外伝2 選良主義者の女子生徒 ※??? 視点
本編 未登場人物による視点。
読み辛いです。
私は社会的に高貴な身分である。
何もかもが、少なくとも私よりも下にいる人間は、思い通りになるはずである。努力だって誰よりしているし、生まれも育ちも全てが優れている。
通いたくもない塾や習い事は、種類を変えて毎日あるし、周囲にいる誰よりも自分を磨きながら生きている。負けるはずなんてなかった。
なのに、あの生徒会長は気に食わない。
まだ最上という生徒に負けたのなら許せる範囲だった。家格という面で私より劣っているが、官僚を親に持つエリートである。
「気に食わない」
生徒会長を調べてみれば、一般家庭の出身であり、入学試験でも上位を取っていたわけでもない。それなのに、私より上にいることが許せない。
実技試験において、私は彼女と対峙した。相手は歯牙にもかけていなかった存在なのに、気付いたら私は倒されていた。
その場で喚くなんて、はしたない真似はしなかったが、悔しくて泣きそうになった。この世界は、生まれによって全てが決まると信じていたのに、それを突き崩された気分だった。
天才の存在は否定しないけど、凡人の中では生まれと育ちによって大抵が決まる。そのはずだと思っていた。
結果を見たときは、私のしてきた努力が否定された気分だった。
「負けたくない。負けるわけにはいかないのよ!」
幸いにして、私には財力と影響力がある。学校の勢力圏であれば、名前を出すだけで従ってくれる者も多い。
あの時の結果は間違いだったと、目の前で宣言してやる。次の試験では、絶対に負けられないと心に決める。
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選民主義、あるいは選良主義か。その概念は、一部では間違っている訳ではない。一定数の選民主義者がいることで、上手く廻っている世界もある。
例えば、彼らは自らを犠牲にして社会の為に尽くす部分もある。自分達は選ばれた存在で、そう思うからこそ所属する社会、所属する国という集団に対して親身になれる。彼らの献身があればこそ、正される正義もある。
王権や貴族制度のように、選ばれた者達による統治という概念も同じである。政治の為に英才教育を受けた貴族の子弟が治世を行えば、大きく間違った統治は行われない。少なくとも、人的な災害が起きる以外では、国家が進むべき進路を外れることは少ない。合理的な面もある。
ただし、過度にその思想に囚われた場合においては、暴君と変わらない。現代においては、民主主義の普及と共に封建的な社会は否定され、資本主義によって社会的ステータスの格付けは変わった。選民思想を強く持っていたとしても、そこに意味なんて存在しない。
平民と貴族なんて身分制度はないし、江戸時代や明治時代のように、武士を士族と、貴族を華族と呼んだりすることもない。あるのは経営者と労働者、時間を売るか買うかの違いでしかない。そこに身分の差などありはしない。
宗教と同じように、それを心の拠り所にするのは構わない。自分自身、あるいは自分が所属する集団を至上と考え、他者と違うことを誇りに思うのも自由だ。それによって得られるものは、自信や行動力であり、精神的な支柱でもある。
しかしながら、人間は至上と崇めるものを否定された時、反動で強い拒絶を行動で示す。その信仰が強いほど、疑うことなく暴君になる資質を持っている。人間の恐ろしい負の部分でもある。
紅葉の知らない所で、ひとりの少女が敵対心を燃やしていた。その炎が燃え上がるのは、もう少し先の話である。
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