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追放された元令嬢ですが、このたび、なぜか懺悔室で働くことになりました  作者: 優木凛々
第2章 修道女ソフィアと収穫祭

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(Another Side)一方、王都では④


本日2話目です。


 

 収穫祭が終わった、約2か月後。

 雪まじりの冷たい風が吹き荒れる、寒さの厳しい、冬の午後。


 王都・中央大聖堂の一角にある、大きな円卓のある会議室にて。

 リュシア教の最高評議会が開かれていた。


 出席者は、前回と同じく、教会幹部15名ほど。

 全員が、冬用の聖職服に身を包んでいる。


 その中の1人、議長役の若い男性司教が口を開いた。



「それでは、最高評議会を始めます。

 最初の議題は、前回からの持ち越しとなっている“大聖女の認定について”です。――ヴァルター枢機卿、お願いいたします」



 名前を呼ばれたヴァルターが、ゆっくりと立ち上がった。

 鷹揚に出席者たちを見渡す。



「まずは、資料の1枚目を見ていただきたい」



 出席者たちが手元の資料をめくると、細かく書き込まれた報告書が挟まれていた。

 タイトルは、


『イザベラ聖女の活動について』



 内容は、イザベラが聖女になってからの活動記録で、王都近郊の街を周って奉仕活動を行う様子などが詳しく記録されている。


 資料に目を通す出席者をながめながら、ヴァルターは内心ほくそ笑んだ。


 前回の会議が終わってから、イザベラには積極的に奉仕活動を行わせてきた。

 用意した資料も完璧だ。

 今日こそはイザベラを大聖女に認定しようという動きになるに違いない。



 しかし、出席者の1人が、難しい顔で口を開いた。



「たしかに、この資料を見る限りでは、イザベラ聖女を大聖女に認定することに問題はなさそうです。……ただ、民衆の支持を得られるかとなると、少々疑問があるかと」



 ヴァルターの眉がぴくりと動く。



「……ほう。どうしてそう思われるのですか?」

「王都から巡礼に来る者たちによると、聖女イザベラが癒しの力を使うのは、ほとんどが金持ちだと」



 ヴァルターは、わざとらしく目を見開いた。



「いえいえ、とんでもない。老若男女を問わず、分け隔てなく奉仕していると聞いておりますよ」



 だが、その場にいた別の出席者たちも口を開いた。



「ですが、私も似たような噂を聞いています」

「ええ、同じくです」



 ヴァルターは「そんなはずは……」と苦笑しながら、内心歯噛みした。

 自分の影響力を強めようと、貴族を中心に癒しの力を使わせたのが、仇となってしまった。


 別の出席者が口を開いた。



「先代の大聖女は、20年以上も奉仕活動を重ね、その人柄もあって人々に深く支持されていました。しかし、イザベラ聖女は、奉仕を始めてまだ1年足らず。しかも、あまり良くない噂も立っています」

「我々が認定したところで、民衆の支持を得られるとは、とても思えませんな」



 彼らの話を聞いて、ヴァルターが内心舌打ちをした。

 面倒なことを言い出したな、と思う。



(だが、こちらにも手がある)



 ヴァルターは、同意するように大きくうなずくと、笑顔で言った。



「皆さんの言うこともよく分かります。イザベラ聖女は、素養は抜群だが、何せまだ年若い。ですので、今回皆さんに1つ提案があります」

「……提案?」



 ヴァルターは出席者たちを見回した。



「ここは1つ、『大聖女認定の儀』を開催してはいかがでしょうか」



 ――『大聖女認定の儀』。

 それは、中央大聖堂前の広場で行われる、厳粛な儀式のことだ。

 候補者たちが巨大な女神リュシア像に祈りを捧げ、女神の“神託”を受けるとされている。


 およそ100年前に、大聖女がこの儀を経て選ばれた。

 そのときには女神像がまばゆく光り、鐘の音が街中に響き渡ったと言い伝えられている。


 出席者がざわめいた。



「なんと、『大聖女選定の儀』を開催すると」

「いいのか、果たして?」



 懐疑的な声の中、ヴァルターの支持派が賛同の声を上げた。



「なるほど、それは妙案ですな」

「実際に目の当たりにすれば、民衆も納得するでしょう」



 ヴァルターは内心、にやりと笑った。


 広場にある女神像は、聖女の“癒しの力”に呼応して光るようにできている。

 “癒しの力”が強いイザベラにはうってつけだ。


 しかも、儀式の前に細工を施せば、劇的な演出ができる。

 それを見た民衆は、皆イザベラを支持するだろう。



(これでイザベラが大聖女で決まりだ)



 一方で、慎重な参加者たちは難しい表情を浮かべていた。



「たしかに民衆の理解は得られるでしょうが……」

「神聖な儀式を利用することにはなりませんか?」



 ヒソヒソと囁き合う。


 そんな中、銀のモノクルをかけた初老の上品な女性が、やわらかな笑顔で口を開いた。



「私は賛成です。実際に“神託”を受けるという形は、非常に説得力がありますからね」



 女性は笑顔でヴァルターの方を向いた。



「せっかくの機会ですし、イザベラ聖女以外にも候補者を数人――そうですね、5人ほど選出してみては?」

「それは良い案ですな。そのほうが説得力が増すでしょうしな」



 ヴァルターが満足そうにうなずく。

 他の参加者がいようと、イザベラの絶対的優位は変わらない。とほくそ笑む。


 2人の会話を聞いて、他の出席者も賛成に回り始めた。


 糸目の老人は、何か言いたそうな顔で女性を見るが、諦めたように口を閉じる。



 そして彼らは、春ごろを目処に、王都と地方からそれぞれ大聖女候補を選出することを決定。

 会議は次の議題へと移っていった。






夜にあと1話投稿します。

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