(6)
「ボクの名前は人間さんには発音しにくいので、アオくんと呼んで欲しいのだ」
翌朝、クロちゃんを探しに出発しようとしていると……ラビット・パンダの爺さんと……ピンク色の竜人がやって来た。
「こちらは、お嬢様の幼なじみで許婚の方です」
「えっ?」
人間組ほぼ全員がポカ〜ン……。
「え……えっと……アオくん? あのさ、あんた、青くねえじゃん……」
俺は、当然の疑問を口にする。
「人間さんと竜人は目の仕組みが色々と違うので、人間さんが使う色に関する単語は、竜人の言葉に正確に翻訳出来無いし、逆もまた然りなのだ。でも、ボクの家系は、体の色が季節によって変る性質が有るのだ」
「あ〜、あんたの言ってる事は小難しくて、よく判んね〜んだけど……えっと、いつ青くなるんだ?」
「人間さんが『青』と呼んでる色にはならないのだ」
「へっ?」
「冬には人間さんの目には白く見えるようになって、秋と春は人間さんがピンクと呼ぶ色になって、夏は人間さんが赤と呼ぶ色になるのだ」
「あ……あ……えっと……」
俺はしばらく考え込む。
何か、こいつ、変な事を言ってる。
でも、俺の悪い頭じゃ……よ〜く考えねえと……。
「おい、待て、やっぱり、体が青くならねえのに、何で、呼び名が……」
「ちょっと、待って、そもそも、許婚ってどういう事?」
やっと言いたい事が俺の頭ん中でまとまった……と思ったのに、アイーシャが割り込む。
「おい、話してんのは、俺……」
「それより大事な話。そもそも、何で、クロちゃんを探さないといけないかとか、何で、クロちゃんが、このお爺さんを見て逃げ出したかとか……」
「おね〜ちゃんは……結婚式の直前に逃げ出してしまったのだ。『ウチには、あんたみたいな素敵な女の子を幸せにする自信なんて無かッ‼』って言い残して、泣きながら遠くへ飛んでいったのだ。ボクは悲しいのだ」
「まぁ、責任感の強い方でしたからね……」
「結構、ありがちな事かもね……」
聖女騎士サマとアイーシャが、そうコメント。
でも、何か引っ掛かる。
「じゃあ、お爺さんは、あたしと一緒の馬に乗るとして……」
サファルがそう言い出した。
「ま、あんたが、一番、体重も装備も軽いんで、妥当な判断だね」
おい、アイーシャ、お前、あくまで副・リーダーなのに、何、俺抜きで、勝手に話を進めてやがるッ?
でも、やっぱり、何か引っ掛かるが……何が引っ掛ってんのか、俺自身にも……えっと……。
「ボクは歩いて行っても大丈夫なのだ。竜人は、お馬さんと同じ位のスピードで歩いたり走ったり出来るのだ」
結局、アオくんとやらを除いて、全員、馬に乗り、パッカパッカと、ドラゴンが住んでる……そして、クロちゃんが居る可能性が高い山に向かって……やがて、町を囲む城壁の門を出て……そして……。
「おいッ‼」
「どうしたんだよ、兄貴?」
サファルが「何の騷ぎだ?」って感じの口調で、そう言った。
「クロちゃんって女の子だよな?」
「そ〜だよ。何を今更?」
「その許婚も……えっと……女の子?」
「めずらしくも無い」
「リーダーさぁ、前から訊こうと思ってだけど……どんな因習村の出身なの?」
アイーシャまで、呆れた感じで、そう言いやがった。
え?
え……えっと?
何?
女と女が結婚するのを変に思う俺の方が変なの?
あ……あれ?
何が、どうなって……えっと……その……?
「それに、ボクたち竜人は女の子同士でも子供を作れるのだ」
はっ?
えっと……それなら問題な……いや、待て?
何かがおかしい。
でも……ああ……喉元まで出かかってるのに……自分で何を言いたいかが判んねぇ〜……。




