(2)
冒険者ギルドに行く途中に有った広場では……うわああ……。
オークの難民どもが、自分達が信仰してるモノにそっくりな磔用具で……おいおいおい……待てよ……。
「○×△□〜ッ‼」
オーク語の叫び声だが意味は、何となく判る。
どうやら、親の目の前で子供を殺そうとしているらしい。
磔にされようとしてるのは……オークの子供。
その前で、体を押さえ付けられたオスとメスのオークが泣き喚いている。
「待ちなさいッ‼」
その時、聖女騎士サマが大声を張り上げ……やめて……おねがい、関わり合いになるの、絶対にマズいって。
「なんだ?」
どうやら、この胸糞悪くなる処刑を取り仕切っているらしい町の警固隊の隊長格っぽい野郎の声は……。
何の感情もこもってない。
ヘタな役者のベタ台詞みて〜な感じだ。
「これは、正当な裁きの上で行なわれているのですか?」
「さ……ば……き……?」
「正当な理由なく、人を……それも子供を殺していい筈が、ありませんッ‼」
「だ……ま……れ……。こ……い……つ……らも……オークの……なかまだ……」
「ころせ……」
「ころせ……」
「ころして……しまえ……」
何だ……こりゃ?
殺せ殺せの大合唱なのに……狂ってる……いや、普通の人間が「狂ってる」という言葉から想像するのとは、正反対の狂い方だ。
狂気さえ感じられない棒読み台詞だが、言ってるのは「殺せ」……。
「い……くぞ……」
町の警固隊の連中が剣を抜き……構え……。
「ぎゃああああッ‼」
「あ……あれっ?」
警固隊の1人の剣が……何かの間違いで……近くに居たヤツにグサっと刺さり……。
「お……お前……何やって……って、俺、何やってんだ? これ何? 何? 何? 何やってんだ、みんな?」
痛みで正気に戻ったらしいが……。
「うら……ぎり……もの……だ……こ……ろ……せ……」
隊長格の一言で、警固隊は正気に戻った仲間に剣を……剣を……おいっ‼
「うぎゃ〜っ‼」
「あ……あれっ?」
何故か、手がすべったり、足がすべったりで、狙ったのとは別のヤツに剣がグサリが頻発。
仲間に傷付けられた奴は、痛みで正気に戻り、正気に戻ったヤツを他のヤツが裏切り者認定し……。
どんどん、血みどろの混乱が広がっていき……。
「駄目なのだッ‼ 人間さんが、同じ人間さんを殺すなんて……」
クロちゃんの許婚が大声をあげた。
「ぜったいにッ‼ 駄目なのだッ‼」
轟っ……。
どうやら……クロちゃんの許婚が……「気」ってヤツを放ったらしいけど……。
どん……。
どん……。
どたん……。
ばたん……。
広場に居たヤツらは……警固隊も……一般人も……次々と目と……鼻と……口から血を撒き散らしながら……いや……ズボンなんかが赤く染まってるのも居るんで……ひょっとしたら、チ○コ・マ○コ・尻の穴からも……。
「ああああ……アオくん……人間さんは、体が弱かけん、ウチらにとっては気絶するぐらいで済む攻撃でん……」
「あわわわ……しまったなのだ」
本人(本竜か?)は軽い攻撃のつもりだったのに……起きたのは大虐殺。
「こ……こ……こ……こ……この……し……死神……どもが……お前ら……何のつもり……」
警固隊の数少ない生き残りも正気に戻ったようだが……完全に混乱状態で……クロちゃんに斬りかかり……。
「何すっとね? 危なかやろッ‼」
クロちゃんにとっては、攻撃を軽く払ったつもりだったのだろう。
だが……轟音……。
キ〜ン。
何の音も聞こえなくなる程の大轟音。
ふっとんで行った警固隊のヤツが……結構遠くにある建物に激突した音さえ聞こえない……。
そして……警固隊のヤツの体がブツかった建物にヒビが入り……。
がらがらがらがら……。
その建物が半分以上、崩れた辺りで、ようやく、耳が聞こえるようになった……。
「あ……あの……私達、下手したら、町中を敵に回してんだよ……判ってる? 姐さんもクロちゃん達も……」
アイーシャが……疲れ切ったような声で、そう告げた。
「え……えっと……」
「そ……その……」
「ご……ごめんなさいなのだ……」
「このままじゃ……私達は無事だろうけど、それ以外の町の人達が全員死んじゃうよッ‼」




