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追放された元令嬢ですが、このたび、なぜか懺悔室で働くことになりました  作者: 優木凛々
第3章 ソフィア、王都に呼ばれる

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05.大聖女選定の儀①


本日1話目です。

 

 大聖女選定の儀の当日。

 まだ外が暗いうちから、ソフィアは目を覚ました。


 枕元の時計を確認して、のろのろと起き上がる。



(いよいよね……)



 ものすごく気が重いが、行くしかない。

 目立たず無難に済ませて、さっさとオルテシアに帰ろう。



 彼女は、建物の1階にある浴室に向かった。

 服を脱いで、お湯が湧き出ている大理石の広い浴場に入ると、体中を念入りに清める。


 そして、食堂でおかゆや果物などの朝食をとると、部屋に戻って儀式用のシスター服に着替えた。

 目元が隠れるベールをしっかりとかぶり、部屋を出る。


 外に出ると、朝靄の中、黒塗りの立派な馬車が待っていた。

 その横に、アウグストと、この教会の司祭が立っている。



「我々は後から行くからね。気楽にがんばるんだよ」

「はい、ありがとうございます」



 気楽にがんばるって不思議ね。とおかしく思いながら、ソフィアは馬車に乗った。

 手を振って2人に別れを告げる。


 馬車は、まだ人が少ない王都の街を走り始めた。

 窓の外を見ると、街がゆっくりと朝日に照らされていくのが見える。



(きれい……こんな時間に王都の街を見たのは初めてだわ)



 しばらくして、馬車が大広場に入ると、すでに人々が集まり始めているのが見えた。

 皆興奮したように何かしゃべったり笑ったりしている。



(ずいぶんと早くから人が集まるのね)



 馬車は大広場を走り抜けると、中央大聖堂の前に到着した。

 若い神官が、馬車の扉を開けて、無表情に礼をする。



「オルテシア修道院のソフィア様ですね。どうぞこちらへ」



 馬車から降りると、ソフィアは中央大聖堂に足を踏み入れた。

 神官の後について長い廊下を歩いていると、前から偉そうな中年の神官がやってきた。

 ソフィアをチラリと見るが、無視してそのまま歩いて行く。



(あまり感じが良くないわね)



 そして、廊下を歩くこと数分、ソフィアは会議室のような場所に通された。



「こちらでお待ちください」



 部屋には大きな円卓があり、すでに3人の女性が座っていた。

 儀式用のシスター服を着ており、物静かで上品な雰囲気だ。


 ソフィアが適当な場所に座ると、お茶が出てくる。


 飲みながら周囲を伺うと、ソフィア以外の聖女たちは顔見知りのようだった。

 静かに会話をしたり、微笑んだりしている。



(なんだか皆さんいい人そうだわ)



 しばらくして、若い神官が入ってきて、説明を始めた。



「皆様には、大広場の壇上にある椅子に座っていただきまして、名前を呼ばれた方から、女神リュシア像に祈りを捧げていただきます」



 神官曰く、特に話す必要はないらしい。



「では、お呼びする順番を発表します。1番目は、ルーア大聖堂のローラ聖女様」

「……はい」



 30代中頃と思われる淑やかそうな聖女が、静かに手を上げて返事をする。



「次は、王都東大聖堂のアンナ聖女様」

「はい」



 細身の大人しそうな聖女が手を上げる。



「そして、3番目は王都中央大聖堂のイザベラ聖女……なのですが、イザベラ聖女は少々遅れるという連絡がありました」



 聖女たちが軽くざわついた。

 こんな日に遅れるなんて何かあったのかしら。と心配そうに囁き合う。


 その後、神官は順番の発表を続け、ソフィアは5番目――最後に呼ばれることになった。



(良かったわ……)



 彼女は密かに胸を撫でおろした。

 最後だと、みんながどうするかじっくり見られる。



(それに、前の4人のうち誰かが大聖女として選定されれば、わたくしは何もしなくて良い可能性だってあるわ)



 肩の荷が下り、少し心が軽くなる。

 これはアウグストが言う通り、気楽にがんばれるかもしれない。


 順番の発表が終わり、神官が懐中時計を取り出して、時間を見た。



「それでは、イザベラ聖女が来るまで少しお待ちください」



 どうやらイザベラがきたら、最終確認を行う予定らしい。


 全員が無言でうなずき、新しくお茶が出てくる。


 ソフィアは、お茶を飲みながら窓の外をながめた。

 大広場は人で埋まりつつあり、たくさんの人が立っているのが見える。



(わたくし、大丈夫かしら……)



 あっという間に終わるわ、と自分に言い聞かせつつも、不安になる。





 ――しかし、ここで予想外の事態が起きた。



(……まだ来ないわね)



 イザベラが一向に現れないのだ。



(どうしたのかしら)



 疑問に思っている間に、外がどんどん騒がしくなってきた。


 見ると、大広場は見たことがないほど多くの人でギッシリ埋め尽くされており、人々から「まだなのか」といった声が上がり始めているのが見て取れる。


 神官が焦ったように、何度も扉を開いて廊下を見た。

 他の聖女たちも、


「一体どうしたのかしら」

「急に体調が悪くなったのかしら」


 など心配そうに囁き合う。


 ソフィアは時計を見上げた。

 開始時間まで、あと10分しかない。



(まさか来ないのかしら……?)



 ――と、そのとき。


 廊下の方で、ガヤガヤと人の声がした。

 足音が近づいてくる。



 バタンッ



 扉が開いて、イザベラが入ってきた。


 やたら光沢のある高級そうなシスター服に、まるで舞台に立つかのような驚くほど濃い化粧。

 髪の毛を綺麗に巻いており、入った瞬間、ぷんと香水の香りが漂ってくる。


 彼女は、品定めするように聖女たち1人1人をながめると、ふんと勝ち誇ったように笑った。



「ごきげんよう、皆さん」



 顎を上げてそう一言言うと、焦った顔の若い神官に促されて、偉そうに席に座る。


 ソフィアは呆気にとられた。

 まさかバッチリメイクで現れるとは思わなかった。



(もしかして、遅刻した理由は、お化粧していたから……?)



 他の聖女たちも同じことを思ったのか、冷めた目でイザベラを見る。


 険悪な雰囲気の中、若い神官がものすごい早口で最終注意事項を話し始めた。

 それが終わると、聖女たちは早足で部屋を出て廊下を移動する。





 ――そして、15分後。


 ソフィアは、舞台の上に並べられた金ぴかの椅子に座っていた。

 目の前には、ものすごい数の人々が、興奮したような顔で立っている。


 ヴァルターが舞台の中央に出て来ると、ふんぞり返った。

 偉そうに大声で宣言する。



「これより、大聖女選定の儀を始める!」



 わあっと群衆が盛り上がった。




(続く)





今日は、大聖女選定の儀①~④を一気に投稿します。


投稿時間は、朝、昼、夕、夜を予定しています。

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― 新着の感想 ―
オルテシア修道院のソフィア様ってそのまんまの名前と所属でバレないの?
大聖女選定の義①~④の一気に投稿ありがとうございます!とても楽しみです!
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