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第Ⅰ章 1話 【伝説の始まり】


――――――――――――――――――――――――



「ぬし様、これからどうなされるのでありんすか?」

「現世での我輩の使命は尽きた。そうなれば最早現世での長居は無意味であるな」

「ならばやはり…」

「あぁ、長年にわたる我輩の活躍は後世に伝説として語り継がれるであろう。そして我輩は神から与えられしこの力で更に新たな伝説を生み出すのだ。その時はお前も我輩と運命を共にするのだぞ」

「わっちはマスターに初めてお会いんしたあの時から、この身のすべて魂までもぬし様のものどすえ。どこまでもお供いたしんす」

「では暫しの別れだ。運命の歯車が再び動き出すその時まで――」



























――――――――――――――――――――――――


この日、ジュエリアル王国にあるフロスティ公爵領の公爵家では屋敷全体が慌ただしい空気で満ちていた。

「奥様の部屋にもっとお湯とタオルを!!」

「ほら貴女たちもっと急いで!!」

「あぁエレナ!しっかり!!俺はここにいるからな!あと少しだ!!エレナ!!エレナァァァァ!!」

「旦那様!気が散りますのでもう少しお静かに応援なさってください!!」

「……!!エレナ、頑張れ~頑張れ~」

「新しいお湯とタオルをお持ちしました!!」

「早く!!もうそろそろですよ!!」


「おぎゃぁーー!!おぎゃーー!!おぎゃーー!!!」

「「「「「あっ!!!」」」」」


「おめでとうございます!元気な男の子でいらっしゃいます!」

この日フロスティ家に新しい家族ができた。




それから2年の月日が経ち、あの日産まれた赤ん坊はノアと名付けられ愛情いっぱいに育てられていた。

「ノアももう2歳になるのねぇ。あの時のあの人の応援覚えてる?」

午後の昼下がり、庭で走り回っているノアをテラスから眺めながら、母親のエレナ・フロスティはノアを産んだ時のことを思い出してクスクスと笑った。

「えぇ覚えていますとも。私が抑えなければ旦那様は今にも奥様にしがみつきそうな勢いでしたからね」

紅茶を入れながらそう言ってため息を吐いて答えたのはメイド長のカリサ。助産師としてノアの取り上げをした彼女は、あの時の主人の慌てようをしっかり覚えていた。

「上の2人を産んだ時はあの人は仕事で立ち会えなかったから、今回はしっかり応援するんだ!って産まれるひと月も前から張り切ってたものねぇ。けれどあの応援だとなんだか力が抜けてしまって痛くて堪らないはずなのに笑ってしまいそうになったのよ?」

「愛妻家と名高い旦那様らしいですね」

そういってお互いに笑い合う。

「あぁ、そういえば!あの時は他にも大変なことがあったわねぇ」

「あんな光景見たこともなかったものですから、正直戸惑ってしまいました」

エレナがふと思い出したように声を上げ、カリサもその時のことを思い返す。

ノアが産まれたあの時、屋敷の周囲に広がっている森から大小様々な動物が屋敷の庭に集まってエレナの部屋を見守っており、鳥は窓辺で祝福するかのようにさえずり、産まれたばかりのノアの周りには様々な精霊が集まって顔をのぞき込んだり周りを飛び回ったりしていた。

そもそも精霊は精霊魔法で呼ばない限り自分たちの住む精霊界からは出ようとしない。そして精霊を汚すことは誰にもできず絶対不可侵の存在であることから『神の遣い』とも呼ばれている。そんな精霊がノアのもとに自ら集まっている光景に、その場にいた皆が呆気にとられポカンとした顔をし、一部の使用人たちは「神の子がお生まれになった」と拝み始める者も居た。

「ノア様は将来きっと素晴らしい御方になられるのでしょうね」

「えぇ、きっと強くて優しい素敵な子に育ってくれるわねぇ。あら?どうしたのかしら」

息子の将来を楽しみに思いノアのほうを見たエレナは、こちらに向かって走ってくる小さな白狐に気付いた。白狐はそのままエレナに向かって飛び掛かり、

「うえぇぇぇん!!(涙」

泣きついた。

「あらあらまぁまぁ、どうしたの?ナナ」

この白狐の名前はナナ。エレナの召喚獣であり今はノアの遊び相手になっていたはずなのだが…

「もう勘弁してくだしゃいごめんなしゃいうわぁぁん!!」

「ナナ、泣いてちゃ分からないわよぉ」

今はエレナの胸元にしがみつきプルプル震えている。

そこへキラキラした顔をしたノアが走ってきた。

「ナナ!おにごっこはもうおわりなの?まだぼくはつかまってないよ!」

「もう無理でしゅおやつは諦めましゅから勘弁してくだしゃいぃぃ」

話を聞いてみるとどうやら一週間分のおやつを賭けて鬼ごっこをしていたらしい。ナナはノアを捕まえることができれば今日から一週間ノアの分のおやつまで貰い、ノアは今日のおやつの時間まで逃げ切れば逆にナナの分まで貰うという賭け。ノアは2歳、ナナも魔獣の中ではまだまだ子供、どちらも育ち盛りの譲れない真剣な戦いだった。

「で、結局ナナの体力が先に尽きちゃったってことなのねぇ」

「でもでも!ナナだって立派な魔獣でしゅ!人間には負けない自信があるでしゅ!しょれなのにどうしてノアしゃまは3時間も走り続けてるのに元気なんでしゅか!!」

「えぇ!?3時間!?」

どうやらお昼頃から鬼ごっこは続いていたようだ。

「そんなに走ってよく疲れないわねぇ」

「一体どんな体力してるんでしゅかっ!!」

まったくもってナナの言うとおりである。普通魔獣より体力のある2歳児などいるわけがない。そう思ってエレナはまだ子供とはいえ魔獣であるナナを遊び相手に選んだのだが、それは普通の子ならであってノアには通用しないようだった。

「ノアしゃまは全然疲れないし逃げるのは上手だし、もう捕まえられる気がしないでしゅ…」

「えぇ~ぼくはまだまだはしれるよ!もっとあそぼうよ~!あ、そぉか。おにがいやならぼくがおにやるよ?」

「もっと嫌でしゅぅぅぅぅ!!!」


ノアは親が思っている以上に強く育っているようだった。



どうも、作者の天海あまみ 奏唄かなでです。初めましてなので少し自己紹介を…

実は作者には、仕事中にふと暇だなと感じた時に物語の設定を妄想する癖がありまして、妄想だけで終わらせるのはなんだか勿体ないし思い切って小説にしてみるか!なんなら誰かに読んでもらうことを意識して書いてみたい!という流れで書き始めたのがこの物語です。その場の思いつきや勢いで設定をぶっこんでいくスタイルなので「なんや急に来たこのようわからん設定。話全然繋がらへんやん」的なものもあると思いますが、作者が暴走しているだけなので悪しからず。関西弁でツッコミ的なものを言ってみましたが作者は関西出身ではありません。地方の生まれなのですがやっぱり関西弁や京都弁などの有名な方言に憧れがありますね。作者の地域の方言は外国語に聞こえるそうで他の地域には全く通じないです。そういう作者自身も近所のおばあちゃんたちが話す方言は聞き取りはできても話せません。若者が地域の文化から離れつつある今の社会を体現しているようでなんだかいつも申し訳なく感じます。

さて何の話をしていたのやら。そうです自己紹介です。このまま続けようにもさすがに後書きが長いと読む気が失せてしまうと思うのでここまでにします。


この物語に興味をもって開いてみた読者の方々ありがとうございます。初めての長編連載で不安だらけですが、最後まであったかい気持ちで読んでいただけると幸いです。


次回の更新をお楽しみに!


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