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山吹紅葉は生徒会長! ―前世は中世に生きた魔女―  作者: 冷水
第一章:生徒会長。二学期~
16/23

少しだけ変化した関係 (2)


 柚希とカラオケに行くことを約束してから一時間後、重大なことに気がついた。

 私は、歌を全然知らない。流行(はや)りの歌も、そもそも好きな歌が思いつかない。できるとすれば、学校の音楽で歌ったような選曲だけど、聞く方はどう思うのだろう。

 一緒に行けることを楽しみにしている柚希に、つまらない思いをさせるのではないか。そう考えると、申し訳ない気分になった。

 だからと言って、今からレパートリーが増やせる訳でもない。悩んでも仕方なかった。

 買い物は柚希が行きたい場所を回れば良いだろう。お昼はどこかで食べるか。お店によっては学割が効くかもしれないので学生証を持って行こう。


「本当に、転生なんてするものではないわね」

 前世を思い出さなければ、こんな事で悩む必要はなかった。身の丈に合った"普通"のことしか、考える意味や理由もないのだから。

 転生なんて、望んでいる者だけが出来れば良い。未練なんてあっても、時代が大きく違えば無意味でしかない。

 そこまでして生きることに価値を見つけるのであれば、それ自体が(しあわ)せと呼んでも差し支えない。

 来世に夢を見られるなんて、選べない境遇に悲観(ひかん)した上で、この世に希望を持ち続けられる者だけが行う『くじ引き』でしかない。大抵(たいてい)が死によって、満足か絶望を得て終わりを迎えるのだから、自分の体ではない社会的な地位も異なる価値観に身を落として、正気でいられる訳がない。

 記憶によって人格が作られるが、人格によって記憶の(とら)え方は変わる。二つの人格を作るのに十分な記憶が衝突(しょうとつ)したら、生き残るのはどっちなのか。ニワトリが先になるか、卵が先になるかによって、人生の見え方は正反対と言っていい。

 幸せと不幸が紙一重(かみひとえ)であるように、大好きな人の笑顔さえも、同じに見える保証はどこにもない。知る必要のない知識があると、世界は虹色にも灰色にも見えるし、ここが天国か地獄であるかの違いなんて、支配する側とされる側で異なるのは当たり前の事実でしかない。


「これ以上、考えては駄目」

 私の悪い癖だと思う。自分の思い通りにならないことを、前世の記憶のせいにして。

 選べない理不尽があるなんて、とっくに知っているだろう。その中でも自由を探すのが人生であり、(かしこ)いやり方なのだと今なら分かる。


 もう寝よう。

 電気を消して、目を閉じる。

 明日が来るのが、少しだけ楽しみだった。


----



本人は自覚してないけど、悩みの本質は変わらない。

友達と行くカラオケで、選曲が渋いのを悩むのは誰もが通る道だと思う。

それでも、もっと高校生らしい趣味を身に着けないのは、確かに記憶の影響もあるかもしれない。


何度も心理描写を重ねてきたけど、少しくどかったらごめんなさい。

もし良ければ、感想や評価を頂けたら嬉しいです。

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