第39話 曇天の空の下で
フェイスは最初からいなかったのかそれとも途中からなのか分からない。
遺跡の奥の部屋に来た時はステラ達と普通に会話をしていたので、途中からいなくなったという線で考えるのが普通だろうが、どちらにせよ逃げられた事には変わりがなかった。
その後はフェイスが仕掛けたであろう遺跡の崩壊を何かして止め、呪術でやってきたシーラとヨシュアと共に、再度同じく呪術のお世話になって王宮へ帰還した。
遺跡から姿を消したフェイスが何をしていたかというと、やはり王宮へ向かっていたらしい。
レットやヨシュアが頑張ってくれたのでエルランドの身に被害が出るような事はなかったのだが、その代わりに保管されていた昔の呪術の実験資料や、カルネが頑張って進めていた解呪資料なども盗まれてしまった。
フェイスが逃亡した後、騒ぎになっている王宮に帰って来たステラ達は、ニオにツェルト達の事を頼んで、当然その混乱に収集をつける為に奔走する事になる。目立った被害は出なかったものの、有名な犯罪者に侵入されて、内部の混乱はかなりのものだったからだ。
そしてその後の報告や話し合いで分かった事だが、ツェルト達がかかった罠……その仕掛けられた場所は意外でもなんでもない場所だった。聞けば納得できる場所。よくよく考えてみれば、落ち着いて仕掛けるなら、そこしかなかったはずなのだ。(少し前にツェルトが風邪を引いたとか言っていたのだが、そこでステラは異変に気が付くべきだった。ツェルトは、精霊使いになった影響で病気にはならないはずなのだから)
罠の仕掛けられた場所、……それは領主の館だった。
彼等は、領主の館にあるものを触った時に呪術の罠に引っ掛かってしまったのだ。(事実操られていた者達は皆、ムーンラクト領での任務を受けた者ばかりだった)
それは平行して行われていたムーンラクト領、領主の取り調べでも明らかになった。往生際が悪いと言えばいいのか、意外に肝が据わっていたと言えばいいのか情報を引き出すのにかなり時間がかかってしまったが。
それで気になるのは肝心の被害者……ツェルト達の容体なのだが、一応意識は戻っているのだが、呪術の影響が残っているのか思うように体が動かせないようだった。
何とかしようと手を尽くすものの、頼みの綱であったニオの魔法では歯が立たない。
ニオの魔法は効力の発している魔法陣を消すことで、無効化するもの。
ツェルト達のかかった罠は確かに魔法陣によるものだったのだが、魔法陣自体の力は人が触れた瞬間になくなっていたらしい。ムーンラクト領から苦心して運んできた品物を調べて、ニオが肩を落としたのを見ているから間違いないだろう。
つまり結論を言えばニオではどうやっても、ツェルト達のかかった罠は無効化しようがないのだ。
代わりにカルネがフェイスに奪われた資料の控えを引っ張り出してきて、対処を考えているのが現状だが、有効的な手を打つ事はできずにいる。ツェルト達は、見張りをつけて王宮の一室に待機せざるを得ない状況になってしまった。
見たところ彼らがこちらに対して害を振るう様子はまったく見せないのが、呪術の仕組みが未だに解明されていないのを考えると、部屋から出して自由に行動させる……なんて事は考えられないだろう。
王宮 空中庭園
そう言うわけなので、ここ数日は周囲からいつもの賑やかさが失われてしまったのだった。
ツェルトもいない、クレウスもいないそんな昼の時間をステラ達は庭園で過ごす。
ニオは護衛の仕事で忙しいし、カルネは呪術に詳しい唯一の人間の為、自由になれる時間が少ない。王宮にまだ滞在しているだろうレットとヨシュアなら、たまに話す事ができるのだが、今は間が悪いらしくウティレシア領の領主の仕事について話をしている。ツヴァンは知らない。王宮内にはいるようだがステラ達は遭遇しないし、おそらくレイダスが面倒だから逃げているのだろう。
そういうわけだからステラも誰かの仕事を手伝おうとしたのだが、誰も彼もから同じように顔色が悪いとか、休めとか言われて追い出されてしまったのだ。それは今、ステラの向かいに座るうちの一人……アリアも同じだった。
彼女の事なのだが、不思議な事にツェルト達の任務を受けたはずなのだが、何故か呪術にはかからなかった。
話を詳しく聞くには、領主との確執があったため、屋敷であまり行動しなかったからそのせいだろうとの事だった。
アリアを苦しませるだけだったように思えたムーンラクト領の領主だが、そのおかげで助かるとは。不幸中の幸いなのだろうが素直に喜べない。
そういう事情なので、いつもの木の下で敷物を広げて、食堂から持ってきた食べ物を口にするのはステラ達、数人だけ。
ステラ、アリア、とそして、この場にいる最後の一人はユリシアだ。
彼女の場合は今まではたまに昼食に参加するぐらいだったのだが、ステラ達に気を使って最近はよく昼の庭園にもやって来るのだ。
いるといえば、一応木の上にもレイダスという名の、本当に名ばかりの騎士がいるのだが、それはカウントしていない。
……。
無言で、食べ物を口に運ぶ。
空気が重い。
空は晴れて普通に見れば心がすっきりとするような、そんな天気だったのだが、せっかくの空模様もその場に満ちる空気の重さが全てを台無しにしていた。
なんだかこんな風にしていると、数年前の暴政時代に戻ってしまったような気になって来る。
良くないだろうこれは。
「ええと、それにしても驚きですわね。まさか貴方の持っていた月のペンダントに遺跡を動かす力があったなんて……」
そんな空気を読んだのか、ユリシアが口を開いて話題を提供してくれる。
「そうですね。私自身も驚きました。お母様からもらったただの形見だと思ってたんですけど。まさかこれが伝説の人物……白き巫女の残した遺物だったなんて」
その話は、つい先日の遺跡での事だ。
「ステラさんがそんなにずっと前から、ええと……世界の欠片? で情報を知っていたのも驚きましたけど、まさか私が普段持ち歩いていた物が、そんな品物だったなんて思いませんでした」
星降りの丘の遺跡から帰ったステラは、約束した通り意識の戻ったツェルト達も交えて、王都での事件を察知した理由や、今回の遺跡の崩落を止めた理由を話して聞かせたのだ。
アリアの持っている形見のペンダントは、実は遥か昔にこの世界に生きていた白き巫女の持ち物で、アリアの祖先は当然その白き巫女という事になる。
遺跡はその白き巫女や、朝の勇者などが生きていた時代に作られた物。詳しい事まではステラの持つ情報でも分からないのだが、それだけあれば推測ぐらいはできる。アリアのペンダントは、その時代に生きていた重要人物の持ち物だ、関係があると考えてもおかしくはないだろうし、遺跡を動かす鍵となっていても不思議ではないだろう。
もちろんそれらを話すときは、ゲームの事などとは一切言わずに、大精霊が話してくれた言葉を使って、この世界が本来辿るはずだった歴史を知ったのだと言う風に説明した。(ちなみに一応それも事実なので、嘘は言っていない)
歴史がなぜ変わってしまったかについては、まだ話してはいないが……。
しかしその時の……本来起きるはずだった事についての話を終えた時のアリア達の様子と言ったら、とても一言二言では言い表せない混乱っぷりだった。
特にステラが悪役として、フェイスの手先として色々と動く場面などは、比喩でもなんでもなくアリアが顔を真っ青にして倒れてしまったくらいだ。
ステラとしてはそれ以上いたずらに仲間たちを不安にさせたくはなかったので、結末については知らない事にしようと思ったのだが、何の運命のいたずらかツェルトがすでに知ってしまったらしく、仕方なしに話す事になってしまい、追加でカルネに倒れられた。混沌と化すその場の空気を、どうしようかと思った。本当に。
最終的には、歴史は変わったし、皆無事に生きているのだからそれでいいじゃない、という風に何とか落ち着かせたが。
そんな風にちょっと前に起きた苦労について思いをはせていると、アリアが納得のいったような表情で言葉を続けてくる。
「……けれど、これで納得できました。私はステラさんの事を信じていましたけど、どうしてあの王都での出来事を知る事が出来たのかずっと不思議に思っていましたから」
「私はその事は詳しく知らないのですけど、大変だったようですわね」
「はい、触ったら駄目な敵と戦うのはあれが初めてでしたし、それ以前にその時の私達は、あれほど強い魔物と戦うのは初めてでしたから。……ですけど、そのおかげで卒業試験の時でも度胸があるって誉められたんですよ」
話題は、そこからアリアの卒業試験の話へと移っていったようだ。
なんでも試験の時にクレウスと二人のワンセットで教師から扱われ、恋人としてクラスメイト全員にからかわれたのは凄く恥ずかしかったのだとか、そんな話だ。
さっきまでよりも、若干だが明るくなった空気にステラはほっとする。
前世のステラはゲームのトュルーエンドはクリアしていなかった。
……のだが、やってはいなくても日々を過ごしていれば事前と話題は耳に入ってくる。
周囲にいた友達やたまたま目についた雑誌からの情報を記憶していて、今回は運よく思い出す事が出来たらしい。
本来のゲームのトュルーエンドの知識を考えるに、どうにもああいう類いの遺跡は古代に生きた伝説の人物の遺物を使うと、色々動かせるらしい。
そこまで考えて、ならステラの持つ勇者の剣でも遺跡は動かせたのではないかと思うのだが、それでは駄目なのだ。なんでも数代に渡って色々と人の手が入り続けていたらしく、昔あった物とは全くの別物となってしまっているらしい。
「おい、飯食わねぇのかよ」
そんな事を考えていると、頭上からレイダスの声が降って来た。
そういえば、彼もいたのだった。意識から除外していたが。
「要らねぇんなら、俺様に寄こせ」
そういえばと手元を見つめる。話を進める事に夢中になったり、考え事に集中したりして手が止まっていたようだった。
いつもなら、話をしていても自然と食器が空になっているのに、やはり無理に雰囲気を取り繕うとしていたせいで進まなかったのだろう。
「食べるわよ。たまには私達の昼食を奪うんじゃなくって、食堂に行ってきたらどうなの?」
「はっ、弱ぇ人間と並んで美味い飯が食えっかよ」
レイダスは小馬鹿にしたように鼻で笑って見せて、そんな一言を返してくる。
本当に彼は色々起こっても何も変わらないのよね。
そう言う風に思ってると、恐れを知らない様子でユリシアがレイダスへと話しかける所だった。
「あら、では私たちと食べるお食事は美味しい、という事でよろしいんですの?」
「あぁ? テメェその口引き裂かれてぇのか」
「また近いうちに約束したものを持ってきますわ。今度はしっかり味も研究しましたのよ」
「ちっ」
舌打ちと共に、視線を背けるレイダスの様子は、言う事言ってやったという表情ではなく、不利な所を突かれてしまったという表情だった。
ステラは、会話を聞いていたアリアと顔を見合わせるしかない。
本当にいつの間に二人は仲良くなったのだろうか。
不思議に思いつつも止まっていた手を動かして昼食を再開しようとするのだが、その手に水の雫が落ちて来た。
空を見上げる。
さっきまでは、真っ青な空が見えるいい天気だったというのに、いつの間にか重い雲が伸し掛かる様に頭上に広がっていたのだ。
その頭上から、一滴、二滴と水の雫が零れてきた。
「わ、雨ですね。本降りになる前に中に戻らないと大変です」
「遠くで雷も鳴っているようですわ。長く降るのかもしれませんわね」
段々と雨は強くなっていく。ステラ達が王宮の内部に駆け込むころには、外はバケツをひっくり返したような有り様になってしまった。
分厚い雲に覆われ日の光が遮られた中庭は、暗がりの中に沈んでいて、時折鳴り響く雷鳴にだけ一瞬照らし出されている。
それは、ステラの記憶の中にある別の光景と重なって見えた。
ついさっきまで、あんなに明るかったというのに……。
変わってしまうのは一瞬だ。
「ママ!」
そう思っていると、王宮の廊下をタオルを持ったシーラが駆けてくる。
その遥か後ろには、保護者をしていた騎士の姿があるのだが振り切られてしまったらしい。
「雨が降って来たから、シーラ偉い?」
「ありがとう、すごく助かったわ」
差し出されるタオルをもらい頭を撫でてやると、心の中にわだかまっていたもやが、晴れていくのが分かった。シーラの笑顔は、きっとどんな薬よりも体に良く聞く栄養剤になるだろう。
「また早く庭園でご飯が食べられるようになるといいわ。今度はみんなで……」
今度は、もっと大勢で、ツェルトや、クレウスや、ニオも一緒にと。
ステラはそう願った。
王宮 廊下 『ニオ』
ニオは、ツェルト達が保護されているだろう部屋に向かう所だった。
だった、というからにはそれは過去の目的であって現在は違う。
今は、ある人物の後をこっそりつけて歩いている所なのだ。
ツェルト達がいるであろう部屋からでて来るライドの姿を見つけたので、どういう心境だったか詳しい事は分からないが、何となく後を付けることになってしまったのだ。
彼はツェルト達の事が心配で、王宮に来たのだろうか。
あんな事を言っていたから、もう王宮には顔を出さないと思ったのに、本当に都合の良い人間だと思う。
もっともそれがライドなのだと言えばそれまでなのだが……。
……また、冗談だったって事はないよね?
今までの態度が態度だ、冗談でした活発ちゃん……なんて、そういう線も考えなかったわけではない。
でも、そう考えるにはあの時のライドの態度は真剣すぎた。
ちょっと前に、カルネが遅い休憩の為に部屋を開けて出て行ったらしいのだが、見張りはライドみたいなよく分からないふらふらした人間をあんな部屋に入れて良かったのだろうかと、少し心配になる。
別に彼が仲間達に害を働く事を心配しているわけではない。何かあったときにライドが疑われてややこしい事になるのを心配したのだ。
ただでさえ、軽薄そうで怪しそうな言動をしてる、いい加減な人間なのだ。そう言う事があったらきっと真っ先に疑われると思う。ニオの一番はエルランドなので、手助けするのも限度があるというのに。人も気も知らないで。
ライドという人間はそんな心配ものともせずに好き勝手行動してくれるから困るのだ。
……姉離れできてない手のかかる弟みたいだよ。ほんと。
そう思いながらも、離れた所を歩く背中を追いかけ続けて歩くのだが、ふいにその行く先が変化した。
「あれ?」
目の前を歩くライドが、王宮の中でもあまり使われない部屋の方へと向かって行っているのだ。
めぼしい施設も部屋もないのに、一体どんな目的があるのだろうと首を傾げるのが、その背中が不意に止まり、ある部屋へと入っていく。
ここまで来た以上、何も知らずに引き返せるわけなどなくニオはその部屋を覗き込むのだが、
そこには……。
床に描かれた魔法陣から出現する、元王グレイアンの手下と魔物がいた。
「っ!」
ニオはとっさに口元に手をやったが、声が漏れ出てしまった。
「誰だ!」
振り返ったライドと視線が合う。
「ニオちゃん? どうしてここに」
「ライド……くん……? 何、それ……」
自分の目にしている光景が意味不明過ぎて、ニオは考えるよりも前に目の前の人間に質問していた。
ライドは答えない。
そうこうしている内に、王宮のどこかから破壊音の様なものが聞こえてくる。
「な、何……一体何が起こってるの?」
じり、と後ずさったニオに多くの敵達の視線が集まる。
思わず体が硬直してしまうが、どこからか聞こえて来た兵士達の叫び声に、否応なく王宮の中が緊急事態だという事実を叩きつけられた。
ニオのやるべき事はエルランドの身を護る事だ。
こんな所で油を売っていてはいられないし、簡単に死んでいていいわけはない。
「っ……」
身をひるがえしてその場から逃げ出す。
離脱できる自信はあった。足の速さと俊敏な動きは、ステラ達ほど戦闘力のないニオの、少ない自慢の一つだから。
「待て、お前ら。あの子は駄目だ! 殺すな!」
背後から敵の気配が追ってくるが、その時に発せられた声に不覚にも安堵してしまった。
望んでやっているわけではないのだと、そう思えたから。
敵侵入を知らせながら逃げまわり、追手を巻きながらエルランドの元へと急ぐ。
だが、そのせっかくの努力も数区画分走った際に、あやうく無駄になるところだった。
「え、ツェルト君? どうして……」
王宮の中。
兵士達と戦っているのか、ニオの友人であるツェルト・ライダーだったからだ。
彼は、おおよそ普段の様子とはかけ離れた冷たい表情で剣を振るって仲間を傷つけている。
よく見れば周囲にはクレウス達もいる。皆、操られているのか。
「そんな、ツェルト君、呪術で……」
「違います、彼は……ただ操られているわけではありません」
「カルネちゃん! 怪我してるの!?」
目の前の惨状に思わず足を止めてしまっていると、横からカルネの声がかかった。
だがその額から真っ赤な血を流しているのを見て、すぐに心臓が縮む思いをする。
「問題ありません。この方に助けていただきましたから」
「この方って……あ、ツヴァン先生!?」
カルネに言われ彼女の背後に立つ人間をみれば、そこにはツヴァンの姿があった。
めまぐるしく動く状況に頭が混乱してきそうになる。
さっきまでの平和な王宮どこやった。
もう、何でこういう時に色々重なって起こるの……!?
「久しぶりだな、ウレム。ったく、呼びつけられて早々、とんでもない人間の対処を押し付けられたかと思えば、今度は非行に走った元生徒の相手かよ」
とツヴァンは愚痴をこぼしつつも、ニオ達の方に戦闘の余波(おそらく誰かの魔法だろう)で飛んできたがれきの雨を、何でもないかのようなしぐさで、剣で切り払った。
ちょっと何これ、ツヴァン先生ステラちゃんに間抜けな負け方した時よりも強くなってない?
これ以上ニオを驚かさないで欲しいんだけど!
驚きつつも、近くに時折転がって来るがれきなどから回避行動をとる。
遠くで戦っている兵士達は、魔法やらなにやらをバンバン飛ばしまくって、まるで周囲に気を配れていない。
それもそのはずだ。ニオが見る限りあのツェルトは本気で戦っている、余計な事など考えていたら、やられるのは自分たちなのだから、必死にもなる。
「ったくやってらんねぇな。とんずらしてぇ……」
「とかいいつつ、それでも律儀に助けてくれるんだから、先生って実は良い人だよね」
「うるせぇ。あー、それより行く所があるじゃないのかよ」
こんな時でも普段と変わらない様子のツヴァンに調子が戻ってきたような気がするニオなのだが、そのっ言葉で思い出した。
そうだ、エル様だ。忘れちゃいけない。
危うく、がれきに押しつぶされる所を助けられたり、こんなところで立ち話をしている場合ではないのだ。
……ニオはエル様を守らないといけないんだった。
でも……。
気になる事があった。
「その前に一個だけ。カルネちゃん、操られているわけじゃないって言ってたけど、どういう事?」
そして、カルネはニオの問いに、答える。
ニオの友人、ステラ・ウティレシアにとっての最悪の出来事を。
「先ほどツェルト達のいる部屋に侵入された跡があったので、不審に思って調べたのです。そうしたら呪術を使用した痕跡が見つかって……。ええと、つまり……すみません私も混乱しているようです。こう述べた方が早かったでしょうね。彼……ツェルトは、部屋にやってきた私にこう言ったのです」
自分はフェイス・アローラだと。
「彼は何者かの仕業によって現在、フェイスに憑りつかれてしまっているのです」