生徒会長の週末 (2)
曇り空を眺めながら、一人歩いている。
少しの空腹を感じながら、どこかに寄り道しようかと考える。
私は何かをしていないと、激しい自問自答に襲われる。立ち止まって空を見続けていたら、嫌なことを考えてしまう。
私はなぜ生きているのか。
愚かな質問だと、昔なら笑い飛ばせていた。考えるより、今を一生懸命に生きる事の方が大切だから。
それが分かっているのに、なおも生きる意味を考えてしまう。
紅葉である必要があるから? では何故、家族を遠ざけて、友達も作らずに、無為な時間を過ごすのだろうか。
一人でいる事に安心しながら、それでも寂しさを感じてしまう、矛盾した精神の動き。
孤独を好しとしながら、誰かと触れ合う時間に憩いを感じるのは、どっちの私なのだろう。
痛みが嫌い、熱いのが嫌い、誰かと関わって身を焦がされるのは、もう過去の私だけで十分だと思ってしまう。
ぽつりと、雨のしずくが顔に落ちてくる。
ただ上を向きながら、体温を奪われる心地よさに身を任せていると、少しだけ冷静さが戻ってきた。
気付いた時には、土砂降りだった。
「姐さん、何やってるんですか!」
そこに、傘を持った松原宗二が通りかかって、私を傘に引き入れてくる。
舎弟を自称する不良の少年は、今では普通に授業を受けていた。サボり気味の彼だが、成績だけは赤点を回避する程度には取り、出席日数もぎりぎりを維持している。
私が『普通に授業を受けろ』と言ったら、命令されたことに嬉しそうな反応をして、それ以来は欠かさず授業を受けていた。
「別に。あと、その呼び方はやめてと、前から言ってるはずだけど?」
「すみません」
私のバックは防水仕様なので、中の本が濡れることはない。過去に一度だけ、土砂降りの中を帰って後悔したので、防水のものを買ったのだ。
「それじゃあ、私は帰るわ」
「濡れますよ? 送っていきますよ?」
走りながら、とりあえず入れそうなお店に駆け込む。そうは言っても、いつも通り学校の隣りにあるショッピングモールで、ずぶ濡れで入れるお店もそこしか思い浮かばなかった。
中にフードコートがあって、適当なテーブルに腰を下ろすと、持っていたタオルで水気を払う。
落ち着いた所で、暖かい飲み物を注文した。
「はぁ~」
ホットの紅茶を飲みながら、冷えた体へ染み渡るような感覚がして、思わず感嘆の吐息がでてしまう。
こういう時は、やはりレモンティーが最高に美味しい。スライスされたレモンが浮かんでいて、マナーも気にせず果汁を絞りながら、その香りを楽しむのが格別だった。
しばらく過ごしていると、雨に濡れた服が乾いてきて、寒さを感じなくなってきた。
このまま夜の八時くらいまではここで過ごし、その後は公園にあるベンチや東屋などに座って、帰りの時間を調整する。
近くの公園には街灯がなく夜中は真っ暗だったが、暗い場所は怖くはなかった。
それでも、条例などで未成年が深夜に外出することは禁止されているので、補導される前に生活を改める必要はあった。
自分の気持ちに整理を付けて、子供みたいに意地を張ってしまう自分を、なんとかすべきと分かっていた。
私は自宅から通っているけど、学校の寮に入るという選択肢もあった。遠くから来ている生徒向けに、月四万の学生寮が借りられる。
高校だけは出なさいという両親の気遣いから、学費の心配はないけど、関係が最悪な上に負担を増やすのは身勝手というもの。
さすがに生徒へ配られるポイントでは清算できないので、アルバイトをして稼ぐしかない。
その場合も、両親と話し合う必要があって、それが出来るなら悩んでいない。
私が意地を張っているだけ。そもそも信じられない理由なら、最初から無いのと同じなのだ。それを理解しているのに、情緒の部分が拒絶を示す。
自分のことだけど、難しい性格をしていた。
「どうすれば、良いんだろう?」
真夜中の公園で、私の呟きが空気に溶けて消えていく。
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