(4)
「ふ……ふざけんじゃ……」
アイーシャが、そう言った瞬間……。
「な……何だ?」
俺とジブリルの体が妙な光に包まれ……え? これ、防御魔法?
「リーダー、そのお爺さんを冒険者ギルドまで運んで下さい」
「え? あ、判った」
「待てッ‼」
続いて……おい、俺達、味方だろ、何しやがるッ⁉
アイーシャの手から、何かの光が、俺に向けて放たれる。
攻撃魔法か、麻痺とか、その類かは判んないけど……ともかく、ジブリルがかけたらしい防御魔法が、その光を弾く。
ドン……。
続いて誰かが倒れる音。
どうやら、サファルがジブリルがかけた(多分)魔法で気を失なった……失なっただけだよな? 死んでないよな?
「この糞野郎どもッ‼ 待ちやがれッ‼」
アイーシャの声は、親兄弟でも殺されたような怒りMAXな代物だった。
「待つ訳には……」
続いてジブリルが放ったのは、小さな魔力弾を何発も放つ魔法。
いや……でも……大したダメージは……。
「うわあああッ‼」
狙ったのはアイーシャの足下。
俺やジブリルを追っていたアイーシャは、魔力弾を避けようとしてバランスを崩し……。
「パスして下さいッ‼」
「おうッ‼」
多分、軽装のジブリルの方が速く、そして長く走れる。
そう思って、俺は、絶賛気絶中のラビット・パンダの爺さんをジブリルに投げ渡し……。
そして、兎モドキの獣人を抱き抱えて脱兎の如く走るジブリル。
速い。
速い。
速い、すげ〜速い。
多分、筋力増幅か何かの魔法を自分にかけたんだろう。
……って、おいッ‼
あの野郎、自分だけ逃げやがったッ‼
「リぃ〜ダぁ〜……」
立ち上がったアイーシャは……地獄の底から響く怨霊みたいな声を出して……ジリジリと……。
「ま……待て……話せば……話せば判る……」
「なぁ〜にぃ〜をだぁ〜……」
あ……マズい……マズい……完全に……。
「そ……それはだな……」
俺は……後退りするフリをしてアイーシャから距離を取り……。
「この……阿呆男どもが、とうとう一線を超えやがったか……」
「ところで、サファルの頭から血が出てない?」
「えっ?」
アイーシャが俺から視線を逸らした瞬間……。
「おりゃあああッ‼」
俺はアイーシャに体当たり。
「うわああ……」
自分より図体がデカい上に鎧まで来てる男に、いきなり、ふい打ちの体当たりを食らったアイーシャは……。
「え……えっと……い……生きてるよな?」
返事が無い。
「死んでないよね?」
返事が無い。
「死んでたら、死んでるって言って。生きてたら、何も答えないで。判った? じゃ、確認すっけど……お前、今、死んでる?」
答が無い。
俺はちゃんと、死んでたら答えろ、そうじゃなかったら、答えるな、そう言った筈だ。
そして、答は無かった。
つまり、アイーシャは生きてる。
やったぞ。
俺は仲間を殺した糞リーダーなんかじゃない。
俺が体当たりをした時に頭打っちまったようにも見えねえ事もねえが……きっと生きてる筈だ。
「じゃあ、俺、先に冒険者ギルドに行ってるから……その……えっと……気が変ったら、冒険者ギルドまで来てくれる?」
俺は、生きている筈のアイーシャに、ちゃんと、そう言い残して、その場を立ち去った。




