さっぱりピーマンわけわかめ
これ死語なんですかね…←
これはいったいどういうこたなんだろう。綾瀬さんに手を握られとても熱を帯びたような目で見つめられる。そういう目は攻略対象にだけしていなさい。
「あ、えっと、綾瀬さん落ち着こう?」
衝撃から少したち冷静になってきた。
「雫って呼んでくれないの…?」
綾瀬さんがしゅんとして少し涙目になる。
「え、ちょ、んー、あー、えと、雫ちゃん?」
なんだこのちょっと恥ずかしい感じは!今まで生きてきた中で(前世も含め)変なあだ名ばっかりつけて呼んでから妹以外で名前呼ぶなんて慣れない。
羞恥心と戦いながらも呼んでみると綾瀬さんもとい雫ちゃんはとっても嬉しそうに笑った。私が男の子だったら「君には笑顔が似合うよ」とか言って口説きたいところだ。
「あぁ、この可愛い声で名前を呼んでもらえるなんてなんて幸せ…。至福とはこういうことを指すのね…」
顔はいいのになんていうか、うん、残念系だ。
「あの、雫ちゃん?もう少し落ち着こうか。まず一旦寮に戻らない?私荷物を管理人さんに預けたからあんまり遅くなると心配させちゃうだろうし」
「あ、そうだね!ごめんね、ちょっと取り乱しちゃって…」
よかった。言葉はちゃんと通じるみたい。
「ううん、大丈夫。早くかえろう?」
「うん!」
わんこ属性なのかな…。見た目は自由気ままな猫っぽいのにー。
「帰ろー」と言いながら教室の外へ出ようとすると誰かの腕が伸びてきて私の腕を掴んだ。
「俺のこと忘れてへん?」
あ、まだいたんだ。
とは少しかわいそうなので言わないでおくことにした。
片瀬君は少しむっとした顔をしている。
「あ!ご、ごめんね片瀬君。さっきも言ったように私と雫ちゃん2人だから大丈夫だよー」
「うん!大丈夫大丈夫!街頭だってあるし話しながら帰ればすぐ着いちゃうよね!」
「そういうことだから、片瀬君お気持ちは嬉しいけど2人で帰るね?でもありがとう」
少し納得いってない顔をしたけど頷いてくれた。雫ちゃんのこと送って行きたかったのかな。だがしかし私がいないときにしてください。
「あ、そういえばさっき聞きそびれたんだけどなん雫ちゃんがここにいたの?」
うっかり聞き忘れるところだった。危ない危ない。
「あー、うーん…」
何故か少し誤魔化すように視線を外した。
何かいけない内容だったっけ…。うーん、記憶がもやもやする。
「今は秘密っ」
雫ちゃんは人差し指を口の前にもってきてウィンクした。
なんだこの可愛さわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!こういうのを女子力って言うんだよね!ご馳走様です!
「わかったー」
可愛さにやられたのと冷静に考えてみたら関わりすぎると私も死亡フラグに巻き込まれる可能性が高くなることから深追いするのはやめた。今の状態でもヒロインと攻略キャラと関わってしまった時点で少し危ないよね。
「じゃあ帰ろっか!」
「あ、ちょい待ち!」
片瀬君がまた腕を掴んでくる。なんだよ、また帰るのを妨害してくるのか。
「どうしたの?」
「やっぱなんかあったりしたらあかんし一応アドレスとか交換せーへん?」
こやつ何を言い出すんだ。
「あ、それもそうだね!私も交換したーい!」
あぁ、雫ちゃんと交換したいのかー。そうかそうか!さすが攻略キャラ抜け目ないな!
ニヤニヤしそうなのを抑えながら2人がスマートホンを出すのを見守っていると2人が私を見た。
「柚木ちゃん?」
「へ?」
「柚木ちゃんもしかして携帯もってへんの?」
ん?2人で交換という話では?
「へ?持ってるよ?」
「……。」
え、え、どうしたこれはどういう状況?ちょっと片瀬君と目が据わっている。
「柚木ちゃん携帯貸して」
「え、う、うん」
片瀬君少し怖かったので思わず渡してしまった。
片瀬君は私からスマートホンを受け取ると素早く何かを打ち込んだ。
「終わったら私にも貸してねー!」
「はいよー」
打ち込みが終わった後スマートホンは素早く雫ちゃんの手に渡った。雫ちゃんも何かを素早く打ち込んでスマートホンを返してくれた。
「はい、柚木ちゃんありがとう!柚木ちゃんのアドレスゲットー!」
な、なんだとー!
「俺いっちばーん!」
「え、あの…」
私だけついていけていない。
「柚木ちゃん自分には関係ないみたいな顔してるから勝手に交換させてもらったんよ。ごめんな?」
あ、さっきの交換のは私も入っていたのか!
「なんかあったら連絡してや?」
「う、うん、わかった…」
「じゃあ、帰ろ帰ろー!」
すごい勢いで終わった。
ていうか高校に入学して初めての友達?とアドレス交換の相手がヒロインと攻略キャラとかもう本格的に巻き込まれてますね。オワタ。