Where is my key
綴りがあっているか不安です。
見落としがないか何度も何度も確認したがやっぱりどこにも鍵がない。
確か鍵をなくした場合は管理人さんのところへ行くように学校からの案内に書いてあったような気がする。
入学初日から鍵をなくすようなバカは私くらいだろう。少し恥ずかしいけど仕方ない。とほほ…
管理人室まで行き、コンコンとドアをノックすると40代くらいの女性が中から出てきた。
「新しい生徒さんよね?こんばんは。どうしたの?もしかして荷物が届いてなかったとかかしら?」
とても優しそうな人で少し安心する。
「あ、こんばんは!えと、そのー、鍵を何処かに落としてしまったみたいで…スペアキーがあれば貸していただきたいのですが」
「あらー、困ったわねー…」
管理人さんは手を頬に添えて困ったポーズをした。何気に可愛い。
「申し訳ないんだけど鍵は貸してあげられないのよー」
な、なん、だと…!今なんとおっしゃいました?!
「え!あの、それは貸し出しが禁止ということでしょうか?」
スペアキーだから貸し出しをしてそのままどこかに行ってしまう可能性もあるから貸し出し禁止になっているってことかもしれない。そう思いたい…。
でも私の希望はいとも簡単に崩れ去る。
「違うのよー、ちょっと前にね、うちの寮新しく鍵を付け直したんだけどその時に渡されたスペアキーが業者さんの手違いで違うのだったみたいで今送り直してもらっているところだから鍵自体がないのよー。ごめんなさいね。」
業者さんのばかぁぁぁぁぁぁぁ!ど、どうしよう!これは学校まで戻って鍵を探すしかないのかな…。
「鍵をどこでなくしたとか検討はつかないの?机の上に置いてきちゃったとか靴を履き替える時にどこかに置いたとか」
言われてみれば帰る時荷物を慌ててしまったけれど鍵は取り出しやすいところに入れようと思って机の上に置いたまましまった覚えがあるような…。
片瀬君のせいにするわけではないが彼が話しかけてこなければ私は今頃寮で自分の部屋を満喫できたのにと思うとため息が出る。
「机の上に置いてきたかもしれません…」
「んー、まだ16時過ぎだしもしかしたら学校にも入れるかもしれないから一度行ってみたらどうかしら?」
また来た道を戻らないといけないめんどくささと走らなければいけない気だるさでめまいがしそうだ。
「わかりました。ちょっと見てきます!あ、荷物預かってもらってもいいですか?」
さっき走って思ったけど走るのに教科書がパンパンに入ったカバンはすごく邪魔だ。だからと言って寮の前に放置するわけにもいかない。
「わかったわ。敷地内とはいえ少しくらいから気をつけて行くのよ?」
「はい、では行ってきます!」
管理人さんに荷物を預けスマートホンだけブレザーのポッケにしまい私はまた学校へと走った。荷物がない分走るのが楽だ。体力ないからすぐへばるけど。
学校へと着く頃には周りもだいぶ暗くなっていて不気味な雰囲気を醸し出す。
なんだろう。この雰囲気味わったことあるようなないような…。
頭に少しモヤがかかったようなスッキリしない感じがする。でもそんなことは今は気にしていられない。早く鍵を見つけなければ!
運よく学校の門は開いており玄関も鍵はかかっていなかった。
それが不気味さを増している気がする。
は、早く鍵見つけて帰ろう!
少しビクビクしながらも教室へと向かう。私も女子の端くれではあるため暗いのは少し苦手だ。スマートホンを懐中電灯代わりにしながらなんとか教室まで後少し、というところで教室から何人かの話し声が聞こえてきた。
まずい。これはまさか…!
今更になって学校に入る前から感じていた不気味な雰囲気の正体を思い出してしまったのだ。
これはヒロインに1番最初に引き起こるイベントだ。 そう、人外化した攻略キャラ達とのファーストコンタクトの場面。
なんでよりにもよって今日なのよ!教室に入らないと鍵取れないのにー!そもそもなんでうちの教室でイベント発生してんの!
そんな事を言っても起こってしまったものはしょうがないとはいえ、ついつい思ってしまう。
音を立てないように教室の扉まで行きそーっと中を覗いてみると綾瀬さんが攻略キャラらしき生徒たちに囲まれている。耳やら尻尾やら羽やら生えているのがわかる、と同時に私の席を見てみると鍵が置いてあるではないか。
やっぱりここだったかー!あーもー、どうしよう。ここで入ったら完全に死亡フラグだし、でも鍵取らないとだし…
一人でしゃがみながらオロオロしていると誰もいないはずのうろから私の肩にぽんっと手のようなものが置かれた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
私は叫びながら立ち上がってしまった。教室の中にいた彼らが一斉に私の方を向く。そして顔から血の気がさーっと引いていくのがすごくわかる。どうすることもできずに立っていると入学式の時に私がここがゲームの世界であると思い出すきっかけとなった生徒会長らしき男子生徒が私の方へとまっすぐ向かってくる。
あぁ、死亡フラグたっちゃったよ…。