(Another Side)一方、王都では②
本日2話目です。
ソフィアが王都を離れてから、およそ6カ月。
分厚い雲が空を覆う、蒸し暑い夏の日。
「またまた号外! 号外! 大ニュースだよ!」
石畳の王都の街に、新聞を掲げた少年たちの声が響き渡った。
3人組の男の、そのうちの1人が手を上げた。
「1部くれ!」
「まいど!」
硬貨を渡して少年から新聞を受け取り、「今度はなんだ?」と、早速目を通す。
「へえ! ルパート殿下と、聖女イザベラ様が婚約だってさ」
新聞の一面には、“ルパート第2王子と聖女イザベラの婚約”を伝える大きな見出しが躍っていた。
その下には、恐らく有名画家が描いたであろう、やたら美しい2人の姿絵がある。
「……たしかルパート殿下って、半年くらい前に公爵令嬢との婚約を解消してなかったか?」
1人が思い出したように言うと、もう1人が新聞に目を通しながら答えた。
「ああ。ここには、その公爵令嬢が、聖女イザベラ様にひどい嫌がらせをしたって書いてあるな。それを止めたのが、ルパート殿下だとさ」
新聞には、ルパート王子が聖女の窮地を救ったことにより、恋が芽生えた、といった美談が書かれていた。
さらに、イザベラは、“大聖女”の最有力候補である、といったことも書かれている。
1人が声を潜めた。
「……これで宮中の力関係も変わるな」
「ああ、大聖女候補と婚約したんだ。王位継承レースは、ルパート殿下が一気に有利になるだろうな」
3人は、そんな話をコソコソしながら、今後の自分たちの商売にどういう影響が出るかについて意見を交わす。
*
一方、王都にある中央大聖堂の奥にある、立派な美術品が飾られた応接室にて。
3人の人物がソファでくつろぎながら話をしていた。
尊大そうな顔をした黒ひげの中年男性――枢機卿ヴァルター。
金髪碧眼、整った顔立ちに傲慢そうな笑みを浮かべた、ルパート第2王子。
そして、小狡そうな笑みを浮かべる、イザベラの父であり教会の役員に名を連ねる、ダモンド伯爵。
彼らの目の前には、新聞の号外が広げられている。
ルパートが満足そうに笑いながら、号外を軽く叩いた。
「素晴らしいな。ほぼ我々の思い通りではないか」
「これも女神リュシアのお導きですな」
「ええ、本当に」
ヴァルターとダモンド伯爵が品のない笑顔を浮かべる。
ルパートが機嫌良さそうに言った。
「これであとは、イザベラが大聖女に認定されるだけだな」
ヴァルターが、片方の口角を上げながらうなずいた。
「ええ、そちらの方はお任せください。秋の最高評議会で、イザベラを大聖女に正式に推薦したいと思います」
最高評議会とは、リュシア教の幹部たちが集まって、重要な決定を下す会議のことだ。
年に数回開かれ、大きな判断はここで決められる。
「問題ないのだろうな?」
ルパートにそう問われ、ヴァルターがにこやかにうなずいた。
「ええ、もちろんです。イザベラの癒しの力は本物ですし――何より後ろに我々がいます。」
「まあ、それもそうだな」
ルパート王子とダモンド伯爵が歯を見せて笑う。
その後、3人は話し合った。
最高評議会が開かれるまでに、イザベラの活躍をもっと広めようと相談する。
そして、彼らは立ち上がると、機嫌よく部屋を出て行った。
ここまでが第1章です。
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次から第2章入ります。




