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追放された元令嬢ですが、このたび、なぜか懺悔室で働くことになりました  作者: 優木凛々
第3章 ソフィア、王都に呼ばれる

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03.ロイドと出発準備と


本日1話目です。

 

『大聖女選定の儀』に参加すると決まってから、怒涛のような日々が始まった。


 まず、この翌日。

 ロイドが、2カ月振りに修道院を訪れた。


 ソフィアが急いで門に出て行くと、彼が嬉しそうに微笑んだ。



「お久し振りです、ソフィアさん」



 ようやく旧街道の雪がなくなったので、会いに来てくれたらしい。



「お久し振りです、ロイド様」



 そう言いながら、彼女の胸は高鳴った。

 久し振りに会ったロイドは、とてもかっこいい。



(素敵な人だわ)



 再会を喜ぶ一方で、彼女はやや複雑な気持ちを覚えていた。


 彼には、1か月後に開催される『大聖女選定の儀』に参加することを伝えなければならない。

 果たしてどんな反応をするだろうか。


 アウグストの許しを得ていることから、ソフィアはロイドの馬に乗って街に向かった。


 街に到着して、厩に馬を預けると、街を歩き始める。

 春の街は活気に満ち溢れており、人々が楽しそうに行き交っている。


 ロイドが少し驚いたように言った。



「以前よりもずいぶんと活気がありますね」

「ええ。ここのへんは冬が暖かくて、作物がたくさん採れたらしいわ」



 そんな話をしながら、2人は街の中心から少し離れたところにある小さなカフェに入った。

 お洒落な雰囲気のテラス席に案内してもらう。


 そして、それぞれ飲み物を頼み終えると、ソフィアが改まったように座り直した。声を潜める。



「……先に、話をしておかなければならないことがありますの」

「ええ、何でしょう」



 ソフィアのただならぬ様子に、ロイドが真面目な顔をする。



「来月、王都で『大聖女選定の儀』があるのはご存じかしら?」

「知っています。私も警備に参加することになっています」



 それならば話は早いわね。と、ソフィアが更に声を潜めた。



「実は……わたくしも参加することになったの――聖女として」

「…………」



 ロイドが無言でソフィアを見つめた。

 露骨に驚いた顔はしていないが、本気で驚いていることが見て取れる。


 沈黙の中、ウエイトレスの女性がやってきた。

 テーブルの上に、珈琲と紅茶を置いてくれる。


 ロイドは珈琲を一口飲むと、静かに尋ねた。



「……もしかして、あなたは、聖女だったのですか?」



 ソフィアは首を横に振った。



「いいえ、違うわ。光ったことなんてないもの」

「……では、なぜ」

「何でも、『懺悔室の聖女』という話が広がって、呼ばれることになってしまったみたいなの」



 ソフィアは事情を話し始めた。

 アウグストから聞いた話を、かいつまんでする。


 ロイドが心配そうに目を細めた。



「話は大体理解しましたが……、本当に大丈夫なのですか?」

「確かに、わたくし聖女じゃありませんものね」

「それもありますが……、王都に戻って、あなたは辛くないのですか?」



 どうやらソフィアの気持ちの状態を心配してくれているらしい。



(本当に優しい人だわ)



 心の中で感謝しながら、ソフィアは心配させまいと、気丈に微笑んだ。



「大丈夫ですわ。ベールをかぶって大人しくしているつもりですし、儀式が終わったら、すぐに帰ることになっています」

「…………」

「それに、王都側では誰もわたくしが呼ばれたなんて思っていないそうですわ」



 ロイドが、気づかわし気な顔をする。

 しかし、「あなたが決めたことなら」とつぶやくと、静かにうなずいた。



「わかりました。――でも、何かありましたら、必ず相談してください」

「ありがとうございます」



 ソフィアは彼に感謝の目を向けた。



「では、まずは王都でお菓子屋さんに行きたいですわ」

「お菓子屋さん?」

「ええ。今後のお菓子の研究のために、色々と見て回りたいのです」



 そう明るく言うと、ロイドが微笑んだ。

 もちろんです。と約束してくれる。




 そして、『聖女選定の儀』の話が終わり、ソフィアは思案に暮れた。



(あの件、どうしようかしら……)



 当初の予定では、今日はソフィアから

「見習い期間終了後は、あなたに付いて行かせてください」

 と返事をする予定だった。

 しかし、『聖女選定の儀』の話が重すぎて、どうにもそれを言う雰囲気ではない。



(合意の意思があることは手紙でも伝えているし、実際に言うなら、もうちょっと落ち着いてからの方がいい気がするわ)



 そう思って、



「……例の件ですが、聖女選定の儀が終わって改めて、でもよろしいでしょうか」



 と尋ねると、ロイドが合意するように「もちろんです」とうなずいた。

 どうやら彼も同じように感じたらしい。




 ――そして、ロイドが王都に戻った翌日から、ソフィアは粛々と準備を始めた。


 シスター服を新調し、風が吹いても絶対にずれない頑丈なベールを作る。


 アウグストも色々と動いてくれているようで、王都に行った際に、中央大聖堂ではなく、彼と親交がある教会に泊まることになったと伝えてきた。


 着々と整う荷物や準備の様子をながめながら、ソフィアは思った。



(行きたくないけど、ここまでやれば、何とかなるわね)



 修道院のシスターたちには、アウグストが

「ソフィアさんには、私の手伝いをしてもらうために王都に一緒に来てもらうことにした」

 と伝えた。

 下手に言って騒ぎになるのは避けようという判断だ。


 ソフィアが王都に行くと聞いて、みんな大いに羨ましがった。



「いいなあ。私も王都に行ってみたい」

「私もよ。きっと都会なんでしょうね」



 特に疑う様子もなく、ソフィアがいない間の仕事を喜んで引き受けてくれることになる。

 本当のことを言えないのを心苦しく感じながらも、暖かい気持ちになる。





 ――――そして、約1か月後。


 ソフィアは皆に「がんばってね!」と見送られながら馬車に乗り込むと、修道院を後にした。






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