(2)
「アニキさぁ……何で、あたしがこんな事やんなきゃいけないのッ⁉」
死体袋に詰めた自治会長と市会議員を物置に運んでいると、忍者のサファルが、そうブ〜たれやがった。
「仕方ねえだろ。ウチのパーティーで一番の力持ちが居なくなったんだから……」
「はぁッ? アニキさぁ、普段、何て言ってたっけ?『女は腕っぷしでは男に勝てねえんだから、男に文句を言うんじゃねえ。嫁のもらい手がなくなるぞ』……で、何で、アニキの言う通りなら男より力が弱いあたしが力仕事しなきゃいけないの?」
「うるせぇッ‼ これだから、女は感情的なんだよッ‼」
「はぁ? あたし、今、理屈でアニキを問い詰めてんだけど……」
「うるせぇッ‼ これだから、女は理屈ばっかりなんだよッ‼」
「さっきと言ってる事、逆。アニキさぁ、30前で、もう老人ボケかよ?」
「だ……黙れ……」
「どうしたんですか?」
その時……おっとり系の若い女の声。
そして……「背筋が凍り付く」なんて言い方が有るが、その時、俺が感じたのは、背筋だけじゃなくて全身が凍り付いたかのような……。
深呼吸。
深呼吸。
深呼吸するんだ。
落ち着け……落ち着け……落ち着け……。
声の主は……?
ゆっくりと声のした方に顔を向ける。
やっぱりだ……。
浅黒い……光の加減で金属光沢めいた艶が有るように見える事も有る肌。
何とも表現しにくい……あえて言えば「虹色」としか呼べない色合いの瞳。
これまた黒い金属を糸にしたかのような独特の光沢の髪。
簡素に見えるが見る奴が見れば、すげ〜職人が作ったモノだと判る鎧。
腰に差した剣も、これまた簡素な拵えだが、中の刀身は、鉄の塊をも易々と貫く、とんでもねぇ名剣だ。
聖女騎士カマル……。
この都市の冒険者ギルドのメンバーの中でも、2位以下に大差を付けた圧倒的トップの実力者にして、クロちゃんをも凌ぐトラブルメイカーだ。
普通は神聖魔法も剣その他の武芸・武術も修行って奴が必要だ。
だが、この女は違う。
まだ、こいつが子供の頃、ある日、突然、神聖魔法と武術の達人になったらしい。
天使とかその手の存在の血を引いてて、それが隔世遺伝だか何だかで発現したとも、どこぞの神様……それもかなりの「上位神格」ってヤツの「地上における化身」「代理戦士」に選ばれたとも噂されてる。
「あ……ちょっと、仕事で危険い死体をこさえちまって……。早い話が『呪われた死体』ってヤツだ。今、危険呪物保管庫に持っててるとこ」
俺が、そう言い訳した瞬間、サファルが「この馬鹿野郎」と言いたげな表情に変る。
「じゃあ、私が解呪しましょうか?」
あ……。しまった……。この女なら、大概の呪いは解呪出来てしまう。
「え……えっと、もう解呪専門の魔法使いに解呪を依頼しちまった。そいつの仕事を奪うのも悪いんで……あははは……」
「ああ、そうですか……。じゃあ、運ぶのを手伝いましょうか? 持って行く先は危険呪物保管庫ですね」
あははは……。
マズい。
マズい。
完全にマズい……。
気絶してるだけの一般人を危険呪物保管庫に置いとくなんて……こいつらが意識を取り戻せたとしても、何が起きるか知れたモノじゃねえぞ……。




