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しいな ここみ様主催企画参加作品

本当の理由


やっと、やっと、救助隊が来た。


泥だらけの自衛隊員が次々と壁に開けられた穴から姿を現す。


駅の地下構内に逃げ込み救出される事を待ち望んでいた私たちは、続々と現れる自衛隊員たちに歓声を上げ感謝の言葉を口々に口にする。


「ありがとうございます!」


「お待ちしていたました!」


「ありがとう、ありがとう」


此れで家族の下に帰れるという歓喜の思いと、1年間食べ続けて来たカレーから解放されるって思いが私の頭の中では渦巻いていた。


私たちは都内に核ミサイルが着弾したあの日から此処に避難している。


当初は2週間程立て籠もっていれば出られるって聞いていたのだけど、着弾した場所に比較的近かった為に地上は放射能の汚染濃度が高く、地上に出たら多分1〜2時間程で意識を失い死亡するレベルらしい、だから私たちは救出されるのを待っていたのだ。


核ミサイルを発射したのは北半島国、アメリカがイランを攻撃した事に危機感を覚えた北の独裁者が、殺られるならアメリカの同盟国を巻き添えにしてやると、家族を友好国のロシアやC国に避難させてからボタンを押したという。


核ミサイルは東京以外に国内数カ所の人口密集地などに数発着弾した。


海上自衛隊や航空自衛隊は即座に反撃を開始。


陸上自衛隊は当初救出活動を行おうとしたらしいのだが、ロシアの東部軍管区に所属する幾つかの部隊やC国が漁夫の利的な動きを見せた為に、東日本の陸上自衛隊は対ロシアに西日本の陸上自衛隊は対C国に備えて各地に展開した為に救出活動が後回しになった。


救出活動が後回しにされた為に私たちは約1年間、駅の地下構内で救助隊を待ち続ける事になる。


スマホやケータイが不通になった中得られた此れらの情報は、駅構内に避難した数千人の避難民の極僅かな、主にお年寄りが持っていた携帯ラジオから得た。


救助されるまでどれほどの期間待ち続けなければならないのか? と不安だらけだったが、幸いな事に此らのお陰で助かったっというのが幾つかあった。


1つは都内の地下鉄や鉄道の各社が、日本の核シェルター普及率が0.02パーセントしか無い中で万が一に備えていた事。


地下に繋がるトンネルなどの出入り口が万が一の時は、シャッターなどで閉鎖される仕様になっていた。


此のお陰で地上の放射能が地下の線路内や駅構内に、風により吹き込んだり雨水と共に流れ込んだりするのを阻止。


2つ目は地下の線路内に貨物列車が数本停車していた事。


比較的余裕のある地方から都内に運ばれて来た備蓄米を満載した貨物列車、大手の食品メーカーのカレー粉を満載した貨物列車や西日本から東日本に運ばれる途中のミネラルウォーターが満載された貨物列車、此れらがあったお陰で私たちは飢えずに済んだのだ。


3つ目は駅員の努力により細々とだが電気が繋がっていた事。


此れにより私たちはご飯を炊き、カレー粉と水だけで作ったカレーだったがカレーライスを食する事が出来た。


こんなカレー粉と水だけで作った不味いカレーを毎日食していたから、私たちはカレーを見るだけで無く匂いを嗅ぐのも嫌なのだ。


それだったらもっとまともに作られたカレーだったら大丈夫だろ? って皆は疑問に思うと思う。


でも駄目なのだ、此れは地下構内で殆んど毎日カレー粉と水だけのカレーを食べて来た避難民全員が同じ思いだと思うのだ。


1年間殆んど情報が無い中で過ごしていると喧嘩などが起きる。


喧嘩だけで無く殺人それも大量殺人が起こった。


最初はもっと食べさせろといちゃもんをつけて来たC国人の観光客のグループ。


いちゃもんをつけるC国人に対し、「お前らの国が漁夫の利的な動きを見せているために救助が遅れているんだろう!」と若いヤンキーの兄ちゃんたちが突っかかり、それに構内に避難してる人たちの中の大多数を占めていた会社員の男たちが加わり、C国人狩りが行われる。


いちゃもんをつけて来たC国人の観光客のグループの奴らだけで無く、他のグループのC国人観光客の女も子供も関係無く殴られ蹴られ殺された。


C国人の次は半島国の奴ら、「戦争を吹っかけたクセに謝罪もせずに飯を食ってるんじゃねー」と、難癖をつけて北の奴も南の奴も関係無く皆殺しにされる。


その次は「差別だ!」と騒いだクルド人、って感じで外国人が次々と槍玉に上がり殺された。


そういうストレス解消する為の虐殺が行われた後のカレーには、たっぷりと肉が入っていた。


カレーを見るのもカレーの匂いを嗅ぐのも嫌な本当の理由は此れなんだよ。








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