運がいい?
この作品は、お題を元に書きました。
晴天続きの夏の昼下がり。
涼太は休憩室に入った。
自販機の前で女子社員が何を飲もうか決めかねているようだ。後ろ姿だけでは判別出来ないが、営業部の娘ではなさそうだ。
早くして欲しいなあ。喉が渇いているんだから。何だっていいじゃないか。もう一分以上になるぜ。催促するしかないか。
涼太は声をかけた。
「どうしたの?」
「あっ! 当たっちゃったんです。もう一本」
振り向きざま可愛らしい声で彼女は告げた。ピンクの口紅が似合っている。目元もぱっちり。若々しい肌艶。我が社に、こんな娘が居たっけ?
「ほほおっ、すごいね。運がいいね」
「あの……もし、良ければ……」
彼女は横に退いて涼太に好きな物を選ぶように促した。
「えっ、僕に? いいの? ラッキー! ありがとう」
涼太が、リンゴジュースを取り出し、口をつけた時だった。
「あたし、隣りの会社の者です。時々、ここを使わせていただいてます。倉本綾と言います」
「そう。どおりで、わかんなかった。総務部の新人かなって」
「あたし、運がいいんです。この前も当たっちゃって。それで、石川さんって人に権利を譲ったら、夜にステーキをご馳走してくれました。あたし、ステーキが大好きなんです」
「うぷっ、げほっ」
涼太が咽せた。
「わ、わかったよ。つまり、それは僕にステーキを奢れってことなんだね?」
―了―
お題
晴天
ジュース
昼下がり