(10)
「ともかく、マジで、ど〜したものかね、これ……」
アイーシャが疲れたように、そう言った。
「たしか『洗脳の角笛』を強い霊力で破壊すれば、効果は消える筈です。そして、私なら、それが出来るでしょう。でも、問題は、その後です」
カマルの姐さんの顔にも絶望の表情。
その時……。
1つ1つは……小さい。普通の足音だ。
だが、その足音が……かなりの数……。
「あああ……そ……そ……そんな……」
「う……うそだ……」
「な……なぜ……」
洗脳された冒険者ギルドのメンバーを先頭に、町の住人達が何人も……。
手に持っているモノは……。
首。
首。
首。
ともかく、いくつもの……生首……それも子供の……。
あるモノは人間の子供の首。また、あるモノはゴブリンの子供の首。
よく見ると、人間でも、ゴブリンでも、半分以上は、一発で首を斬り落したんじゃなくて、何発も何発も何発も刃物を叩き付けて、ようやく斬首に成功したらしい……ズタボロの斬り口に、苦悶の表情が浮んだ顔……。
「偉大なる指導者様。御命令通り、人間に化けて、この町に潜伏していたゴブリンどもを退治いたしました」
シ〜ン……。
とりあえず、人間・竜人・ゴブリンを問わず、ここに居る洗脳されてない奴ら、ほぼ全員が……固まっている。
「お……おい……誰だ……そんな命令を出した奴は……?」
「す……すまん、成行きで……その……」
この町の人間を洗脳した筈のゴブリンどもの声は……洗脳された人間の声にそっくりな……感情が少しも感じられないモノだった。
「何でだ……何で……こうなった……? 我等の子供達の為にやった事なのに……その結果が……これか?」
ゴブリンも……人間も……竜人も……ともかく洗脳されてない奴らは1人残らず……余りの事態に崩れ落ち、地面に膝を付いた。
「角笛を……」
カマルの姐さんは、何かを決意したかのような感じで、そう言った。
「えっ?」
市会議員に化けてたゴブリンが、きょとんとした表情になる。
「その角笛を破壊して、町の人達を正気に戻します」
そう言われたゴブリンは……聖女騎士を、まるで化物でも見るかのような目で……。
「それで……解決になるのか? たしかに、一番悪いのは我等だ。だが、こいつらも……洗脳されていたとは言え、我等の子供と誤認して、罪も無い同族の子供を殺したのだぞ。正気に戻って、その罪に耐えられるか? 洗脳されたままにしておいた方が情けでは無いのか?」
「それは、偽りの救いに過ぎません。貴方達は、もう十分に自分達の罪の報いを受けました。『応報』を司る神の、この世界における代理人として、ここに裁きを下します。貴方達には自ら死を選ぶ事を許しません。貴方達が、絶望の余り、死を選ぼうとしても、決して、それに成功する事は有りません。運命と我が神が貴方達に死を許すまで、貴方達は自分達の誤ちを悔い続けなさい」
「そ……そんな……何が『聖女騎士』だ? 何が神の代理人だ? 何故、我等に、そんな過酷な呪いをかける? 何故、人間どもまで苦しめようとする? 何故だ?」
「私は、ある理由で、神の操り人形となる事を選んだ者。これは……私の意志ではなく、我が神の意志です。早く去りなさい。この町の人達が正気に戻れば……貴方達も無事では済みません。後悔と共に生き続ける事が、我が神が貴方達に下した罰です」




