(6)
ノソリ……。
その時、ジブリルが意識を取り戻したらしく……。
「偉大なる指導者様……何なりと御命令を……」
おいっ‼
「な……何が、どうなってんだよッ⁉ 神聖魔法が使える奴は、心を操る系の魔法は効かねえ、って言ったのは……お前だろうがッ? 何で、こうなってるッ?」
芝居じゃねえ。
心を操られてる他の奴みたいな……活きの悪そうな魚みて〜な目になってる。
「普通はな……」
自治会長に化けたゴブリンが、そう言った。
「普通は……って?」
「心に迷いが有れば、神聖魔法の使い手でも、普通に洗脳系の魔法は効く……」
「心に迷い? どゆこと?」
「知らん。だが、こいつは、自分のやっていた事が正しい事だと、自分で信じきれていなかった……まぁ、そんな所だろう」
「えっ……?」
え……何?
わかんない、わかんない、わかんない……。
「じゃ、俺に効かなかったのは……」
自治会長と市会議員に化けたゴブリンは顔を見合せ……。
「我々は……お前からすれば悪かも知れんが……それでも人の心ぐらい有る……。今から、余りに残酷な真実を……」
「嘘吐けッ‼ 何が人の心だッ‼ お前ら、人間に化けたゴブリンだろッ‼」
ピキ〜ン……。
空気が凍り付いたような音が聞こえたような気が……。
「ゴブリン……?」
「ゴブリン……?」
「人間に化けたゴブリン……?」
「異種族は皆殺し……」
さっきまで固まってた他の冒険者どもが……「ゴブリン」という言葉を聞いた途端に……。
「そうだッ‼ この町に、人間に化けたゴブリンが潜んでいるッ‼ 怪しい奴を片っ端から探し出して連れて来いッ‼」
「はい……ㇽ……」
「はい……ㇽ……」
「はい……ㇽ……」
市会議員に化けたゴブリンが、そう叫ぶと……洗脳された冒険者達は……まるでゾンビか何かのように、ノロノロと……。
おい、縛られてるジブリルまで、芋虫みて〜にノソノソと這いながら……えっと……。
「お前のような阿呆が、何故、我々の秘密を知っている?」
「おい、面倒だから、殺すか? 阿呆ほど何をやらかすか知れたモノでは無いぞ」
「はぁ? この俺がゴブリン如き……」
ごぉ……。
その時、市会議員の姿がどんどん変ってゆき……。
「ゴブリン如き……何だと?」
おいっ?
ゴブリンって……こういう能力も有ったのッ?
そんな……馬鹿な……。
いや、待て……そう言や、アイーシャも言ってた……。
ゴブリンどもが……元々住んでた世界は……カイジュー大戦争が日常茶飯事な世界だって……。
巨大化したゴブリンが……子供がカブトムシでも捕まえたような感じで、俺の体を、ひょいっとつまみ上げて……。
あああ……助けて……この高さから落とされたら……死ぬ死ぬ死ぬ……。
「あああ……待って、待って、待って……あんたらが人間だろうが、ゴブリンだろうが、それ以外だろうが、あんた達に忠誠を誓う‼ 靴でも尻の穴でも@#$でも何でも舐めるッ‼」
「信用出来るものか……」
「あ……あの……重大な情報を……」
「聞いてはやるが……つまらん話だったら……」
「たった3人で、この町ごと敵に回しても勝てそうな化物が居る。今は、町の外に居る筈だけど、いつ戻って来るか……」
「聖女騎士と、我々を捕縛した竜人か? あと1人は?」
「えっと……竜人が、もう1人増えた」
「何だと? 本当か?」
「ホント、ホント、ホント、クロちゃんの許婚ってのがやって来た。それも、クロちゃんと同じ位強い」
「その『クロちゃん』と云うのが……我々を捕えた竜人か?」
「そう、そう、そう」
「確かに厄介だが……お前に、その3人を倒す策が有るとでも……」
「倒せねえけど、騙して遠くに行ってもらう方法は有るッ」
「何だ?」
「そこで、倒れてる獣人の爺さんが鍵だ」
「詳しく言え」
「その爺さんを洗脳出来るよな?」
……。
…………。
……………………。
何だ、この沈黙……。
そして……何だ、この巨大化ゴブリンの……ビミョ〜な表情……。
呆れたような……阿呆を見るような……えっと……巨大化したゴブリンの「呆れたような表情」ってのが、どんなモノか説明しにくいが……ともかく、呆れたような表情、阿呆を見るような表情だ。
「何で、貴様は……我々の正体を知っていながら……ここの危険呪物保管庫に有った『洗脳の角笛』が人間にしか効かん事を知らんのだ?」
へっ?




