3.「エンベリラというドラゴン」
屋敷の中はたくさんの本で溢れ返っていた。魔導書や古い童話、子供用の絵本まであった。
「やっぱ本の量エグいな」
キョロキョロと辺りを見回すローサーにエンベリラは顔を寄せ、小声で耳打ちする。
「なぁ、なんで俺なんだ?」
「ん?」
「だから、なんで俺を使い魔にしたんだよ」
「あぁ、それは…………」
くるりとエンベリラに振り向く。
「丁度いい場所に丁度いいヤツがいたからだよ」
「………お前マジふざけんな」
エンベリラが深くため息を吐いてそっぽを向いていると、ベトルが奥の部屋からやってきて、破壊された玄関を見て唖然とする。
「……なんでぶち破ってくるのよ………人化しなさいよ、あなたドラゴンでしょ?」
ゴトッ、とエンベリラの前に大きな鏡を置く。
「ほら、自分の姿がよく見えるでしょ?」
エンベリラはじっと鏡の中を覗きこむ。
凶悪な禍々しい黒い爪、強靭な腕から生えた立派な赤い翼、シュッとしているが決して柔らかくはない硬い体と赤い鱗、見つめた者を凍らせるかのような恐ろしい金色の目。エンベリラは、改めて自分が凶悪なドラゴンであることを認識した。
「種族はドラゴンのワイバーン型。角無しの赤い炎系ドラゴン、ってところかしら」
「そ、そこまで分かるのか……」
「当たり前でしょ? 私はエルフよ」
壊れた玄関に近づきながらベトルが言い放つ。
そして、振り返る。
「あなたたち、これからどうするの?」
「ん、ギルドに行ってエンベリラを使い魔として申請してくる」
「それじゃ、なおさら人化した方がいいじゃない。ほら、出来るんでしょ?」
「お、おう」
いきなり呼ばれて驚くも、エンベリラはじっと集中する。すると、70mもあった体が小さくなっていく。閉じていた瞳を開けると、目線はローサーより少し高い165cmほどになっていた。鏡を覗きこむと、そこには、赤い短髪の黄金の鋭い目付きの少年が裸で立っていた。
「あら、意外と身長は低いのね。服はこれでも着ていなさい」
どこから出したのか、ベトルが麻のローブのような服をもって、エンベリラに近づく。エンベリラは、少し苦戦しながらも服を着る。
「………どうだ?似合うか?」
「えぇ、とても似合っているわ。」
「じゃあ早速、街のギルドに向かうか!」
ベトルにお礼を言い、壊れた玄関を通って街へと歩を進めた。
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