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遠い夜明け  作者: じーな
10/22

夜半


 旧友である秡川佳奈子に呼ばれ三年ぶりに故郷に帰ってきた。宴会ののち禁足地の深夜の鳥居の山で肝試しをすることになった。そこで何者かに佳奈子が殺された。

 あまりにも突然で、あっけなく、訳が分からず理解も感情も目の前の出来事に追いつかなかった。でもすべてを思い出した。

 そうだ。私は佳奈子の死を回避するために黒神と結んだのだ。それなのになぜ、こうなるまで忘れていたのか。何もかもが遅すぎる。


「なにゆえわが神鏡を手放した!」


 首からさげた鏡から黒神の恐ろしい声が聞こえる。


「この鏡がないと夢と現の区別がつかんのじゃ。それにわしの声も聞こえん」


 佳奈子を殺した人影がこちらに向かう。健太はすでに参道を駆け下り、とっくにその姿は見えない。先ほどまでは恐怖と焦りがあったが、今は妙に冷静で健太を薄情で情けない男だと思った。息を深く吐き出すと、健太とは逆に参道を駆け上がった。


「まだ夜半じゃ。夜明け前に取り戻したのは不幸中の幸いであるがの。黒鉄神社へ急げ」


 運動不足のためか、石段を駆け登ると息が上がる。


「それにしても酒臭い巫女じゃ。こんな巫女はほかに居らんぞ。身を清めてもおらんだろう。わが社に穢れを持ち込むな」

「いいから少し黙ってもらえます」


 すべてを思い出した。しかしあまりにも遅すぎた。そんな情けない自分に何よりも苛立っていた。他でもない絶好のチャンスをみすみす逃したのだ。

 先ほど引き帰した鉄の扉まで戻ってきた。佳奈子から預かった鞄から鍵を取り出し、扉を開ける。さっきは知らなかったが、その先に何があるのかは既に知っていた。大鳥居をくぐり、境内を駆け抜け、社殿の扉を開けた。


「もう一度よ。何度でもやってやる」


 灯の燈った本殿の中には黒神が待っていた。


「何度もできると思うなよ。かようなしくじりをすれば次はないと思え」


 黒神が強烈な視線で睨み付ける。背格好は私よりも小柄であるが、圧倒的な威圧感がある。

 今度は自分から横になる。当たり所が悪く怪我はしたくない。


「次こそ成し遂げよ。わが神託の巫女よ」


 そして再び夢を見る。





そしてここに戻る


登場人物紹介

田中希美……大学進学で村を出た女の子。主人公

秡川佳奈子……希美の親友で白銀神社の女の子。丁寧な口調で礼儀正しい。

川田健太……希美と佳奈子の同級生の男の子。祖母は旅館(民宿)を営んでいる

守山紗也香……希美たちとは2つ年上の女の子。お祖父さんは村長で村の有力者


黒神……山の神社の神さま。すごい力を持っているかもしれない

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