02.ソフィア、決心する
本日2話目です。
開くと一通の手紙が入っていた。
―――――――
リュシア教最高評議会は、ソフィア修道女見習いを、大聖女候補として『大聖女選定の儀』へ招聘することをここに通達する。
―――――――
(…………は?)
ソフィアは目を瞬かせた。
1回読んで理解できず、2回、3回と読み直す。
そして、顔を上げると、戸惑いの目でアウグストを見た。
「あの……これは一体?」
「書いてある通りだ。王都で開催される『選定の儀』に、大聖女候補として君を呼びたいそうだ」
アウグストが落ち着いた声で答える。
ソフィアは呆気にとられた。
――『大聖女選定の儀』。
それは、聖女の中から、そのトップである“大聖女”を決める、リュシア教の中で最も有名な儀式だ。
その儀式に、なぜ聖女でもない自分が呼ばれるのだろうか。
「……あの、なぜわたくしが? ご存じの通り、わたくしは聖女ではありませんわ」
聖女の特徴は、女神リュシアに祈ったとき、体がほのかに光を放つようになることだ。
ゆえに、聖女であることが発覚する場所は、祈りを捧げる教会であることが多い。
ソフィアは修道女見習いとして、毎日最低でも5回は祈りを捧げているが、今まで一度も光ったことがない。
(つまり、絶対に聖女ではないということだわ)
ソフィアの話に、アウグストがうなずいた。
「さっき君が祈っているところを確認したが、確かに君は全く光っていなかった。私も君は聖女ではないと思う」
「ではなぜ……」
アウグストによると、とある女性大司教が突然
「儀式に参加する大聖女候補として、ソフィア修道女見習いを呼ぶべきです」
と言い出したらしい。
どうやら『懺悔室の聖女』の噂を聞いたことがあるらしい。
ソフィアは思い切り困惑した。
「あの……その方は、わたくしが本当の聖女ではないことをご存じなのでしょうか?」
「ああ、私もそう言った。……だが、それでも出るべきだと言い張ってね」
アウグストが苦笑いする。
ちなみに、その女性大司教は、ソフィアが『聖女を虐げた』という理由で修道院にいることも、調べて知っていたらしい。
「彼女の言葉では“そんなの嘘だと思っているから気にする必要はない”だそうだ」
ただ、もしソフィアが気にしているなら、ベールなどで顔を隠して参加すれば良いと言っているらしい。
ソフィアは混乱する頭を抱えた。
どうしてそこまでして自分を参加させたいのか、まったくわからない。
(それに、『大聖女選定の儀』ということは、間違いなくイザベラさんが出て来るわよね)
彼女には会いたくもないし、関わりたくない。
ソフィアの状況や気持ちだけで決めるのであれば、『断る』の一択だ。
(でも……、わたくしが出なかったら、アウグスト様はきっと困ったことになりますわよね)
教会は、貴族以上に上下関係が厳しい。
最高評議会の決定を断れば、アウグストは罰を受けることになるだろう。
彼には、色々と仕事を押し付けられているが、お世話にもなっている。
両親に見捨てられた自分の後見人になってくれた恩もある。
最初に「断ってもいい」と言われたが、彼が困ったことになる状況は避けたい。
ソフィアはゆっくりと口を開いた。
「……本当に正体を隠して出ることはできるのでしょうか」
アウグストがうなずいた。
「問題ないよ。女性大司教以外は、君が元公爵令嬢のソフィア・ラングレーだとは気が付いていないようだし、ベールで顔を隠すのは、ちゃんとした正装だからね」
「知り合いに会わずに行って帰ってこられますか?」
「ああ、そこも問題ない」
ソフィアは思った。
儀式に参加するのは嫌だが、アウグストが罰を受けるのはもっと嫌だ。
サクッと出てサクッと帰って、穏便に済ませた方がきっといい。
ベールをかぶって大人しくしていれば、きっと何事もなく終わるだろう。
「わかりました。参加しますわ」
「……本当に大丈夫かい? 断っても構わないんだよ?」
アウグストの探るような目を見て、ソフィアがうなずいた。
「はい。大丈夫です」
その後、2人はこれからについて話し合った。
アウグストはできるだけソフィアが目立たない手配をすることを約束し、ソフィアは絶対に顔が分からないベールを作ることにする。
(きっと大丈夫よね)
たとえバレたとしても、すぐにオルテシアに帰ればいいだけだ。
(儀式に出るだけだもの。あまり難しく考えるのはやめましょう)
――このときの彼女は、知らなかった。
1か月後の「大聖女選定の儀」で、予想外の大事件が起きる、などということを。
本日はここまでです。
また明日朝から投稿します ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́-




