(3)
「とりあえず、ウチらは町の外で待機しとるけん、事態が解決したか、どうしてもウチらの助けが必要になったら、呼んでくれんね」
クロちゃんは、ラビット・パンダの爺さんに、そう言った。
「判りました。これで連絡します」
そう言って、ラビット・パンダの爺さんは、クロちゃんに通信用らしい魔法石を渡した。
クロちゃん達は、とぼとぼと肩を落して……竜人が肩を落すってのも、どんな感じか説明しにくいが、とりあえず、肩を落としてるような感じだ……去って行った。
「こ……こっからが……大変だな……」
「仕方ないよ、このままじゃ……クロちゃんや姐さん達が飛んできた火の粉を払ってる内に、町中が滅んじゃ……」
ドゴオっ‼
ドゴオっ‼
ドゴオっ‼
クロちゃん達が去って行った方向から……轟音、轟音、そして、また轟音。
また、何か、トラブルが起きたようだ。
「あ……あのさ……このままの状態で何か問題って有りますかね?」
ジブリルが、突然、妙な事を言い出した。
「いや……問題は……有る……だ……ろ?」
「リーダー、その問題って何ですか?」
……。
…………。
……………………。
「え……えっと……そりゃ……何か……有るだろ……」
「でも、殺されるのは、僕らじゃ有りませんよ」
「おい、お前、神サマに仕える僧侶が何を言ってる?」
「ですから、白人達が、本当は、人間の一種だとしても……世の中は人間とは見做してない訳で……」
「ちょ……ちょっと、お待ち下さい」
ラビット・パンダの爺さんも、ツッコミを入れ始めた。
「いずれ、白人の難民達が、全員、殺された後は……町は元通りになりますよ」
「いや、でも、町の人達は洗脳されたままだよ」
アイーシャもツッコミを入れる。
「平和な日常が戻るなら、町の人達が洗脳されていようと、正気だろうと、何の違いが有ります?」
「でも、町の上層部が人間に化けたゴブリンに置き換わってる可能性も有る訳でさ……」
今度は、サファルが、そう言った。
「ええ、ですから、平和な日常さえ戻れば、町の上層部が人間だろうと人間に化けたゴブリンだろうと、何の違いが有ります?」
「あ……あんた……ねえ……」
呆れたようなアイーシャの声。
「でも、選択肢は3つですよ。僕らだけで事態を解決しようとして返り討ちに遭う。何もせずに放っておいて白人の難民だけが死ぬ。クロちゃんや姐さんが事態を解決するけど、代りに町が壊滅する。この中で、僕らも死なずに済む上に、犠牲も少ないのは、どれですか?」
「あんた、そういうとこだよ。僧侶としての能力がイマイチなのは……」
どうやら……神聖魔法ってヤツは、聖女騎士の姐さんみたいな例外を除いては、一般に思われてるよりも、信仰よりもスキルやテクニックの方が重要らしいんだけど……とは言え、秘術魔法に比べて、本人の「心掛け」ってヤツの影響がずっとデカい……そうだ。
「あ……あのさ……リーダー権限で、決めていいか?」
「やめて……」
「いや、一番楽そうで、ウチのパーティーのメンバーが誰も死なずに済む方法を……その……えっと……」
「だから、やめて……」
「でも、代案は有りますか? 町の人達も、僕達も死なずに済む代案が……」
「あ……あんたら……」
「と言う訳で、お爺さん、クロちゃんと許婚さんと聖女騎士の姐さんの3人を騙して、クロちゃんの故郷に連れて行って下さい」
「い……いや……待って下さい。私としましては、肌が白かろうが、それ以外の色だろうが、人間は人間……」
「だから、この町では、白人は人間と見做されてないんですよ」
「ですが……」
「お前のアイデア上手く行くと思うけどさぁ……この爺さんを何とかしねえと……」
「何とかする方法が有るじゃないですか?」
「えっ? 有るの?」
「ええ……だって、町中の人達を洗脳する手段が有ったんでしょ?……このお爺さん1人ぐらいなら……」
「……ん? あ、そっか、その手が……」
「ちょ……ちょっと……何を……ふみゅっ?」
ジブリルは、ラビット・パンダの爺さんに気絶の魔法をかけた。
「じゃあ、町の上層部に接触して、このお爺さんを洗脳してもらいますか」
「あ……あんたら、ゴブリンどもに、この町を売り渡す気なの?」
「だから、さっきから言ってるじゃないですか……『平和な日常さえ戻れば、町の上層部が人間だろうと人間に化けたゴブリンだろうと、何の違いが有ります?』って……」




