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山吹紅葉は生徒会長! ―前世は中世に生きた魔女―  作者: 冷水
第一章:生徒会長。二学期~
22/23

生徒会長は襲われる

後半、閲覧注意。


下書き段階では、残酷内容で18指定入りそうな内容でしたが、さすがに削除したり修正しました。一画面分だけ、空白スペースがあります。

それでも、少しだけ気分が悪くなるかも。

最後に、何度も推敲したので改善してるといいけど、最近、特に表現が硬くなってきたので、読みにくいです。


閲覧注意。


「松原くんは、最近どう?」

「普通に授業は受けてますよ」


 この松原くんは、ちょっと特殊な性癖を持っている。先日はただの不良少年だと思っていたら、意外に従順な一面があって驚いている。

 本人に聞いてみたら、非行に走った一番の理由は、不良っぽい女の子に出会うためと言っていた。自分より強い女の子に憧れていて、がさつだったり、いじめてくれる女子を求めていたらしい。


 実家はそこそこ裕福で、厳しい教育方針に反発したという理由もあるそうだが、一番の目的は違うのだと熱く語っていた。

 自分が不良な振る舞いをしていれば、気の強い不良女子に出会えると考えていたけど、そんな事もなく、同じような男子生徒としか友達になれなかったという。


「今時、そんな生徒いないでしょうに。おまけに、私立で偏差値も高いこんな学校で」

「知らないんですか? こんな学校だからこそですよ。多分」

「でも、接点は無かったのでしょう?」


 最近になって、松原くんが下校の時間や、登校の時間に合わせて会いに来る。なし崩し的に、変なところで押しが強い性格をしているので、無視しない程度に会話をしている。

 松原くんは三年生であり、本来は『先輩』か『さん』付けが正しいと思われるけれど、堅苦しく呼んだり、先輩を付けられるのを嫌がるので、消去法で『くん』付けで呼んでいる。最初は呼び捨てでいいと言われたけど、私の方が気にするからやめた。


「「「生徒会長! お疲れ様です!」」」

 松原くんの取り巻きだった生徒達が、今では私の取り巻きに変化している。

 最近は何かと周囲が騒然としているので、気を利かせて(?)くれた結果、学校内では守りを固めてくれている。本当は学校外まで付いて行こうとしていたけど、押しとどめてやめさせた。


「迷惑なのだけど、松原くんを含めて、もうやめてくれない?」

「いやです」

 そこそこの痛みを与えていたはずなのに、今では平然としている。それどころか、忠誠か崇拝に似た雰囲気まで感じられる。悪い方向に、何かに目覚めさせてしまったのかと、とても心配になる。

 群れる趣味はないものの、勝手に付いてくるのなら仕方ないし、何を言ってもやめないので無意味だった。


 それに、気にならないとはいえ、私の悪口を周囲で言ってくる(やから)が増え始め、集団による圧力が増してきた。

 私はこういうのが苦手で、数えるのも億劫(おっくう)な人数に囲まれて悪意をぶつけられると、前世の最後を思い出してしまう。それが死ぬほどのトラウマになっていて、怖いと感じる自分がいる

 さすがに、取り乱すほどではないにしろ、誰かがそばに居るのとでは安心感がまるで違った。私は割と、情緒不安定な部分があるのかもしれない。




----

 学校というのは、ある種の閉鎖社会といえる。

 例えば不祥事があれば、校長を中心として、教師への根回しや保護者への懐柔を行い、問題を表面化させない隠蔽(いんぺい)体質がある。警察沙汰にされるのを恐れ、表向きは『生徒の将来の為』なんて言って、自分達の保身に走ることは珍しくない。

 問題が発覚するのは、いつだって手遅れになってからだ。


 その点では、現代はインターネットが発達したことで、情報の拡散が簡単になり、抑止力となっている部分もあるけれど、別の問題を生み出したりもする。ソーシャルネットワークを中心として、校内でも連絡先を知らない者同士が簡単にメールすることが可能になり、"顔見知り"が多いほど個人の影響力が増して行く。

 知名度のある人が情報を拡散させれば、その影響は計り知れないものになる。全員が動かないにしても、一割未満の行動力がある者達が動くだけで、かなりの勢いとなるからだ。


 学校という閉鎖的な空間と、どこにいても批判や悪口を書き込めるネットという場所は、まだモラルを(はぐく)む途中の高校生にとって、時に残酷ないじめに繋がったりもする。



 ――と、今読んでいる本に書いてある。タイトルは『教育現場とソーシャルメディアの社会問題』という評論文である。


 今日は珍しく、放課後は誰の邪魔も入らなかった。つい借りるか迷っていた本を立ち読みしていたら、いつの間にか読破していた。


「この四冊の本、お願いします」

「はい。返却期限は一週間です」


 個人的には、携帯は持っていても連絡以外で使う機会がないし、パソコンを持っていないので、インターネットに繋げて調べ物をすることもない。

 だからといって新聞やテレビも確認しないので、速報のような情報は入ってきづらい。一応、立ち寄るお店でラジオが流れているので、少しは聞いたりするけど、なくて不便という程でもない。


 例えば、情報を集める上で必要な視点は、日本語では『第三者』と表現するように、立場として三つの視点を比較することは大切である。

 人間はいくら客観的と思いながらペンを取っても、見えない誰かの言葉を代弁していたり、あるいは意図的に、第三者に見せかけた当事者を作り出すのが上手い。

 それならいっそ、欲しい情報を意図的に選び取り、視点の異なる出版物を手にする方が効率的だ。あるいはもっと荒くインターネットから、そのまま吸い出す方が理にかなっている。


 人間は見たい情報だけを見て、見たくない情報には蓋をする。情報の発信者は特にそういう傾向がある。


 ある人物が『知り合いが、女性と二人で歩いていた』と言えば、何を連想するだろうか。こんな言い方をすれば『その知り合いは男性で、女性と歩いていたから、良好な関係を築いている』と思うはずだ。

 実際には『女性は母親』であったり『祖母』である可能性もあり、そもそも『知り合いの性別』について言及していない。道を聞かれただけの可能性だってある。

 報道に精通した者ほど、不都合な発信をしたくない時に用いられる手法であり、裏付けの甘い『憶測』という形で大衆を扇動する。


 これを聞かされた者はこう邪推するはずだ。その知り合いは『発言者にとって特別な関係』あるいは『片思いの相手だったのではないか』と。こうして噂というのは、一人歩きを始めていく。そう思わせたい誰かの思惑によって。


 ソーシャルメディアについても、同じような事が言える。社会の縮図であるかのように、現実と同じことが行われている。

 某サイトを例えに出すなら、ひとりの個人が発信する情報を、たくさんの人物が受信するときに起こる現象である。


 ある人物が『xxに無視された。酷いと思わない?』とだけ話題を放り投げ、その理由である『どんな状況で話しかけたのか』『相手は急いでなかったか』などを語らないのと一緒なのだ。疑問に思う者もいるかもしれないが、素直に信じてしまう者もいる。

 よく人柄を知る者ほど『そんな些細な事実を確認しないはずがない』と、心の中だけで納得して、片方の意見を支持するのである。


 こうして『悪気(わるぎ)のない正義の執行者』とも言うべき、正義感を持った『いじめの代行者』が出来上がる。暗黙知を逆手に取った人心の掌握術である。


 閑話休題。

 気分を変えようと、両手を打ち合わせる。

 読書の後は、その内容に入り込んでしまう癖があって、頭の中で内容がぐるぐると巡っている。

 日陰に差し掛かり、少しだけ周囲の温度が下がった気がした。


「生徒会長、ちょっと俺らに付き合ってもらえませんか?」

 嫌らしい笑みを浮かべた六人の男子生徒が、私の前に立ちはだかった。退路を断つように、もう四人が背後に立ちふさがり、合計で十人に包囲された。

 計画的なのか、人目もなく監視カメラが存在しない場所を狙って会いに来ている。この学校は、一部の教室や大きい通路に監視カメラが設置されているが、その死角を選んでいるのが分かる。


「何かしら。あまり()い内容のお誘いとは思えないのだけど」


 密着するように二歩しか間隔が空いてない。そんな状態で十人もの男子生徒に囲まれれば、その威圧感はものすごい。身の危険を感じるし、軽いトラウマが(よみがえ)りそうになる。

 柄が悪そうな生徒ばかり、よくこんなに集まるものだと関心する。それは一万人も生徒がいれば、いくら偏差値の高い学校といっても、社会不適合者の十数人くらいはいるだろう。それが集まっているとしても、ある意味では不思議ではない。


「何って、ある人に頼まれたんだよね。生意気な生徒会長をしめろってさ」

「誰かしら? 心当たりがないわね」

 手に汗が(にじ)んできて、脈拍が少しだけ速くなるのを感じる。平静を保とうと心がけながら、どうやって抜け出そうか考える。


 だが、それより早く拳が飛んできた。

 いきなり手を出すとか、相手の方は本気らしい。


 痛み、それが肩のあたりに感じられる。顔や腹部を狙わなかったのは、躊躇でもしているのか。

 応戦する間もなく、私は袋叩きにされた。


 悲鳴も上げられず、ただ成すがままに痛めつけられた。


 痛い、それでも耐えられないほどではない。


 木に縛り付けられ、(はりつけ)にされるのに比べたら、こんな苦しみは何もない。


 火刑に処されるのに比べたら、熱さに似た痛みなど些細なものだった。


 暴力に酔い、愉悦を湛えたような男子生徒達の顔は、とても滑稽だった。


 まるで、五百年前に見た神父の顔にそっくりだった。




----

 周囲の音が消えている。

 誰もがその事実に気付かない。


 私は両の手を打ちつけ、一度だけ拍手をする。

 徐々に輝度(きど)を落とし、世界は灰色に染まっている。なのに誰も、興奮でそれに気付かない。


「良い夢は見れたかしら?」

 私は痛みを感じても、それを別の方向から見るもうひとりの自分がいる。

 この生徒達と出会う直前、悪意を感じて魔術を使ったから。それにすら気付かないほど、鈍感で愚かな襲撃者が滑稽だった。


 昔、魔女狩りが行われていた時代は、魔術師が魔術師を駆逐していた。例えば、ジャンヌ・ダルクと呼ばれる少女がいたように、宗教を信じる魔女がそうでない魔女を駆逐し、最後に火刑で処されて全滅するまでが歴史である。

 あの魔女は何を思って、同じ魔術師を殺していたのか分からない。魔女に限らず、昔はもっとたくさんの魔術師がいた。そのどれも、男女関係なく最後は殺されたのだ。

 落ち延びた一部と、日本へ渡った魔法使い達を除いて。


 右手にはサーベルを持ち、それを十人の足に刺していく。悲鳴が響き渡るも、誰にも届くことはない。

「ここは(まぼろし)の中だから。助けを呼んでも無駄よ」


 松原くんの時よりも残酷に、ここまでの事をしてくれたのだ。精神的に無傷で帰すなんて許せない。


「選択肢をあげる」

 指を鳴らすと、幻の世界に四つの尋問道具が姿を現す。


 籠に入ったドブネズミとバケツ。

 大きなハサミ。

 鉄製の桶。

 三匹の犬。


 使い方はご想像にお任せするとして、さっきまで痛みでのたうちまわっていた男子達は急に静かになった。その道のプロではない彼らでも、何か思うところがあったのか。


 ネズミは汚れていなければ、そこそこ愛嬌(あいきょう)のある顔をしている。籠から出して頭を撫でると、まるで生きているかのように鳴き声を上げる。

 三匹の犬は、ブルドックみたいな見た目で、闘犬(とうけん)らしく勇ましい。近くで見ると格好良いが、さぞ噛む力は強いだろう。


「貴方を、()きつけたのは誰?」

 痛みを忘れてしまったのか、雰囲気に呑まれて顔を青くしている男子生徒に声を掛ける。

 何かの文献で見たことくらいあるのか、その用途が想像できてしまったのだろう。


「ねえ、教えてくれないの?」

 練習して、なんとかできるようになった笑顔で語りかけているのに、何で答えてくれないのか。全然、面白くない。


「な、何をするつもり……なんですかぁ?」

 相手がかろうじて口に出した言葉は、アクセントがおかしい。最初と最後が、うわずってしまって聞き取りづらい。


「大丈夫よ。この世界は夢だから。現実にもどれば傷一つつかない」

「なにを」

































----

 終わってみると、呆気なかった。

 何をしたかは語らないが、全員が答えるまで痛めつけた。


 私怨が入ってしまったが、死者の(うら)みというのは予想以上に大きかったとだけ言っておく。

 時代を超えて、同じような残虐性に出会えて、少しだけ心が(おど)ってしまった自分がいた。


 現実に戻す前に、放心して二時間も気を失っている人もいて、魔術を使って自我を引き戻さないと死にそうな人もいた。

 洗脳はできないけど、心の中を映し出すことができるので、鏡の魔術はとても汎用性が高い。後は、記憶の一部を思い出さないよう封印できるので、彼らと取引した。

 その記憶があって生きていけるのか? と。

 ある意味では洗脳に近いが、記憶を書き換えるのは本人の同意がないと出来ないし、範囲もお互いが了承した部分だけである。


 尋問の記憶だけを封印し、恐怖の印象だけを残して、中途半端な状態にする。何も見なかった、何も感じなかった、だけど約束を破ればそれらが思い出される。

 激しい尋問というのは恐ろしいもので、訓練されたプロでも自殺するほどと聞いた事がある。外国の諜報機関が使う尋問の後に、自殺者が絶えないのだったか。

 それよりも、今回は痛めつけることに特化したので、とくに気分が悪いはずだ。


「もう帰りなさい」

 十人の生徒は引き攣った表情で、その場から逃げていった。ぎりぎりトラウマが残らない程度に、記憶は封印したのだから、まだ寛容(かんよう)なほうだと思う。


 今後は彼らがこの事実を語らないことに苛立ち、大将が出てくるまで繰り返せばいいのだから。

 自分では手を下さず、安全な場所にいるだけの者になど、くれてやる慈悲はない。


「楽しみね」

 こんなことを平然と行い、あまつさえ楽しみに感じている自分は、やはりどこか異常なのだろう。

 来なければそれでいい。むしろ来なくていい。


 こんなに自分を嫌いになるなら、私という存在が消えてなくなってしまえばいいのに。

 帰り道を歩く足は、とても重くて気分が悪かった。



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