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山吹紅葉は生徒会長! ―前世は中世に生きた魔女―  作者: 冷水
第一章:生徒会長。二学期~
10/23

生徒会長の週末 (2)


 曇り空を眺めながら、一人歩いている。

 少しの空腹を感じながら、どこかに寄り道しようかと考える。

 私は何かをしていないと、激しい自問自答に襲われる。立ち止まって空を見続けていたら、嫌なことを考えてしまう。


 私はなぜ生きているのか。

 愚かな質問だと、昔なら笑い飛ばせていた。考えるより、今を一生懸命に生きる事の方が大切だから。

 それが分かっているのに、なおも生きる意味を考えてしまう。


 紅葉である必要があるから? では何故、家族を遠ざけて、友達も作らずに、無為な時間を過ごすのだろうか。

 一人でいる事に安心しながら、それでも寂しさを感じてしまう、矛盾した精神の動き。

 孤独を()しとしながら、誰かと触れ合う時間に(いこ)いを感じるのは、どっちの私なのだろう。

 痛みが嫌い、熱いのが嫌い、誰かと関わって身を焦がされるのは、もう過去の私だけで十分だと思ってしまう。


 ぽつりと、雨のしずくが顔に落ちてくる。

 ただ上を向きながら、体温を奪われる心地よさに身を任せていると、少しだけ冷静さが戻ってきた。

 気付いた時には、土砂降りだった。


(あね)さん、何やってるんですか!」

 そこに、傘を持った松原宗二が通りかかって、私を傘に引き入れてくる。

 舎弟を自称する不良の少年は、今では普通に授業を受けていた。サボり気味の彼だが、成績だけは赤点を回避する程度には取り、出席日数もぎりぎりを維持している。

 私が『普通に授業を受けろ』と言ったら、命令されたことに嬉しそうな反応をして、それ以来は欠かさず授業を受けていた。

「別に。あと、その呼び方はやめてと、前から言ってるはずだけど?」

「すみません」


 私のバックは防水仕様なので、中の本が濡れることはない。過去に一度だけ、土砂降りの中を帰って後悔したので、防水のものを買ったのだ。

「それじゃあ、私は帰るわ」

「濡れますよ? 送っていきますよ?」

 走りながら、とりあえず入れそうなお店に駆け込む。そうは言っても、いつも通り学校の隣りにあるショッピングモールで、ずぶ濡れで入れるお店もそこしか思い浮かばなかった。

 中にフードコートがあって、適当なテーブルに腰を下ろすと、持っていたタオルで水気を払う。


 落ち着いた所で、暖かい飲み物を注文した。

「はぁ~」

 ホットの紅茶を飲みながら、冷えた体へ染み渡るような感覚がして、思わず感嘆の吐息がでてしまう。

 こういう時は、やはりレモンティーが最高に美味しい。スライスされたレモンが浮かんでいて、マナーも気にせず果汁を絞りながら、その香りを楽しむのが格別だった。


 しばらく過ごしていると、雨に濡れた服が乾いてきて、寒さを感じなくなってきた。

 このまま夜の八時くらいまではここで過ごし、その後は公園にあるベンチや東屋(あずまや)などに座って、帰りの時間を調整する。

 近くの公園には街灯がなく夜中は真っ暗だったが、暗い場所は怖くはなかった。

 それでも、条例などで未成年が深夜に外出することは禁止されているので、補導される前に生活を改める必要はあった。

 自分の気持ちに整理を付けて、子供みたいに意地を張ってしまう自分を、なんとかすべきと分かっていた。


 私は自宅から通っているけど、学校の寮に入るという選択肢もあった。遠くから来ている生徒向けに、月四万の学生寮が借りられる。

 高校だけは出なさいという両親の気遣いから、学費の心配はないけど、関係が最悪な上に負担を増やすのは身勝手というもの。

 さすがに生徒へ配られるポイントでは清算できないので、アルバイトをして稼ぐしかない。

 その場合も、両親と話し合う必要があって、それが出来るなら悩んでいない。


 私が意地を張っているだけ。そもそも信じられない理由なら、最初から無いのと同じなのだ。それを理解しているのに、情緒(じょうちょ)の部分が拒絶を示す。

 自分のことだけど、難しい性格をしていた。


「どうすれば、良いんだろう?」

 真夜中の公園で、私の呟きが空気に溶けて消えていく。


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