2.「町へ」
「とりあえず、町に行こうか。」
人間ローサーがそう言い、ついてくるよう促される。暴虐竜ことエンベリラは渋々ローサーについていく。
道中、エンベリラはローサーをじっと観察する。
身長160cmほどの小柄な体だが、筋肉がついていてスタイルはいい。髪は黒髪で長く、後ろの低い位置で結ってある。顔は童顔で鼻は小さく目はぱっちりと開いた黒目。服装は麻でできた動きやすい服でできており、大剣を背負い、ターバンを頭に巻いている。
「ん~?どうした?」
あまりじっと見すぎたのか、ローサーが怪訝そうにこちらを見る。
「何でもねぇよクソドS」
「…お前、斬るぞ」
そんなこんなで町につく。町の人々はエンベリラを見て散り散りに逃げていく。
「……なあ、俺来ちゃダメなんじゃねぇの?」
「大丈夫大丈夫♪」
そして、大きな屋敷の前でローサーが足を止める。屋敷は随分と古びていたが、綺麗に清掃されているのか、雑草一つ生えていなかった。
コンコン、とローサーが屋敷の扉をノックする。しばらくして、若い女が出てきた。オレンジ色の髪、華奢な体つき、大きなぱっちりとしたピンク色の目をした女は、一目見ると少女とさして変わらないようだった。が、ローサーから出た言葉は、
「よう!ベトル婆!」
『ゴンッ!』と、鈍い音がローサーの方からした。女、ベトルが持っていた大きな本でローサーを殴ったのだ。
「失礼ね。私はまだ1000年しか生きてないピチピチのエルフの18歳の少女よ」
エルフ。多くの知恵を持ち、長い時を生きる種族。魔法を操ることが得意な人間の種族だ。ふと、ベトルがエンベリラに気づく。
「って、このドラゴン、死魔の森にいた暴虐竜じゃない!あんた、なんてものを連れてるの!」
ベトルが魔法を放とうとするのを慌ててローサーが止める。
「待てって!こいつは僕が討伐して、今では僕の使い魔だよ」
「使い魔!?」
ベトルは呆れたようにため息を吐き、額に手を当てる。
「あんたってやつは……ほんと何考えてるか予想すらできないわね……」
「まあね♪それで今日はこの暴虐竜、エンベリラについて調べて欲しいんだ」
「はいはい……中に入ってちょっと待ってなさい」
「はーいよ」
ローサーに続き、その狭い扉をぶち破りながら、家の中に入った。