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千里の道も一歩からなんてわけあるかいな


一時間程歩いただろうか?体感では一時間以上歩いている気がする。あくまで体感だからきっと、実際は三十分以下しか歩いていないと思う。現実は残酷だ。歩けど歩けどもほとんど代わり映えのない荒野である。遠くを見ていても逃水なのか陽炎なのか、わかるのはゆらゆらと光の屈折によって遠くの方がもやもやしていることくらい。



暑さのせいで普段の六割以上頭が働かない上に体力が奪われていっているような感覚がする。汗のせいで服がひっついて気持ちが悪い。せめて水場はないのか、必死に探しながら歩みを続けているとそれはポツンとそこにあった。蜃気楼か?砂漠でオアシスを見つけて実はそれが蜃気楼だったというオチではないのだろうか?そうだとしたらもういっそ飢え死にでひもじい思いをしながら死ぬくらいなら、一思いに殺してほしいんだが…。このときたとえ本当に水だったとしても一週間しかいきられないし、ひもじい思いをするのは確実なのだがそんなことすっかり頭から抜け落ちていたのはここだけの秘密である。



「み、ず…水だ…あ゛あぁああ…」



濾過しなければとかそういうことをやらなければならないと頭で理解しつつも、それが片隅に追いやられて思わず地面に膝をついてしまう。水面に映る変わり果てた自分の姿に絶句。男って…。ある程度覚悟はしていたが、イケメンじゃねえのかよ。イケメンじゃあないのかよ!!自分好みの顔じゃないことにも絶望したがそうじゃない。そうじゃなくもないけど、一番悲しいのはそこではないのだ。途方も無い悲しみにくれている理由、それは悲しくなるとつい自分の胸を揉んでいたのだが、それがもう二度とできないということである。これがよりどん底へと突き落とす。これからどうしろというのだろうか。他人の胸を揉めとでも?私に犯罪者になれと言うのか!あゝ神は無情であらせられる。無神論者であるが都合のいいときは神を引き合いに出してしまう、これくらい許してほしい。性転換手術って幾らかかるのだろうか、それとも新しい分身と仲良くすべきなのだろうか、いや発想の逆転でこれは新たなチャンスなのだろうか?残念ながら私にそういうけはないと信じたいがこの先の人生何が起こるかわからないしな…。いや考えるべきことは他にたくさんあるからそっちを考えねば…。






…散々考えた末、出た結論は一つだけだった。この水、飲もう。苦渋の決断である。背に腹はかえられぬとはこういうこと。



恐る恐る手で水を掬って一口、二口と水を飲む。



美味しい!喉が渇いていたからかもしれないがこの水、とても美味しかった。水でお腹いっぱいにするのもどうかと思ったがこれならいいや。これでもしお腹が痛くなったとしても、仕方がないと済ます自信がある。もう一口、水が体の隅々まで染み渡っていくのを感じる。とりあえず水はたくさんある。たらふくのむとしますかね。




さて、お腹が痛くなるまでまだ時間はある。その間に神さまに感謝してから服を天日干ししつつ、自身も水浴びをしてどうするか考えよう。別にジャージのままでもいいけれども、この気候に適していない気がする。荒野の夜は砂漠の様な感じなのだろうか?だとしたら昼は暑く夜は寒い。どれだけジャージが万能だからといっても油断は禁物だ。人は案外あっさりと死んでしまうものだからだ。





「おお…おお?!?!おおおおお!!!」



ないないないとあれだけ探していたスマホがこんなあっさり、服の上に…?いや、きっといつものように私が探し出せなかったんだ。そう言うことにしておこう。こうして見つかったんだし、素直に探し物の神様に感謝してありがたく使わせてもらおう。そしてどうせならこの機会を使って普段やらないような…そうだ、スレにでもこの出来事を書いてみよう。きっと嘘乙とか言われるだろうけれど、それでもいい。みてくれる人がいて、知恵を貸してくれるならそれでいい。ネットにさえ繋がってしまえばこちらのものだ。どうせスレ立てるなら面白く書きたいと中途半端なエンターテイメント性に火がついてしまったのはここだけの話である。






スレ民と話して自分がどこにいるかもわからない、下手したら死ぬ可能性もある。つまりいかに危ない立場に居るのか自覚し、せめて人間寝るときが一番無謀なときだから少しどうにか身の安全を確保できるところで寝ようと歩きながらスマホでスレをのぞいていたのがダメだった。歩きスマホは絶対にやめなさいと口酸っぱく母親に言われていたのに…母さん、親不孝者でごめんなさい。娘…いや今はもう息子?とにかくあなたの子は地獄に一直線のようです!!!とりあえず今自分にできる最高速で近くにあった岩に身を潜めカメラを起動して写真を撮っている自分は頭がおかしいと思う。危機管理能力低すぎでは?現代社会に染まりすぎだし、というか安価なんて楽勝じゃ〜んなんてスキップるんるんしてた私を殴りたい。というかこれは人?人なのだろうか。なあにこれ珍百景に応募すれば確実に抽選する気がする。CG疑われるだろうけれど。



私は人であると思っている。だが他人から見たらどうなのだろうか?人の定義とはなんたるや。言葉を話せばそれは人なのだろうか?知恵があり、知性があり、理性があり、社会生活を営んでいればそれは人なのだろうか?だとしたら私の目の前にいるのも人なのではないだろうか。さっき水でスッキリしたのに冷や汗が止まらない。背中がベタベタする。そんなこんなぐるぐる考えていたら目の前に人(仮)と目が合ってしまった。しぬ。しかし安価は絶対。





「ひ、ひええ…あの…ここ、どこですか…?え、えっと英語!そう!英語だとWhere am I here?!」

「ーー!!!ー!!!!ーーーーーーー!!」

「ー!ーーーーー!!!!」

「わわわ、わー!!!こわいこわいこわいなにがあんかはぜったいだよ!!!!!これなにいってんのかわかんないけどおこってない?おこってるよねごめんなさいごめんなさいむりやばいしぬかえりたいえっうわやめ!!!っ!!?!」



背後からって、そんなのありかいな。



誤字脱字がありましたら教えてくださると嬉しいです。

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