(10)
翌朝、山の動物どもに案内され……相変わらず、俺はフン縛られたままで……クロちゃんの居場所に……って……。
「ぎゃお〜♪」
「ぎゃお〜♪」
「ぎゃお〜♪」
「ぎゃお〜♪」
山の頂上の辺りから、4匹のドラゴンが、空に飛び立つ。どうやら、何かを追い掛けて……って、まさか……。
「やっぱり、あいつらが追ってるのって……」
「気付かれたらしいのだ」
次の瞬間、クロちゃんの許婚の背中に「気」の翼が出現。
びゅんッ‼
クロちゃんの許婚は、空に飛び立ち……。
4匹のドラゴンが追い掛けていた何かは……突如、速度を増したようで、空中に衝撃波か何かの痕が出来……しかし、更に、それを追い掛けるもう1つの衝撃波の痕。
そして、空中を高速で飛ぶ2つの……えっと……。
「ぎゃおっ?」
「ぎゃおっ?」
ドラゴン達も、慌てて回避。
どうやら、子供とは言えドラゴンでも、激突するとただじゃ済まないよ〜な超高速らしい。
「えっ?」
片方が空中に「気」だか何だかで出来た網のようなモノを張り……もう片方が、それを突き破り……。
続いて、片方から、これまた「気」だか何だかの弾が無数に放出され……更に、狙われた方も、全身から「気」を放って、それを弾き飛ばす。
更に、両者の間を、まっすぐなヤツに、どんどん広がってくの、雷みたいな感じのヤツ……竜の息らしい何か……それも、昔話や吟遊詩人の歌に出て来る、ほぼ、ありとあらゆるタイプのヤツが空中を飛び交い……。
「な……何が……起きてんの……?」
「多分、空を飛べても、近付かない方がいいような事……」
俺の質問にアイーシャが、そう答える。
「仕方ありませんね……」
聖女騎士サマが、そう言うと……。
「えっ?」
おい……そ……そんな真似まで出来るのか?
聖女騎士サマの背中にも霊力の翼が出現する。
そして、聖女騎士サマも空中へと飛び上がり……。
「あ……あのさ……僧侶系の魔法って、あ……あんな真似も出来んの?」
俺は、ジブリルに訊いた。
「む……無理です。いや、ボクより遥かに才能が有る人が……30年ぐらい頑張って修行すれば……」
聖女騎士サマのモノらしい、3つ目の衝撃波の痕は……4匹のドラゴン達に一旦近付き……ドラゴン達は、慌てたように(遠目なんで良く判んねえけど、多分)、山の頂上あたりに退避。
「え……? お嬢様?」
ラビット・パンダの爺さんも、驚いたような声。
戦い(なのか、これ?)は、あっさりと終った。
聖女騎士サマ……だと思う何か……から霊力の縄みたいなモノが2つ出て、残りの2つを、あっさりと拘束。
そして……そのまま、山の山頂の方へと落下していき……。
「マズい……」
アイーシャが……呆然とした声で、そう言った。
「だ……大丈夫です。お嬢様達のお身体は頑丈なので、あの高さから落下した程度では……」
「ちがう……」
え?……どういう事?
何が……どうなってるか、良く判んないんだけど……。
「活躍したのって……聖女騎士様だけだよね?」
「そ……そうだけど……それが……?」
ん?
「クロちゃんが、ここに居るって情報を教えてくれたのも……ここまで、案内したのも、聖女騎士様だよね?」
え?
何?
どういう事?
俺とラビット・パンダの爺さん以外の顔が……どんどん青冷めていき……。
「あ……あの……それが……何の問題が……」
「馬鹿かッ? これって……あたしら、何もやってないも同然だろうがッ‼」
今度は、サファルの怒鳴り声。
え……えっと……何が……どうなって……?
「リーダー、あたしらが、ほとんど何もやってないのに……この爺さんからの依頼が解決したんなら……あたしら、どの面下げて、この爺さんから報酬貰えばいいんだよッ⁉」
「あ……そう言えば……この場合、報酬は……えっと……どうなるのでしょうか?」
……。
…………。
…………………………。
あ〜ッ‼




