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ちょっとした不幸な始まり

 僕の仲間を紹介しよう!


「ウェイ? ウェイウェイウェイ? ウェーイウェイウェイ」


 イケブクロ原住民チャラ男のタケシ! 勿論埼玉県民だよ! 知能指数がいちぢるしく低いからありとあらゆる言語がウェイになるんだ!

 自分が前に出て活躍したいから職業は当然剣士さ! でも前に出てすぐ死ぬよ! ヘイト管理? メンチ切られたら切り返すそれが俺の流儀っつーか。ウェイウェイウェイ? ウェイウェイウェイウェイウェエエエエイ。


「きゃるるーん♪ アチコ、ちょう怖い―!」


 離婚調停中の主婦のアチコ! 旦那に払う慰謝料を稼ぐために姫プレイをしている有名な寄生だよ! ボイチャで借金取りが来た時の音声データはいまじゃネットの笑いものさ!

 もちろん姫プレイヤーだから職業はヒーラーさ! でもゲーム下手なキャラを演じなきゃならないからタイミングは全て狂うしいらない時にいらないことをするよ! アチコ、ヤニ切れちゃったからコンビニいってくるね♪


「フッ……貴様らの手など借りなくとも俺が全て解決してやる」


 よくわかんない俺様ロールプレイの聖堕天使漆黒騎士アルフレッド=ブラッド六世! じゃあそんなこと言うなら始めっからパーティ入らないで一生一人でやってろよ! しかも職業は当然剣士! タケシとかぶってんだよ!

 ボイチャでたまに聞こえてくるのはお母さんの声だ! タカシ、ごはんよー! そこもタケシとかぶってんのかよ!


 最後に僕の紹介をしよう。

 僕はナイトのセツナ。一人じゃ不安というかまあ手伝ってもらおうというかぶっちゃけ他の人にやらせてクリア実績だけもらおうとPTを立てたら、全員が自分以下だった何も守れない騎士。

 え? パーティ解散すればいいって? 無理無理、いまこのゲームバグってるんだもん。

 じゃあ、パソコンの電源落とせ? そうしたいけど、やっぱ無理。


 僕らはこのゲームの中に、閉じ込められてしまったからね。



 僕がPTを募集して、あっだめだな解散しよって思った瞬間、僕らはゲームの世界に閉じ込められた。正直四六時中ゲームができるから僕は嬉しくてしかたがないのだけれど、少なくとも街には行きたい。

 僕らが挑もうとしてるのは、2番目の街と3番目の街をつなぐトンネルの中に潜んでいるボスだ。

 ダンジョンのスタート地点は中途半端な場所で、2番目の街に戻るには時間がかかる。普通のパーティならちゃっちゃとダンジョンを抜けてしまったほうが楽なのだ。

 そう、普通のパーティなら。

「ウェイ! ウェイウェイ!」

 僕が敵を引きつけるより早く、タケシが飛び出す。金髪色黒鼻ピアスは、僕よりレベルが高いくせにもうその辺に落ちてたんじゃないかって武器で敵に斬りかかる。やめてよお、剣のほうが可愛そうだよお。

「ゲームの中って、ヤニ売ってないの……? 意味分かんない、明日から私何していけばいいのよ……!」

 アチコはもはや役立たない。

「フッ……これから俺の伝説が始まるわけか。やれやれ、世界が俺に救われたがってるとは」

 アルフレッドも意味がわからないことを何やら言っている。

 この中で一番まともなのがタケシという、もはや罰ゲームみたいなダンジョン。

「タケシ! 僕が引きつけるから後ろから切りつけて!」

「ウェイ!」

 そう言うと、タケシは僕の背中に思い切り袈裟斬りを放った。

「ウェーイwwwwwwww」

 くそっ、なんて連中だ。


 ―中略―


 僕はついにダンジョンの最奥へとたどり着いた。

 迫る来る敵を押しのけ(僕一人で)、山というほどのアイテムを使い(自腹)、何度も復活しながら(これだけ全員)、敵の前に立っていた。

 スカルドラゴン。

 それがこのダンジョンのボスだ。

 

 いわゆる初心者殺しとして一時代を作ったモンスター。もちろん僕のレベルであれば苦労しないような難易度だけれど、実はこのPTは高難易度版に挑んでいた。

 高難易度版で付けられたあだ名は、中級者殺し。いわゆる壁モンスターである。

「フッ……来たな魔王、この聖堕天使漆黒騎士アルフレッド=ブラッド六世との長きに渡る因縁をつける時が来たようだな……」

 違うから、そいつスカルドラゴンだから。

「きゃるるーん、がんばっちゃうぞー♪」

 アチコはニコチンが切れたせいかもはやおかしくなっていた。なにせ白目を向きながら壁に向かってそんな事を言うのだから。

「うぇい……」

 この戦いでタケシは成長した。カタカナからひらがなになった。でもボキャブラリーは増えない。

「みんな、行くぞ!」

 そして僕たちは突撃する。いくぞスカルドラゴン、いまこそ脱中級者!


 スカルドラゴン の こうげき !


 ぜんいん に 2946 の ダメージ !


 PT は ぜんいん しんでしまった !


 全滅した僕たちは空へと導かれ、そして第二の街へと戻された。

 この機能、ボス部屋で全滅しないとないんだよね。 


「あっ、お疲れ様でしたー」

 僕はさっさとPTを解散し、道具屋に向かって走った。まずは使いまくったポーションを買いに行こう。

 それから、宿屋でゆっくり休もう。


 僕のこの世界での旅は、始まったばかりなのだから……!

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