AIアシスタントも投げ出す
ぬぁ〜にががネットさえ繋がれば大丈夫!だ、楽観視していた自分を殴りたい。本当誰だネットにさえ繋がってしまえばこちらのもんだと言ったのは!私だけれども!完全にネットに繋がらないならこんなに憤ることもないのに、中途半端に繋がるところと繋がらないところがあるのが解せぬ。頭ゆるゆるの本店だから二号店出したい。二号店も御察しのbit数だろうけど。いやbit数あるだけやっぱり二号店の方が思考力がある可能性に賭けたい。
また話逸れた。この状況どうすればいいんだろ。ヘイ、アンドレこの状況の打破の仕方とかAIアシスタントに声かけしたい。きっとAIアシスタントも投げ出すだろうけど。
「ーーーーーー?ーー、ーーーーーー!」
「ー、ーーーーーーー?!?!ーーーーーー、ーーーーーー、ー、ーーーーーー!!」
「ーーー!ーーー、ーーーーーー」
「!!!ーー!?!ーーーーーー、ーーーー」
「ーー、ーーーー…」
ダメだ、全くわからない。何語?フランス語、ドイツ語、英語あたりなら雰囲気でなんとなくわかる気がするんだけどなあ。ごめん嘘ついた私は日本語以外喋れないし聞き取れないのでおかえりください。ついでに神様仏様どうか私を家に帰してください。
「ーーーー!」
やっべ目があった。バトルが始まっちゃう!なわけあるかーいって言えたら良かったんだけどめちゃ怖い。何この目力。歌舞伎?歌舞伎界の方?蛇に睨まれたカエルなんてレベルじゃない。あなた、目力で人を殺せますよ。
「っいたい!」
「ーーーー!ーーーーーーーー!!!!」
「ーーーーー、ーーーーーーーー。」
力強く髪の毛を引っ張られ、ぶちぶちと髪の毛が抜けていく。痛い。頭に十円ハゲができたら絶対に呪ってやる。床に落ちていった髪の毛を見てそう誓う。未だに背後で髪の毛を掴んで口論している。もうこの場からどうこうとかわがままは言わないからいい加減痛いから離してくれないかなあ、とひっそりとため息をついた。
何分、いや何十分経っただろうか。正確な腹時計はあいにく持ち合わせていない。時計かスマホがあればな、と思うが拘束された身だ。持っていても使えなければ意味がない。
一ついいことがあったと言えば口論がデットヒートでもしたのかいきなり離されて床と熱烈なキスをしたことである。この世界でのファーストキスはここの床かあなんて悲しい。私好みの男性か女性、もしくはせめて犬とか猫とかがよかった。いや待てよ、この方法で行くとタオルが詰め込まれてたからこのキスはセカンドかな?まあどちらにしろ虚しいことこの上ないが。
この喧騒は私の取り扱いについてなんだろうなあとぼんやり渦中の中心でぼんやりと高みの見物をしてみる。髪の毛を解放されたことで精神的に余裕がでてきたのかわからないがここに連れてこられたときよりかは幾分冷静になれた。
こういうときって、何をすべきなんだっけ。平和な日本という国で育ってきたためこういったときの対処が何一つわからない。日本で育ってもこういったときどうすべきか知っている人、わかる人がいるんだろうな。私はこういう事態になるとわかっていたら勉強しただろうか。しなかったと思う。
あ、ああ〜やれることあったわ。現状把握だわ。多分牢屋の中にいたときの方が知能が高かった。そんなことを思った。
まあ、状況把握と言ってもロープでぐるぐる巻きにされ床に転がらされてる芋虫状態の私ができることといえば気がつかれませんようにと、祈りながら息をあたりを見回すくらいだ。それでも一抹の希望を信じる。
口論はまだデットヒートしている。今のうちにゆっくりとここを観察することにした。
一つ、この場所はログハウスの様な木材でできた建物だということ。
二つ、口論している人(?)は忌まわしき私の髪の毛を引っ張って抜いていったヤツ合わせて七人だと思われる。
声優オタクもやっていた私の聞き分けが衰えていないことを信じよう。
三つ、七人以外にも人がいるということ。
こればっかりは気配に疎い私にはさっぱりなのだが、足音がするから多分そうなのだと思う。流石に足音の聞き分けまではできないけど、歩き方がうるさいやつと静かな人、それから普通に歩いている人。もしかしたら足音を当てずに歩いている人もいるかもしれない。そう考えると十人以上はいる。以上のことが推測される。
うん、シャーロックホームズだったらこれ以上の情報を得て、その上でこの窮地を切り抜けられるんだろうな。あいにく名探偵じゃないし、兵隊でもない。縄抜けや関節が外せる超人間でもない。そもそも言葉が通じないのは非常にまずい。これは…詰んだな。
せめて一思いに死ねることを祈れるわけがない。こんなところでは死にたくない。せめて飛騨牛、松坂牛、近江牛、神戸牛、米沢牛、前沢牛クラスのステーキをお腹いっぱいに母と一緒に食べてから死にたい。
あ、なんか母のことを考えたら泣けてきた。
「!!ーーーーーー!」
「?!」
「ーーーーー!!!」
「ぐえっ」
デットヒート論争していた奴らの空気が変わった。よくわからないが急いで部屋を出ようとしたのか誰かの足がお腹にヒットしたせいかカエルが潰れたような鳴き声がでる。許すまじ私のお腹を蹴り飛ばしたやつ。お腹を抑えようにもロープでぐるぐる巻きの私には出来ず、蹴られたお腹はズキズキしている。驚いた様な声を出して急いで外に出て行ったようだけど、彼らはどうしたというのだろうか。謎である。
まあ好都合でもある。当分は帰って来なさそうな気がするから今のうちに不格好だけれど勢いよくぐるりと回る。
電球はない。代わりに松明の様なもので辺りを照らしているのだろうか?荒地の様なところだったし、もしかしたら電気が通ってないくらいのど田舎なのだろうか。だとしたら何故ネットは繋がったのだろうか。わからない。全てが謎だ…
「ーーー?」
「ーーー…え?」
どくりと心臓が止まるかと思った。美しい顔の彼女が、そこに、居たのだ。いつから?最初から?わからないけれどずっと見られていたのだろうか。彼女と目が合う。彼女の澄んだ声は聞こえたが、何を言われたのかさっぱりわからない。彼女がここに居るのもわからない。いや私がここにいる人全て勝手にここから出て行ったと早とちりしただけなのだが。
目は口ほどものに物を言う、とか目を見ればわかるとかよく聞くけれど、彼女の目の色がとても綺麗なこと以外私にはさっぱりわからなかった。
「…あー、だい、じょうぶ?」
「あ、あ…え、言葉…?!」
「ん、すこし、だけど。わかる。」
目の前が霞む。ああ、泣いてるんだなあ。と自分で自覚したらもっと涙が出てきてしまった。大人が情けないと思いつつも手が使える状態じゃないのだ。許してほしい。
ロープでぐるぐる巻かれた不審な大の大人がいきなり泣き出すのだ。綺麗な彼女はオロオロし出すが、もう少し待ってほしい。言葉が通じるってすごい。安心する。英語を勉強しようと涙を流しながらも心に固く誓った。
丸一年ぶりになってしまいましたがやりたいところまで頑張りたいと思います。誤字脱字ありましたら教えてくださると助かります。感想ありましたらぜひもらえたら嬉しいです。やる気が出ます。