(5)
冒険者ギルドに、ようやく辿り着き……そして、入口の門を通り抜けてみれば……あ……。
「あ〜、リーダー、助けてッ‼」
「うるせえッ‼」
玄関先に居たのは20人近いの同業者と……そして……。
同業者どもは……どいつも、こいつも……町の連中と同じ……死んだ魚のような目……。
「あ……あの、く……来るな……来ないで……え……えっと……」
ぐいっ……。
「ひ……ひぎぃ……」
剛力と……そして体重では、この町の冒険者の中でも一番のサダユキが、ふん縛られて俯せに地面に倒れてるジブリルの後頭部を踏み付け……。
ざまあみろ……と言いたい所だが、多分、もう少し後に、俺も同じ目に遭う。
忍者のザンドルが、気絶したまま放り出されたらしいラビット・パンダの爺さんを不思議そうに見付め……そして、首を傾げて短剣を抜き。
「待て、そいつは、殺しちゃ駄目だ」
ぽけ〜……。
どいつも、こいつも……。
「なぜ……駄目なんだ……?」
「異種族は殺せ……それが……偉大なる指導者様の御命令だ」
「不浄なる異種族を殺し尽し……再び、この町を偉大にするのだ……」
な……何だよ、これ?
田舎芝居の悪役でも言わねえよ〜なベタ台詞を……大真面目に……いや、この表情、大真面目って呼んでいいのか?
いや、ともかく、マズいマズいマズい。
「おい、ジブリルっ‼」
「は……はい……」
え……えっと……何言いたかったんだっけ……?
余りの事態に……。
「あ……あの……偉大なる指導者様とお話しさせて下さい」
ジブリルは、他の冒険者達に、そう言った。
「な……何故……?」
「このままでは、最も強力な異種族を殺し尽す事が出来ません」
「何故?」
「町中の兵隊を総動員しても勝ち目が無い敵が居ます……3人……」
「……」
「あの……」
「……」
「あの……えっと……」
「お……おい……どうなってる、これ?」
「た……多分……ですけど……」
他の冒険者達は……直立不動の姿勢のまま……ぽけ〜……。
きめえよ……恐いよ……何だよ、これ……。
生きてる人間なのに……バカ表情のまま……ぴくりとも動かずに、つっ立ってる。
「な……なんだよ……これ」
「え……えっと……普通は精神操作系の魔法で心を操られると……馬鹿になるんです」
「はっ?」
「それで……僕が……さっき言った事のせいで……こいつらが……何も判断出来なくなったみたいで……その……」
「な……何も判断出来なく……えっと……その……」
何か、おかしい。
何かが、妙だ。
何か……ジブリルが今まで言ってきた事に……穴が……。
「あ……あの……リーダー……」
「ちょっと待て、今、考え中だ」
「ですから、リーダー……」
「もう少し、考えさせろ」
「あのですね、リーダー……」
「たのむ。俺、馬鹿だから……何か引っ掛かってんだけど……自分でも何に引っ掛かってんだか……良く判ん……」
えっと……。
何かが、おかし……何がだ……え〜っと……あ〜ッ‼
「おい、ジブリルっ‼」
「は……はい?」
「お前、『白人どもが皆殺しになっても、町中の人間が洗脳されても、平和な日常さえ戻れば良い』とか言ってたよなッ?」
「そ……それが……何か……?」
「町中の人間が全員阿呆になったら……何が起きるか判んね〜だろうがッ‼」
「大丈夫です。洗脳されない人間も居ます。その人達が馬鹿ばっかになった他の人間を導けばいいんです」
「い……居るの……そんな奴?」
「ええ……例えば……神聖魔法の使い手は洗脳系の魔法に耐性が有ります」
……。
…………。
……………………。
何だ?
何か、さらに引っ掛かるモノが増え……増え……神聖魔法って……おい、待て、まさか……。
「て……手前……まさか……」
ぱぷ〜♪
その時、世にも間抜けな角笛の音が響き……そして……。
「ふ……ふにゃ?」
ぐるん……。
ジブリルは白目をむいて……そして……俺は……少し、フラっとしただ……ん?
その時、俺の目に映ったのは……ギルドの玄関口から出て来た……市会議員と自治会長……。
正確には……その2人に化けたゴブリンだが……市会議員の片手には、角笛が握られ……。
「ど……どうなっとる?」
「さ……さぁ……」
「何で、この男は、この角笛で操れんのだ?」
「何者だ貴様ッ‼ 貴様、本当に……」
ん?
何か……体中に……何とも言えねえ……変な感じが……。
「本当にどうなっているのだ? 何故、貴様は完全に単なる人間なのに、この洗脳の角笛の音が効かんのだ?」
「待て、もっと詳しく調べて……」
ぶんっ……。
いきなり、自治会長に化けてたゴブリンの片腕が伸び……そして、その先端に有る指が……俺の頭を掴み……。
ふみょ?
あれ?
何だ……この光景、俺のガキの頃の……えっと……やめろ……やめて……次々とガキの頃から……デカくなって……やがて、冒険者になり……うわああ……あわわわ……何だよ、これ? 自分で言うのも何だけど……俺の人生、ロクな思い出が……。
そして……。
自治会長は怯えたような表情……。
「そ……そんな……馬鹿な……何故……こんな人間が居るのだ?」
い……いや……な……何が、どうなってんだよ、一体全体?




