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追放された元令嬢ですが、このたび、なぜか懺悔室で働くことになりました  作者: 優木凛々
第1章 公爵令嬢ソフィア、シスターになる

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(Another Side)ロイド・ブラッドレイ


本日5話目です。


ソフィアと別れてから、少しあと。


修道院を出たロイドは、王都に帰るために馬を進めていた。

空を見上げると、夕暮れの気配を帯びた空に、白い雲がぽかりと浮かんでいる。


その雲を見て、彼はふっと笑った。

どことなく、ソフィアが作った“猫に見えるアライグマクッキー”に似ている。



(修道院の生活にも、ずいぶん慣れたようだったな)



思い返すのは、これまでの出来事だ。





ロイドが、ソフィアに会ったのは、約2年前だ。


当時、彼は隣国ルミナート公国の皇子の友人兼護衛として、王立学園に留学していた。

到着して間もなく、ルパート王子主催のお茶会に招かれ、そこで初めて彼女に会った。



「はじめまして、ソフィア・ラングレーです」



ルパート王子の婚約者として、彼女は皇子と自分に丁寧に付き添ってくれた。

他の貴族を紹介してくれたり、国の習慣を教えてくれたりと、とても細やかに気を配ってくれる。


その真摯な姿勢に、ロイドは感心した。



(感じの良い女性だな)


ここまで人のために気を配るのは、そう簡単なことではない。


それ以降、学園でも彼女と顔を合わせるようになった。


彼女は、とても努力家なようで、成績も良かった。

生徒会活動やクラス活動など、前向きにがんばっている様子もよく見られた。

どこかおっとりとした雰囲気で、たまに見せる無邪気な笑顔がとても可愛らしい。



(とても魅力的な女性だ)



いつしか、彼は彼女を目で追うようになっていた。

彼女に好意を持ちかけている自分に気が付く。


しかし、彼はその気持ちに蓋をした。

隣国の王子の婚約者を想ったところで、どうにもならないことが分かっていたからだ。


普段は遠くから見守り、たまに開かれるルパート王子のお茶会で、彼女と少し会話できることを楽しみにする。




しかし、学園で過ごすうちに、彼はソフィアがあまり幸せそうでないことに気が付いた。


いつも忙しく、顔色が優れないことも多い。

聞けば、ルパート王子が担うべき生徒会の仕事を、すべて彼女が代わりにこなしているのだという。


しかも、王子の態度が酷いのだ。

ソフィアが尽くすのが当り前だと思っているようで、命令口調は当たり前。

気に入らないことがあれば、人前でも平気で嫌味を言ったり無視したりする。



(……酷いな)



さらに王子は、聖女であるというイザベラに夢中で、ソフィアのことなどまるで気にかけていない。

これでは、あまりにも彼女が不憫だ。


何とかしてやりたいとは思うものの、彼は隣国の皇子の護衛だ。

何かすれば、国に迷惑がかかってしまう。

彼女が疲弊するのを、ただ黙って見守る以外ない日々が続く。




そして迎えた、卒業パーティ当日。


とんでもない出来事が起きた。

ルパート王子が、なんとソフィアを断罪しようとしたのだ。


ありえない。と思った。

あれだけ誠実にルパートを支え続けていたソフィアが、ルパートの立場が危うくなるようなことをするはずがない。


さすがにたまりかねて、

「別室に行って落ち着いて話をしてはどうか」

と勧めたが、激昂したルパートはそれも聞かず、全員の前でソフィアを断罪してしまった。


しかも、ソフィアは実家からも勘当され、王都から追放されてしまった。



(……なんということを)



怒りを覚えながら、彼女の居場所を探すと、王命で辺境の修道院に行ったということが分かった。

しかも、半年に一度、誰かが様子を見に行くよう指示が出ているという。


ロイドは、すぐに手を挙げた。

同時に裏から手を回す。

その甲斐あって、大学の実務事業の一環として認められ、彼は正式にソフィアの様子を見に行けることになった。


ロイドは胸を撫でおろした。

修道院は、通常であれば男性が訪問することはできない。

でも、こうした正式な理由があれば、会いに行ける。


彼は、すぐにオルテシアの街に向かった。


久々に会ったソフィアは、少しやせていたものの元気だった。

聞けば、修道院の生活は思ったよりも悪くないという。


安堵しながら、彼は彼女と会話をした。

少し落ち込んだ様子はあるものの、前向きさも素直さも、人のために頑張れるところも、元の彼女のままだった。


彼女と話しをながら、彼は、抑えていた好きだという気持ちが芽吹いたのを感じた。

迷惑にならぬよう早々に帰路についたが、本音を言えば、もっと長く話していたかった。


本来であれば、次の訪問は半年後。


しかし、ロイドは彼女に会いたくてたまらなくなった。

欲しい物を頼まれたことを理由に、多忙な中、何とか時間を作り、1か月後にまた馬を飛ばしてオルテシアに向かう。


王都からオルテシアまでの道のりは、決して楽ではない。

夜に発ち、昼に着き、1時間だけ会って、すぐにまた戻る――まるで強行軍のようだ。



(まさか自分が女性に会うためにここまでする人間だとは夢にも思わなかった)



そう苦笑するが、それでも会いたいと思ってしまう。

今も、会ったばかりなのに、もう会いたくなっている。


彼女は今ごろ何をしているのだろうかと思いながら、彼は夕暮れの空を見上げた。


今日の彼女は、彼を歓迎してくれているように見えた。

「どうぞお気を付けていらしてください」

と言ってくれたということは、訪問を嫌がってはいないのだろう。


今の彼女は、シスター見習いだ。

様子を見守りながら、できれば、少しずつ距離を詰めていければと思う。



「……今度は、また1か月後だな」



彼はそうつぶやくと、薔薇色の空の下、馬を走らせて旧街道の方へと消えていった。






本日の投稿はここまでです。

お付き合いいただきありがとうございました!(*'▽')


続きは、また明日投稿します。 ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́-

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― 新着の感想 ―
大学ですと実技授業かなと思いましたが、騎士団関係の仕事的な事業なんでしょうかね? 他者の婚約者に懸想しすぎるのはよくありませんが、心に秘めて思うのは人の自由の一つであるべきですね。 美しいもの、素敵…
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