記録14
アイリスをつれてミーコを探す事約30分やっと見つける事ができた。
町の中央にある噴水のベンチでおいしそうに焼き鳥を食っておられましたよ。
本人曰く迷子になった場合はその場から動かないのが一番らしい。
とにかくミーコにアイリスを紹介して事の顛末を話すと、妹ができたみたいで嬉しいと喜び、旅の同行にも快く了解してくれた。
現在は三人で歩いて宿に向かっている途中だ。
話しをしながらブラブラしていたので空はもう暗くなりかけていた。
俺の後ろで二人のみが話に花を咲かせて、その話の中に俺が入り込む好きは1ミリも無く、黙って前を歩く俺。
俺も話に混ぜろよな!キリッ。という勇気もなくとことんヘタレだなと考えたが、よくよく考えてみると子供の頃からそんな感じだった事に気がついて諦めの境地に入った。
宿に着き店主にアイリスのための追加料金を払い夕食前に一度部屋に入る。
ミーコとアイリスを座らせ、アイリスにエロエロと聞く。
違った。いろいろと聞く。
ギルドランクを持っているのか、魔法はどこまで使えるのか、戦う事はできるのかいろいろと聞いた。
が、ギルドランクはなし、魔法は使えない、戦えない。
まぁ分かってはいたけれど、凄まじいな。
よくこれで盗賊から逃げて、さらにはここまでたどり着くとかいう幸運を勝ち取れたな。途中で魔物に会わなかったのだろうか?
「とりあえず、ミーコには明日もギルドでお金を稼いでもらっていいかな?
アイリスは魔法の勉強をしようか。このままでは少し拙いからな。」
「了解、セイメイ。アイリスはちゃんと頑張りなさいよ?」
「はい、お姉様!」
なんとも仲のよろしい事で。本当にうらやましいかぎりですな。
明日からは疲れそうだな、どう考えてもアイリスは頭の足りない娘のようだし、魔法を教えるのは厳しい作業だな。
ミーコには悪いが一人でギルドで金稼ぎをしてもらおう、魔物なんかにそうそう遅れを取る事もないだろうし、まだ安心できるだろう。
「じゃあ明日からの数日の予定はミーコが金稼ぎ、アイリスは勉強で俺がその教師役ってことで決定な。では決まったところで晩飯といきますか。」
「「あーい!」」
こいつらは一体どれくらい食うというのだ。
全くはかりしれん程の食欲だな、その体型で食べた物は一体どこに消えているというのだ、まったく解せぬ。
食堂まで行き、運ばれてきた料理をにぎやかに話をしながら食べる。ミーコとアイリスのみが。俺は相も変わらず話に加われずご飯を食べるだけ。
もしかしてアイリスの同行を許可したのは間違いだったというのか、ちくしょう!でもアイリスとミーコは可愛いから許す!
なんか最近俺ぶっ飛んできているな、自重だ自重。
あれから3日。えっ、飛ばすなって?
仕方ないじゃないか延々と勉強のシーンを見るつもりかい?そこは諦めてくれ、頼むから。
アイリスはなかなか優秀な生徒だったようだ。
座学の方はそこそこに憶えが早かった
しかし、若干何かをつかみかけて入るようだが未だ魔力を感じる事はできないようだった。
確か早い人で10日かかると本に書いてあったので、まだかかるだろう。
やはり俺が規格外だったのだろうか?
お金もたまったことで今日から旅に出る事になった。
もちろん行く先はロンド魔法学園。
今は昨日のうちにした旅の準備の最終確認を終え、馬車を取りにきたところだ。
そして気がついた事が一つ。馬車が伊藤君たちに持っていかれていたという事実。仕方なく馬車を新しく用意したが、何という失態。要らぬ出費がかさんでしまい、予備に持っていたお金がぶっ飛んでしまった。
ぐちぐちと言っていても仕方ないので、さっさとミーコとアイリス、荷物を乗せて町を出た。結構長い時間この町に居たので若干の寂しさを感じつつも、馬車を走らせた。もちろん手綱をにぎっているのは俺だ。いつも通り、いつも通り。
馬車を走らせ、そろそろ日が沈んでしまう前に野営の準備をするかと考えていたところに思わぬ来客があった。
おそらく男だろうが全身を黒い服で身を包み馬車の進行方向にこちらを向き立ち止まっている。
馬車を止め何か理由でもあるのか聞こうと近寄り、顔尾を見た瞬間俺は目を見開いた。本来そこには居ないはずの人間であり、本来この世界ではないようなデザインの服だった。
俺がびっくりしていると声まで同じ物で話しかけて来た。
「おぉ、大きくなっちゃって。俺が知っているのはまだ小さかったのにな。」
そういいながら自分の腰あたりに手をやり大きさを示していた。
こいつが何を言っているか分からない。
「こうして長い事生きているといろいろ面白い事はあるものだな。
どうだ?強くなったのかな、あれから。小さいときに思ったよこいつは才能あるってな。まぁ、とうぜんか。」
次の瞬間、いつの間にかソイツが目の前に居て、拳が俺の腹に突き刺さっていた。
「おいおい。だめだめじゃあないか。
体術もしっかりと言ったはずだろ。自分に術も掛けていないようだし、体術もだめ、信じられないくらいのだめっぷりだな。」
なんだこいつ。適当に喋りやがって意味分からんし、腹痛ぇ。
その場に腹を抱え膝立ちになる俺。
「何だその意味分からんって顔、お前まさか。ちょい頭出せ。」
そういいながら膝をついている俺の頭に手を乗せる。
「おいおい、そういう事かよ。はぁ、ありえねぇ。
覇気のない腑抜けた顔しやがって、目も腐ってるときてる。
せっかく試練を開始したみたいだから見に来たというのに・・・。あいつめ。
俺はもう帰るぞ、帰るったら帰るぞ。
お前にはがっかりだ、ここまで上ってきたかったらもっと努力するんだな。
まぁ、お前に言っても仕方のない事だがな。はぁ、また人探しかよ。顔がそっくりだからまされたよ、ホント。
あいつめややこしい事しやがって、これは俺に対するサプライズか?
うれしくねぇよ!
あぁ、そうそう。これは俺からのプレゼントだ、せいぜい頑張れや。」
ソイツが喋り終えた瞬間意識が落ちそうになる。
最後にソイツの顔を見た時も未だに信じられないかった。
ニヤリとした顔は見た事はなかったが、あの顔はどう見ても・・・・・
そこで俺の意識は深い闇に飲まれていった。
これで一章終わりかな?