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山吹紅葉は生徒会長! ―前世は中世に生きた魔女―  作者: 冷水
第一章:生徒会長。二学期~
14/23

九月中旬の生徒会会議

前回から場面が少し飛びます。

説明ばかりで、文章も読みづらいかもしれません。


 人は誰しも、権威や派閥を傘に着る。自分では中立だと思っていても、必ずどこかに所属している。

 それを否定すると、集団の中では生きにくくなる。人間関係を円滑にまわす為には、非効率なことを飲む場面がやってくる。


 部活動なら、学校の名前を背負っている。

 運動部なら補欠とレギュラーの間に、劣等感と優越感の溝が出来て、仲良くするにも区別されたりする。

 もちろん、これらは極端な例だろう。


 人は派閥と意識しない内に、自分と似通った思想、共通の利害や目的、境遇(きょうぐう)や出自、一緒にいて楽しいなど、そのどれかによって排他的な集団を形成している。そうはいっても、高校生では仲の良い者同士が集まって、少しだけ入りづらい程度の小規模なものだけど。

 単にひとつの集団というわけでもなく、数学でいう『集合と論理』のように、AまたはB、BかつC、CあるいはDというように、人の数だけ重複した無意識の集団が出来上がる。


 なぜこんな事を考えているのか、それはこの学校の生徒会は、まさに権威と派閥を傘に着ているから。


 学校でいう生徒会とは、生徒と教師のあいだに(はさ)まれた大人と子供の調整役である。

 宇津魔法高等学校で言えば教師の側に所属していて、部活や委員会が予算を獲得するのに、生徒会への申請と承認が必要となる。もちろん、生徒会監査(かんさ)の教員による立会いはある。

 その生徒会も、さすがに五十万円以上が動く大規模なものは、学校の『理事会』の承認を必要とする。理事とは、そのまま学校の経営に関して責任を持つ役員である。

 例えば、生徒会主導で文化祭や諸行事を行う場合、学校から預けられたお金の中から予算を決めて()(おこな)う。

 そこには雛形(ひながた)が存在するものの、理事を説得できるだけのプレゼンをすれば、いつもより個性的な文化祭も可能である。その分、生徒会の仕事が多くなってしまうデメリットはあるが。


「やっぱり、盛り上げたいですよね」

「三崎さんは、どんなものを考えているんですか?」

 文化祭の草案作りは三崎さんが行っているけど、教員と話し合うまでに生徒会内部で意識あわせを行うことが必要になる。最終的に監査の教員と()り合わせが出来たら、学校の理事会へ通して事務手続きを開始する。


 この学校では十一月の下旬に文化祭が行われ、その準備は九月の中旬ごろからスタートする。

 既に生徒が行う出し物については、副会長の最上(もがみ)さんがアンケートを取り始めている。学校側から提示されている条件があって、その範囲内であれば自由にクラスの出し物を行える。その予算は、内示(ないじ)である程度の目安と許可が下りている。


 例えば、生徒が出す模擬店の数は、クラスや部活動ごとに制限があるが、それなりの費用が支給される。

 機材のレンタルにかかるお金や、食材を外注する費用など。食品によっては、営業許可のあるお店から仕込みまで済ませた状態で購入して、保存方法にも気を使わなければならない品目もある。

 必要に応じて食品衛生の講習や検査を受ける費用。保健所に届出が必要な各種申請なども、この手続きの中に含まれている。

 模擬店で使うガスや発電機材に万一が無いように、設置や施行を監督してくれる業者を臨時で雇う。

 それ以外にも、お化け屋敷や展示物に使う資材の調達費用や、演劇など部活動の催しに必要な費用も同様に支給される。

 当日には、校内で立ち入りを制限する場所や、規模の大きさから警備や交通整理に必要な人員を外注して、一般・有資格者の警備員を依頼することになる。その場合は一人あたり四万円もの費用が必要になる。

「無難なものなら、一応は出来ています。ただ、特別なことは何も」

「見てもいいですか?」


 三崎さんから数枚の束になった書類を受け取る。

 そこには文化祭の企画書と、必要な予算に関する計画書。文化祭までの準備をどうするかや、当日の予定などが書き込まれていた。

 どの委員会に何を依頼するか、丸投げできるところは放り投げて、生徒に出来ない部分を業者を使って委託する。

 生徒とは別に、地域の飲食店などが開く模擬店もあって、学校と関係のある企業やお店のリストが添えられていた。過去に出店経験の有無なども記載されている。

 学校から預けられた金額で予算を組んで、見込みとして出店者からの出店料を取ったり、生徒が開く模擬店の売り上げによって、極力は支出を相殺できるように考えてある。利益を目的にはしないが、返ってきた金額から営業利益が出れば、その結果に応じた見返りが生徒会にはある。

 生徒の成長を促すという建前で、大規模な運営を生徒会は担っている。


 天候などにも気を使う必要があって、雨天の際にどうフォローするかが重要にもなる。

 来場者数は毎年十万人にものぼり、広告に使う宣伝費が必要になったり、終わった後の片付けも事前に計画しなければならない。

 細かいところでは、ポイ捨てが無いようゴミ箱も設置する必要がある。


「生徒が行う模擬店も、食品衛生とか大変なんですよね。生クリームとかも駄目ですし」

 校門に近い位置に屋根付きの運動場があって、模擬店や食品を集めたブースの開催場所に予定されている。体育館のような建物ではあるものの、雨天に野外運動部が使う為の施設であり、その広さは縦横五十メートル、天井までの高さは二十メートルもある。

 校舎から続く渡り廊下もあるので、雨でも来場者が濡れることはない。売り上げに多少の影響はあるけど、その全てを保証するのは難しいので、諦めてもらうしかない。


「無駄に良い設備ですね」

 公立高校よりは学費が高いものの、一般的な私立高校よりは安い。公立高校の学費が三年間で百万だとすれば、私立はその三倍も必要と言われているが、この学校はその中間に抑えられていた。

 それでも、高いことには代わりないが、使える施設の規模や広さから言えば、採算面がとても気になる所ではある。


「何か、私達がやった! みたいなインパクトが足りない気がします」

「それで良いのでは?」

 むしろ、よく書けていると思う。後は実際に、リストにある企業やお店にアプローチして、出店を募るだけ。それだって、この学校の地域での信頼や、今までの実績があるから難しくない。

 ブランドのような概念は、こういう部分では後ろ盾としては心強い。

「それに、私にはこれが、学校系列の企業によって行われる興行(こうぎょう)に見えますよ」

「そう……かな?」

 三崎さんは気付いていないのか、それとも私を試しているのか。

 出店者や資材を発注する業者のリストには、学校が経営するお店や提携する業者が多く、おそらく見覚えのない名前も関係が強い企業で固められている。

 それを指摘しながら、疑問に思ったことを三崎さんに尋ねる。

「このリストは三崎さんが作ったのですか?」

「いいえ。草案を元に、会計の天城(あまぎ)さんが作ったの」

 天城さんは会計を務める二年の男子生徒で、少し変わった人物だった。生徒会室には滅多に来ないし、一度だけ会ったけど寡黙な人だった。

「生徒会監査の先生と相談して、まずは候補を出したみたい」

 さすがに、生徒へ数百万の予算配分を任せると言っても、その保険は掛けているのだろう。投資した予算を回収できなくても、グループの総体としてはプラスになるよう計算されている。あるいは、関係の強い企業へお金を落としてくれれば、繋がりを深めることにもなる。

 学生が粗相(そそう)をしても、知らない所でフォローが行われるだろう。

 突き放しているように見えても、それなりのお膳立てがされている。教育目的としては十分すぎる教材だった。

「言われてみれば、本当ですね。気付きませんでした」

「……本当ですか?」

 この程度なら、公共事業よりも分かりやすい構図である。古くからある財閥や、グループ経営に見られる下請けの関係に近い。

 最上さんも聞き耳を立てて、こちらの会話を気にしていた。それほど珍しいのだろうか。

「この企画書は、よく作りこまれていますね。さすが三崎さんです」

 口に出してから、上から目線になってしまったことに気付いた。あくまで後輩の立場で、生徒会長であっても実務面での上司ではない。ただ成績のランキングで決まったにすぎない役職である。

「そう言って頂けると、嬉しいですね」

「こちらこそ、不遜(ふそん)な物言いでした。すみません」

 三崎さんは本当に嬉しかったのか、微笑(ほほえ)みながら頬を赤くして照れていた。

 私は飲み終わったカップを持って、新しく紅茶を淹れる為に席を立った。

 


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書いているのは楽しいのですが、つまらなかったらごめんなさい。

それでも、しばらくは書き続けます。応援頂けたら嬉しいです。

思い付いたタイトルがあり、少ししたら変えるかもしれません。

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