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山吹紅葉は生徒会長! ―前世は中世に生きた魔女―  作者: 冷水
第一章:生徒会長。二学期~
18/23

少しだけ変化した関係 (4)


「何歌おう?」

「私も、今それを迷っているの」

 ご飯を食べた後は、二人でカラオケに行く。いざ来てみると、お互いに何を歌おうか迷っていた。

 私はアイスティーを口に含みながら、予約を入れる為の端末とにらめっこしている。飲み物は代金に含まれていて、何回でも自由に御代わりができた。私の方は冷えた紅茶を(そそ)いで、柚希は甘いジュースをグラスに注いでいた。


 こういうのは、交互に曲を入れていくのだろうか。

「柚希、最初に入れて良いよ」

「お姉ちゃん、先で良いよ」

 ディスプレイがあって、二人で見やすいように並んで座っている。肩が触れ合うほど近くに柚希がいるけど、空調が効いているので暑くはない。

「じゃあ、私から」

 仕方が無いので、私は学校で歌ったことのある曲をリクエストする。


----

 ――。

 教育現場で歌われる曲は、自由や優しさをテーマにしたモノが多い。歌いながら、私はとても後悔していた。

 歌詞に含まれる想いが、痛いほどに理解できてしまう。一度の死を経験した私には、些細な表現も重く感じられてしまう。

 書いた人たちは、実際にテーマに沿った経験をしたとは限らない。それでも教科書に載るような歌は、多くの人が共感できるようなメッセージ性が強い。

 私は涙腺が緩んできて、泣きながら歌うことになってしまった。音程だけは、(はず)さずに歌えていたと思う。


「良かったよ。とても」

 柚希は目を閉じて、私の歌に聞き入っていた。歌い終わると拍手をしてくれて、とても喜んでくれたけど、私の表情を見て驚いていた。

「どうしたの? 悲しい事でもあった?」

「違うの……。歌詞が重くて、優しさが心に痛いの」

 柚希の肩を借りて、少しだけ泣いてしまった。これではどちらが姉か分からない。


「辛いなら帰る? ごめんね、私の気遣(きづか)いが足りなくて」

「いいえ、大丈夫よ。もうちょっと、軽めの曲を歌うから。それに、柚希と一緒だから平気よ」

 こちらが気を(つか)わせてしまったが、私には気にせず歌うことを勧める。

 柚希はポップな印象の、明るい曲を選んでいた。知らない曲だったけど、それでも聞いていて気分が軽くなった。


----

 明るめの曲を中心に選曲して、柚希の歌っている姿を楽しんだり、一緒に歌ったりもした。途中で採点機能を試した柚希は、その点数に一喜一憂していた。

 私は音程だけは外さずに歌えていたので、高得点を出し続けていたけど、満点は取れなかった。

 数時間もすると、部屋に備え付けられた受話器が鳴った。終了まで残り十分を切ったので、もうすぐ部屋を出てくださいという通知だった。


「あと十分で終わりだって」

「最後、この曲を一緒に歌わない?」

 柚希が最後に、卒業式でよく歌われる曲を選択してきた。私の時も、どこかのクラスが卒業生を送る歌として合唱していたと思う。

「いいよ」


 ――。

 お互いにマイクを持って歌い始める。柚希と目を合わせながら、私は微かに唇の端を上げる。

「お姉ちゃん、笑ったね」

 柚希が満面の笑みを浮かべながら、間奏の途中で声を掛けてきた。今、私は笑えたのだろうか。

 ――。

 間奏が終わるとそのまま二番に入り、問い返せないまま歌が継続される。最初みたいに、泣くことはなかった。


----

 声のハモリが心地よく、カラオケというのも悪くなかった。最後まで歌いきると、もう時間なのかと寂しく思う。

 それでも、楽しい時間がずっと続いても、いつかは飽きてつまらなくなる。適度に余韻(よいん)を残す程度が、何をするにも丁度良い。


「今日は楽しかったね」

「私も楽しかった」

 帰り道、空が少しだけ暗く感じられた。しかし、まだ夜というには早すぎる時間。

「また来ようね!」

「ええ」

 柚希が楽しめたなら、今日はそれだけで来たかいがあった。思わず柚希の頭を撫でると、不思議そうにこちらを向いた。

 少し困ったような表情の柚希は、それでも嫌がってはいなかった。


----



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