(14)
とりあえず、俺達は町の近くまで戻……。
戻……もど……おい……。
な……何だ……こりゃ……?
酷い光景だった。
オーク達が何匹も磔にされている……。
オスもメスも……爺婆も……子供も……とんでもない数。
そして、その死体に蠅がたかっている。
オークってのは、元々は、北方に住んでた白い肌に薄い色の髪と目の亜人どもだ。
まぁ、アイーシャの話が本当なら、人間の一種らしいが……。
ともかく、オークどもは、時々、人間の国に攻めて来る事は有ったが、基本的には「敵ながらイカした蛮族」って感じの奴らだったらしい。
ただし、俺の祖父さんか曾祖父さんが若かった頃あたりまでは……。
どうやら、オークには「戦士」と「平民や奴隷」が居て、「イカした蛮族」だったのは戦士の身分の連中だったらしい。
農業とか重労働とかは平民や奴隷のオークがやらされてたそうだ。
そして、いつしか、オークの平民や奴隷の間には、変な宗教が流行り出した。
元々は人間の宗教だったらしい。
それも、ここより西の地方に住んでた少数民族の中から出た新興宗教だそうだ。
だが、オーク達の間に有る「古代に、オーク達は大帝国を築いていて、人間を支配していた」って馬鹿馬鹿しい伝説と、その新興宗教が結び付いた。
その新興宗教の教祖は、古代オーク帝国の兵士の末裔と人間の女の間に生まれた「人間とオークの両方の王」となる運命を持った者だったが、人間達に磔にされて殺された……オークの平民や奴隷は、人間から伝えられた、その新興宗教をそう解釈するようになった。
気付いた時には、オークの平民や奴隷の間で、磔刑の道具を崇める変な邪教が流行っていて……やがて、オークの戦士どもは、同じ種族の邪教徒どもを殺したり追放したりするようになり……。
百年経たない間に、オークの難民達が人間の国々に雪崩れ込んで来た。
しかも、その邪教は非暴力主義ってヤツだったらしい。
オークを「ウキャ〜っ‼」な蛮族だと思ってた人間の国々の騎士達や兵士達は……。
自分のやった余りと言えば余りな行為に嘔吐する羽目になった。
オークとは言え、女子供や年寄まで含んだ無抵抗な連中を気付いた時には惨殺していたんだ。
流石に気まずくなって、オークどもの移民を認める国も出始めたが、でも、人間達との摩擦も起きて……。
「趣味……悪……」
アイーシャが吐きそうな声で、そう言った。
そう……オークどもは……自分達が崇めてる磔刑の道具に磔にされていたのだ……。
「な……何が……起きたとね……ほんの2〜3日の間に?」
クロちゃんの声も……呆然としたモノだった。
たしかに、前々から、この町で、オーク排斥派は力を持っていた。
けど……俺達が町から離れていた、ほんの2日ばかりの間に……何か、とんでもねえ事が起きてるらしいんだが……。




