イフ ただ一言を聞くために 01
ステラがテストの後、フェイスの夢に囚われなかった場合に過ごすはずだった時間からのイフ。
ツェルト視点です。
『ツェルト』
戦場だった教室の空気が変わり、試験が終わる。
退魔騎士学校二年のテストを終えたツェルトは、長く苦痛だった試験勉強から解放された喜びを味わった。
そして、この後は息抜きにステラやニオとでアクリの町を巡るのだ。
アクリの町
学校の校門にて待ち合わせをして、乗り合いの馬車で町へと向かう。
テスト後から数時間後。
ツェルト達は町で小物屋を見たり、甘未屋に行ったりして遊び歩いた。
女子二名という事もあって目的地は自然に女性よりのものになったが、ツェルトはそれでも構わなかった。別に特別どこか行きたい場所などはなかったのだし、ステラがいればツェルトはどこに行ったとしても満足なのだから。
そんな風に、テスト後の解放感に背中を押されるままアクリの町を色々と巡って行けば、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
ツェルトの視線の先では女子二人、ニオとステラが楽しげに会話している。
「あーたのしー、もうテストなんて永遠になくなっちゃえばいいのにー」
「ニオ。それは無理よ。テストは実力を確かめる為にあるのよ」
「そこはそーだねって同意するとこなのに、ステラちゃんってば真面目なんだから―」
「それよりいいの?」
心のままに解放感にひたっているニオに、ステラは後方の建物の角を示した。
彼女はここまでついてきている人物に対して、言いたい事があるらしい。
ツェルトはもうそっちに視線を向けなくても、何が言いたいのか大体分かってしまった。
「彼、ずっとついてきてるんだけど……」
ステラの言う通りここまでくっ付いてきた背後の人の気配についてだ。
だが、ニオはそれに対してぞんざいに答えるばかりだった。
「あー、ライド君? 別にいいよ。仲間なんかに入れてあげないもん」
「いい加減許してあげたら? 何があったか私は知らないけど」
「許さないっ」
子供みたいに頬を膨らませて拗ねるニオを見れば、ステラと目が合って苦笑しあうしかない。
最近どうにもライドへの風当たりが強くなっているニオは、ずっとこの調子だった。
相手の方がおそらく何かをしたのだろうが、一向に反省する気配がないのだから、こうしてまだずるずる引きずっているらしい。
……一体あいつは何をやらかしたんだか。
「ライド君の馬鹿っ、まるめてゴミ箱にポイしちゃえればいいのに」
背後に向かって、舌を出すニオは放っておいてステラに話しかける。
「俺思うんだけど、ステラは意思が固いって言えるんだけど、ニオのそれは我がままで頑固だよな」
「言い過ぎよツェルト。二オだってたぶん理由があるのよ」
「そうかなあ」
そんな言葉を交わしていれば、話題の主に聞こえてしまったらしい。
「我がまま何かじゃないもん、正当なおこだよ」
「おこって何だ、ステラ」
「知らないわ、ツェルトが怒らせたんでしょう? 自分で考えなさい」
「怒らないでくれよステラ。ん……? あ、分かった。怒ってるからおこなのか」
いつもとまるで変わらないやりとり。
学年末テストみたいな事があったとしても、学生のやる事はそうそう変わったりしない。
いつもやってるみたいに笑ったり、喋ったり……。
だけど、そんな当たり前の光景がもう得られなくなるかもしれないなんて事を、その時は思いもしなかった。
しばらくどうでもいい事を言い合ったりしながら、アクリの町の観光名所……湖の前まで歩いてくる。
ツェルトの手には、途中で寄った店の紙袋が握られていた。大事な品だ。
ひとしきり、三人で湖を鑑賞した後は、不意にニオが意味深な笑みを浮かべ始めた。
「あーしまったニオ用事があったんだ急いで帰らなきゃ大変大変」
その大変らしいニオは、楽しそうに棒読み口調で大変大変と言い続ける。
ニオの様子を見たツェルトは分かってしまった。
たぶんこちらの企みを知っているのだろう。
彼女は、さっき言ったみたいに我がままで面倒そうな性格しているが、恋愛関係の事に関しては素直に手を貸してくれるという、ちょっと不思議な人間でもあった。最初に出会った時は邪魔されたりもしたのだが、まあそれはステラの天然も入っていたからだろう。
「そーいうわけだからステラちゃん、ツェルト君と仲良くね」
「何がそういうわけなの? え、ちょっとニオ……」
何がそういうわけなのか分からない、という実にそのまんまの表情のステラは、急にその場から離脱してしまったニオの背中を呆然とした様子で見送っている。
言葉には出さないが、ツェルトはその背中に素直に感謝した。
……これで、何もできなかったなんて事になったらさすがに恰好悪いよな……。
完全にニオの姿が見えなくなった後、ツェルトはせき払いを一つした。
「ごほん、あー……えっと」
「どうしたのそんな風に改まったりして」
「ステラに渡したいものがあるんだ、ちょっと目をつむってくれないか? できればあっち向いて」
ステラを湖の方へと向かせて、ツェルトは準備。
だが、ステラはその態度に不信感を覚えたようだ。
「いたずらとかしないでしょうね」
「俺ステラを湖に突き落としたりとかしないから! しないしない、絶対しない。頼むよ……」
「仕方ないわね」
彼女が納得したのを見て、ツェルトは紙袋の中から今日購入したそれを取り出す。
以前ステラがいない時に販売している店に行って、他の人に売ってしまわないように店主に頼み込んだので心配はなかったが、それでも手に入れられた時は本当にほっとした。
計画が水の泡にならなくて本当に良かったと、本当に思った。
ツェルトは手にしたそれを、ステラの金色の髪の上にそっと乗せた。
「もういいぜ」
湖面ごしにステラがゆっくりと目を開けるのが分かる。
彼女の頭上には、いつか眺める機会があった時に気にしていた帽子だ。
「これ……」
「俺からの贈り物だ。受け取ってくれ」
「どうして……? こんなの高かったでしょう?」
高かった。
けど、ステラに喜んで欲しかったから頑張った。
気にして欲しくはないが、もちろん頑張った事は隠さない。
「俺がステラに喜んでほしかったんだ」
「そんな、受け取れないわよ」
紙とか材木などで作った簡単な細工物なら結構上げた事があるが、さすがにこういう贈り物らしい物をあげるのは初めてなので緊張した。
だけど、今日は大事な日だったし、本気だって事を知って欲しかったのだ。
動揺した様子のステラが帽子を手にしてこちらに返そうとするが、ツェルトはその手を止める。
「受け取って欲しいんだ。だってこれは俺がステラの事が好きだって証だから」
「…………ぇ?」
ステラはもちろん「え?」みたいな顔をしてる。
大丈夫だろうか。ちゃんと伝わってると良いのだが。
……ステラ、鈍感だし。
やはり日ごろふざけてばっかりいるからなのか。
取りあえず、本気だと分かってもらうために無言で出来るだけ真面目に、ステラを見つめ続ける。
……ほら俺、返事待ってる。
そんな事を考えてたらみるみる、ステラの顔が赤くなっていった。
「えっと、好きって……」
「ステラの事だ。俺はステラが好きなんだよ」
ぼんっ。
そしたら何かそんな表現ができそうなくらい、ステラの顔が一気に林檎みたいな色になった。
「え、あ……う……」
ステラは、頑張って何か言おうとしてくれているらしいが、言葉にならないという様子だ。
「その、あの、えっと……あの」
目を回しそうな様子で、それでも必死に考えてくれる姿を見ていると、これ以上意地悪はできないと思った。別にそんな事してるつもりはないが。
「まあ、急に言われても困るよな。だから返事は今じゃなくてもいいよ。ちゃんと答えてくれるまで俺、待ってるからさ」
ステラからはこくり、と小さく頷きが返って来る。
おそらくそれが今の彼女の精一杯なのだろう。
今まで、幼なじみとしか見てこなかった人間からいきなり、告白されたのだから混乱して当然だ。
ツェルトとしては自分の気持ちに気づいて、知って欲しかっただけなので、返事が必ず欲しいというわけではないのだ。
……そりゃあ、くれたらいいなとは思ってたけど、そんな事まであの鈍感なステラに求めるのは酷だろうし。
ステラがツェルトの気持ちを受け入れてくれても、くれなくても、ツェルトの心がステラという一人の人間が大事なのは変わらないのだから。
気長に待とうと、そう決めて、ツェルト達はその場で別れたのだった。
ツェルトがステラへの恋心を自覚したのは一体いつだっただろうか。
思い返すまでもなく、ステラという少女はいつだって、出会った頃からツェルトにとって特別な人間だった。
友達になりたい優しい少女、尊敬できる気高い少女。
そこに恋の感情が加わったのは一体いつからなのか。
何となく、村の危機を救うために頑張ってくれた頃から何か変わりだしたような気もするが、最初からのような気もしてくる。
ともかく、芽生えていた思いを自覚したツェルトは、この機会が来る事をずっと待っていたのだ。
今日、ようやくそれが果たせた。
上手く行かなかったらとか、気まずくなるかもとかは考えない。
失敗を恐れていたら前に進めないのは、何事も同じ。
フラれたのなら、また振り向いてもらえるように努力すればいいのだ。
明日、ステラはどんな顔をして学校に来るだろうか。
返事の一言を聞かせてくれるのは期待しすぎだろうから、せめて意識して顔色を変えてくれるくらいにはなっていてほしかった。
そしたら、何て言おうか。
……まずはおはようから、そして次はいつまでも待ってる、だな。
しかし、予想に反してステラは学校に来なかった。
授業を受けるいつもの教室に、見慣れた金髪の少女はいない。
……やっぱり気まずいのかな。
真面目な彼女の事だから、病気の場合を除いて私情で休むなんて事するわけないと思っていたのだが、考えが甘かったのだろうか。
それとも考え過ぎで知恵熱みたいなのを本当に出してるのかもしれない。
今まで色恋で悩んだことのなさそうなステラなので、初めての事で動揺しているのだろうきっと。
病気の可能性を考えればお見舞いに行きたかったが、そうでなかったとしたら逆効果だ。
そういうわけで色々考えながらも、教室で待ちぼうけをくらっていたツェルトは、ステラのいない一日をぼんやり過ごす事を決めたのだが、そこに部屋に入って来た教師のツヴァンから声がかかった。
「おい、ライダー。狂剣士から連絡だぞ」
「え?」
一瞬告白の返事かと思うのだが、それはないと断言できる。人の手を借りたがらないステラだ。魔法が使えない彼女は誰かに頼らないと遠話機は使えないのだが、私情の為に誰かを頼りにするような人間ではない。
欠席の連絡だけなら教師にするだけで足りるだろうし、ステラは一体どういうつもりなのだろうか。
そう考えていると、ツヴァンが探るような視線を向けて来た。眉間に皺を寄せて。
面倒事を面倒がっている風でもなく。
ツヴァンがそんな表情をするのは珍しい。
眠たげな様子で他の誰かと喋りながら、教室に入って来たニオが、その微妙な顔つきに「んん?」となったくらいだ。
「お前、ウティレシアと何かあったのか?」
「……」
何か、は確かにあったのだが面倒事を嫌っている事を公言してやまない教師に、そんな事を聞かれる意味が分からなかった。
「……まあいい。とっとと、行ってこい」
ツヴァンに促されるまま、ツェルトは遠話機のある場所まで向かう。
事務の人らしき女性に、遠話機を再度繋げてもらい礼を言った後、向こうにいるであろうステラへと呼びかける。
「えっと、俺だ。ツェルトだ。どうしたんだステラ」
「……ツェルト」
返って来るのは沈んだ声。 一声その調子を聞いただけで、ツェルトは分かった。
「ステラ、泣いてるのか?」
ステラは泣いている。
何かあったのだ。
「私、私……」
聞こえるのは、普段まるで聞かない声の調子。
それはステラが周到に周りから隠し続けていたの素の心そのものだった。
「どうしたんだよ、ステラ。何があったんだ」
「ヨシュアが……、お父様と……、お母様が……」
尋ねるのだが、ステラが述べる言葉はまるで要領を得ない物ばかりだった。
落ち着く様に言ってもまるで効果がない。
分かったのは、彼女が今自分の屋敷にいる事ぐらい。
その近くに、……人の気配を感じる事くらい。
「なあ、ステラ傍に誰かいるよな。……」
「……っ」
ステラは口ごもる。ツェルトには教えられないと思ったのか、言いたくないと思ったのか。
少なくとも、家族や使用人ではない事は確実だった。
彼らなら、こんな風になるはずがないし、教えない理由がない。
ならば……。
「ツェルト、好き」
「え?」
唐突に先日の告白の返答をされて、明らかに非常事態だと分かる状況なのに頭が真っ白になった。
「私、ツェルトの事が好き、好き。大好き。好きなの……。やっと、気づいたのっ。私、そういうのよく分からないから。分からなかったから……。ごめんね、ごめんなさい。ひっく……、こんな風にならなきゃ答え、きっと出せなかった……」
泣きながら謝って、告白されて、理由みたいなのを述べられても納得できるはずがない。
素直に受け入れて喜べるはずなど、ない。
「未来を奪われなきゃ……失敗しなきゃ、負けたりしなきゃ……。気づけなかった。私、ツェルトとしか手をつなぎたくない……、ずっと一緒にいるのはツェルトじゃなきゃいや。なのに……」
「ちょっと待ってくれ、ステラ。取りあえず落ち着いて、話してくれよ、な? 大丈夫だって、俺は相手がステラならいくらでも待つから」
いや、今言うべきはそう言う事じゃない。
冷静にならねばと思うのだが、ステラが泣いているのに冷静になれるはずなどなかった。
「ステラ、何でそんな事急に……」
「駄目……だめ、なの。もう時間が……」
ないの。
だから、
さようなら。
唐突だった。
そんな言葉を最後にステラから連絡が途絶えてしまったのだ。
「何があったんだよ、ステラっ」
急いで彼女の元に駆けつけなければならない。
けれど、ツェルトはステラに会いに行く事が出来なかった。
精霊の力を使う事も出来ずに、屋敷へ戻ったツェルトが見たのは、血に染まった屋敷と、ステラ以外の……息をしていない人間達だけだった。
残っていたのは呪術の痕跡と、ヨシュアが最後の力を振り絞って書き記したフェイスの情報だけだった。
それから、数年が経った。
ツェルトは学校を卒業して、王宮の騎士となって働く事になったのだが環境は悪い。
卒業当日に王都でクーデターが発生して、ツェルトは両親を人質に取られているからだ。
もうすぐ二十になるかという年。
けれど、ツェルトの隣にはステラの姿はないままだった。
その代わり……。
王都から少し離れた場所、任務で訪れた小さな町の中で、ツェルトは向かい合った女性に話しかける。
町からは火の手が上がっていて、遠くにある遺跡からは魔物が出現して暴れまわっていた。
「これで、三度目……になるのか」
「そうなるわね。貴方はいつもフェイスの邪魔をしにくるのね、ツェルト」
ツェルトの隣にはステラはいない。
代わりに彼女がいるのは、別の人間の隣だった。
「ステラ……、俺はステラを傷つけたくない」
「私は貴方を殺してしまいたいわ、今すぐにでも」
「頼む。目を覚ましてくれよ」
「悪いけれど、起きたまま夢を見る趣味はないし、目ならとっくに覚めているもの」
「ステラ……」
話が通じない。
今までフェイスの側の人間としてニ度、ツェルトの前に立ちふさがって来たステラは、いずれもまったくこちらの言葉に耳を貸さなかった。今回もきっとそうだろう。
だがそれでも好きな人である事は変わらなくて、傷つけるなんて、ましてや大罪人の仲間として殺すなんて、ツェルトにはできるはずがなかった。
「ツェルト隊長、そろそろと他の隊が合流する時間です」
村の生還者であるだろう子供を引きつれてやってきた、己の部隊の者達。その中の副隊長の言葉を聞いて、ツェルトは判断を下した。
目の前にいる女性へと、その言葉を伝える。
「……っ、行けよ」
この状況で他の部隊が来てしまったらまずい。手抜きの戦闘をして万が一ばれたら大変な事になる。
グレイアンに余計な詮索をされたくはないし、何より例の剣を回収してしまった自分が目の前にいるにもかかわらず大罪人を取り逃がすなんて失態を侵せば、どんな所から例の計画に綻びが生じるか分かったものではなった。
何より、貴族の養子として今まで立ち回って得た利益もある。こんな所で水の泡にしたくはない。
「そう、別にいいけれど。貴方のそういう所、未だに分からないわ」
ステラはそう言いながら、戦闘は双方に無益だと判断したらしく、そんな捨て台詞を残してさっさと引いてしまう。振り返りもせずに。
「その言葉、昔も良く言われたよな」
懐かしい思い出がいくつか蘇ってきたが、直後に到着した他の騎士達の声ですぐにかき消されてしまった。
そんな風に騎士として、灰色すぎる時間を送っているツェルトだが、憩いの時間なる物も一応存在していた。
「あの、ツェルトさん……」
「何だ」
空中庭園の一画。
ふいに声を掛けられてツェルトが振り返れば、アリアが表情を硬くして若干身を退いていた。
腹の中に一物持ってる人間を相手にする用の表情を張り付けていたツェルトは、人から見れば怖い人間に見える事を忘れていた。
ツェルトは罰の悪い思いをしながら、相手に謝罪する。
「あ、悪い。碌でもない連中が来たのかと思って」
「いえ、私の方こそ。顔色が良くないように見えたので、……」
「心配かけちゃったか、悪いな」
いいえ、大丈夫です。とこちらの言葉に人の良さそうな笑みで首を振るアリア。
そこに、新たに声を掛けるのはクレウスだ。
「まったく。そういう態度をとるから君は周囲に誤解されるんだ。女性にくらい優しくしたらどうだい?」
「そういうのはステラ専用って決めてるんだよ。他の人間の分はないからな」
「やれやれ」
……大丈夫、仲間の分は別でとっておいてあるから。
と、そうは思ってもそこまで軽口をたたく気力はなかった。
だが、気力はなくとも気が楽なのは事実だ。
心優しいアリアや、真面目な性格のクレウス等といる時間は、殺伐とした生活を送るツェルトにとっては何よりも代えがたい貴重な時間であった。
部隊の仲間も良くしてくれるが、何しろ接するのは責任の伴う任務の方が多いので、彼ら二人といる方が正直気が楽なのだ。仲間である彼らを蔑ろにするわけでもないが。
そんな事を考えていたせいなのか、そうではないのか割とツェルトに厳しめの隊の仲間、副隊長のイリンダがやって来た。
「どうかしたのか?」
「ツェルト隊長、例の情報ですが……。ステラさんの情報が」
「ああ、また来たか、今回は割と早かったな」
ステラはフェイスの手駒となって、活動している。
色々、リートにくっついて動いているおかげで、こうやって任務が言い渡されるよりも前に、情報を手に入れられる事もあるのがありがたかった。
「いえ、その今回は少し違っていて、実は…………」
しかし、もたらされたのはいつもと違う情報だった。
「ステラさんが、アクリの町で昨日の夜に……、正気に戻った状態で発見されて……」