が目に入る。看板には『アトロ帝国立ギルド』と書かれてある。どうやらギルドに着いたようだ。
門番の横を通り、木製の重い扉を開けると、中は多くの人で賑わっていた。依頼をしに来たであろう商人や村人に混じり、クエストを受けに来ている冒険者達が大勢いた。
ローサーは人の波を真っ直ぐ通り抜け、『クエスト受付口』と書かれた場所へ向かう。そこにいた女性にローサーが話しかける。
「エイト受付嬢!使い魔の申請に来たぜ!」
「あらローサー。まだ生きてたのね。てっきり暴虐竜に食べられたのかと思ったわ」
「相変わらずの毒舌野郎だなお前……」
エイトと呼ばれた受付嬢は、戸棚から書類を一枚出して、ローサーに問いかける。
「それで?使い魔ってのは何?小鳥のことかしら?」
「んなわけねぇだろ、こいつだよ」
ポン、とエンベリラの肩に手を置く。エイトはしばらくポカンとしたあと、呆れたようにため息を吐く。
「……あのねローサー。人間は使い魔にできないのよ。人間を使いたいなら奴隷でも買ってきたら?」
「いや、こいつはドラゴンだ」
「はあ?じゃあ、そいつがドラゴンだという証拠を見せなさいよ。できないでしょ? ん?」
「お前本当に口が悪いぞ?そんなんでよく受付嬢なんてやってられるな……。エンベリラ、ドラゴンになってくれ………後悔しないな? エイト?」
「えぇ、良いわよ」
コクリ、とローサーがエンベリラに頷く。すると、エンベリラの体はローブを取り込み、肥大化していく。丈夫な硬い鱗が現れ、凶悪な牙と爪が伸びる。あっという間にギルドの高い天井近くまで大きくなった。辺りが人々の悲鳴と困惑で騒然となる。
「……これでどうだ? 信じてくれたか?」
得意気なローサーとは正反対に、エイトは口をパクパクとさせ、顔を青く染め上げていく。
「わ、分かった、分かったから! 元に戻しなさいローサー!!」
「へいへい、戻ってくれエンベリラ」
しゅっと、小さな元の人間の姿に戻る。
「………はぁ、ほんと、あんたってやつは。何をしでかすか分かったもんじゃないわね………」
エイトは呆れながらサラサラと書類に何かを書き込んでいく。
「それで? そのドラゴンの名前は?」
「エンベリラだ。それで登録頼む」
「オーケーよ」
『エンベリラ』と、エイトは書類に書き込む。
「はい、これで使い魔としてそのドラゴンを扱うことができるわ。何かクエストでも受け____」
「大変だ!!」
バン!と扉が音を立てて開かれる。扉を開けた男は息を切らしながら早口に叫ぶ。
「郊外にヒューズキャタピラーが現れた!!」
ギルド内が、再び騒然となった。