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手紙の主は尚成?対一流冒険者たち

そこにAさんがいると認識したり、Aさんの事を覚えているからAさんは存在する。

もしも誰もAさんを認識せず、誰も覚えていなければ、Aさんはこの世に存在しないのと同じだ。

或いはAさんに、Aさんとしての記憶があるからAさんが存在する。

もしもAさんにAさんとしての記憶がなければ、もうその人はAさんとは言えない。

Aさんはいない事になるのだ。

逆にAさんとしての記憶さえあれば、そこに存在する人はAさんだと言えるだろう。

記憶というのは、その人が存在するのに最も大切なものなのかもしれないね。


この日の夜、突然にっこりタウンにやってきたのは黒川だった。

「ギルドマスター霧雨から預かった書状を届けにきた」

深雪の言った通り、どうやら黒川は天界には行けなかったようだな。

少し薄汚れた黒川を見て、みんな笑いたいのを堪えているようだった。

いやいや、死なずに逃げ切ったんだろう。

良かった良かった。

「俺たちを罠にはめようとした奴が、よくノコノコとここに来られるよな?」

「全くです。どれだけ鈍い神経を持っていたら、こんな事ができるのでしょうか」

「僕が思うに、つまり恐竜並みの神経なのです」

これこれ想香や。

この世界には恐竜なんていないのだよ。

まあもう異世界人が当たり前な感じになっているし、気にする者もいなくはなっているけれどね。

「ふん!お前たちと違って、こっちは死んでも直ぐに生き返る事ができるからな。それにわざわざ俺を生き返らせた奴が、今度は殺すとも思えん」

あらあら、ちょっとツンデレな感じに見えましたよ。

黒川、もしかしたら割といい奴なのかもしれない。

頭はおかしいけれどね。

「それでその霧雨からの書状ってのは?」

「これだ」

黒川はそう言って一通の手紙をテーブルに置き、それをこちらに向けて移動させた。

俺はそれを手に取り、開いてみる。

何々?

今日最強ダンジョンに入った者たちは、三日後に【砂漠の地】に来い?

そこで決着をつけよう?

果し状かよ。

まあその真意は、ルールを破った俺たちを処刑するって事なんだろうな。

町を襲う訳にもいかないからって、こんな呼び出しをするか?

俺たちが行かないって言ったら、どうするつもりなんだろうねぇ。

「あらぁ~、面白そうねぇ~。いよいよ冒険者ギルドとの全面対決かしらぁ~?」

天冉が後ろから手紙を覗き込んで見ていた。

俺は何やら身震いがしてきたよ。

でも、後顧(こうこ)の憂いは先に断っておいた方がいいよな。

後患(こうかん)の根を断つか。

「分かったよ。うちのはみんなやる気だし、最低でも冒険者一万人は集めておくよう言っておいてくれ」

部屋に充満するみんなの魔力が、ビシビシと俺に伝わってきている。

それくらいは集めてもらわないと、一瞬で終わりそうだからな。

「お、おう‥‥。お前たち、前よりも格段に強くなってるな‥‥」

黒川はそう言って立ち上がった。

みんなの殺気に近い魔力の中では、もう耐えられないと言った所か。

「一応言っておくが、俺は命令に従っているだけだ。その手紙は霧雨からだからな」

ビビリすぎだろ。

でもなんていうか、黒川はやはり俺と同じ日本を生きた者なんだよ。

純粋な悪役にはなりきれない所がある。

憂い奴め。

黒川はそそくさと部屋から出ていった。

「という訳で、三日後に冒険者ギルドとの全面戦争が決まってしまった。とりあえず明日のダンジョン攻略は中止にしよう」

決着を付ける前にダンジョンに入るのは、なんとなくフェアじゃない気がするしね。


黒川が帰った後、俺は深雪を引き止めた。

霧雨からの書状を見て、未発見ダンジョンで見つけた手紙を思い出し、それについて聞きたかったからだ。

「これが未発見ダンジョンを攻略した際に見つけた手紙だ」

俺はそう言って、四通の手紙を深雪に見せた。

「なるほどなるほど。確かにこの字は尚成の字だよー。でもいつの間に第五大陸に来てたんだろう?」

やはり北都尚成だったか。

「尚成は強いのか?どのダンジョンもおそらく単独攻略だろ?」

「そりゃねー。多分わたしよりも戦闘力は高いはずだよー」

『多分』ね。

深雪も尚成の戦闘力をハッキリとは把握していないのか。

「それよりもこの手紙、ちょっと変だね?」

「変?」

何が変なんだろうか。

「この四通の手紙は、未発見ダンジョンで見つけたんだよね?」

「そうだけど?」

「なのにどうしてダンジョン名が書かれているんだろう?見つかっていないダンジョンだから、まだ名前はついていないはずなんだけど」

確かに深雪の言う通りだ。

おそらくダンジョン名なんかは、見つけた時に冒険者ギルドが付けるはず。

見つかってもいないダンジョンに名前が付いているなんておかしい。

ゲームモデルの世界だからと言ってしまえばおしまいだけれど、一応リアルなんだよな。

或いは北都尚成が勝手に付けた可能性もあるけれど、もしかしたら未発見ダンジョンは未発見ではなかった可能性もあるのではないか。

いや、雑に隠されていた印象もあるし、一部の者が知るダンジョンだった可能性については、既に考えていた事だ。

予想としては冒険者ギルドの上層部が考えられるけれど‥‥。

「尚成は冒険者ギルドに所属しているのか?」

「んー?どうだろう。そんな事は普通ありえないんだけど。天界の住人は、この世界じゃ王族貴族みたいなもので、皆が冒険者ギルドの誰よりも立場が上になるから」

「そうなのか」

だったらダンジョン名を知っていても不思議ではないのだろうか。

だけれど冒険者ギルドが見つけていたら、やはり未発見とはなっていなかった気がする。

仮に冒険者ギルドが知っていたとして、そこから情報を得ていたとしたら、何故冒険者ギルドに敵対する俺たちに味方をするような真似をしている?

実は北都尚成も、この世界のあり方を変えたいと思っている?

俺の意思を少しでも持つなら、その可能性はあるよな。

でもそんな事をすると、香との幸せな生活は終わるかもしれない。

或いは香が創造神であるなら、神に逆らう行為ともとれる。

もしかして、尚成も本当は想っているのかもしれない。

今の香は幸せではないから、なんとかしてやりたいと。

そう考えると少しくらいは、深雪と別れて香と一緒になった気持ちも分からなくはない。

だけれど腹は立つぞ。

俺ならちゃんと深雪と一緒にいろよ。

おそらく香が神となり創った世界だろうから、それに文句を言っても仕方がないんだけれどね。

ある意味この世界は香の夢の中のようなものだから。

何度も念を押すけれど、香が創造の神だったらの話だどさ。

だったらダンジョン名とかダンジョンの場所を、香から聞いていたって可能性もあるよな。

なんとなく違う気はするけれど。

しかし俺は、香にそれほど想われる事をした覚えはないんだけれどね。

俺って勘違いはするけれど、逆も又然りなのかもしれない。

それに俺とみゆきの仲が崩れていったのは、思い返せば確かに香をゲームに誘った辺りからだった。

二人の間に何かがあったのかな。

そしたら二人には申し訳ない事をしたかもしれない。

おっと、思考が多すぎると一瞬で色々と考えられるから、ついつい別の事まで考えてしまうな。

「尚成は香と一緒にいるんだよな。もしも香がこの世界を創った神なら、ダンジョンの名前くらいは聞いていてもおかしくないんじゃないのか?」

「場所も教えてもらったり?」

「そうだな」

「それでこの世界の秩序に挑戦しようとする人たちを支援する?」

「ん~‥‥。香には内緒でこっそり?」

「そもそもこの第五大陸に来たら、天界に行くには最強ダンジョンを通って行く必要があるんだよ?」

「瞬間移動魔法が使えないのか」

そりゃそうなのか。

深雪もなんだかんだアーニャンたちと行動を共にしていた訳だし、一度天界を出ると戻るのは難しいという事だろう。

黒川も当然一度は天界に行っているはずなんだ。

なのに今日、天界に行く為に俺たちを騙した。

尚成は未発見ダンジョンを攻略した後、どうやって天界に戻ったのだろうか。

それもおそらく香に気づかれない短時間でだ。

香が創造神なら、自分と尚成だけは特別にしていてもおかしくはないけどさ。

「とにかく現状、尚成はおそらく俺たちの味方であり、この世界の秩序を改革しようと考えているって事だろう」

「私の記憶にある策也なら、今の香ちゃんは幸せじゃないって考えてもおかしくないよね」

おかしくないよ。

だって自分で創った人形とずっと幸せに暮らすって事でしょ。

俺が別の魂を憑依させて作るゴーレムとは根本的に違う。

やはり人は心であり、魂が重要なんだよ。

だからみゆきは、俺をアルカディアに転生させたんだ。

でもよくよく考えると、愛の為とは言え俺は殺された事になるのだろうか。

その前に、既に死ぬ事になっていたんだけれどね。

そう考えると、香はもしかしたらまだ優しいのかもしれない。

俺の魂は持ってこなかった訳だからね。

その為にみゆきの魂を引っ張ってきているから、似たようなもんだけどさ。

あれ?もしかしてみゆきが死んだのは、魂が削られたからなのかもな。

くっそ、ややこしいな。

愛とか恋とかって、複雑だぜ。

「したり顔‥‥」

「マジか?!」

表情に出ていたか。

ヤバいなぁ。

やっぱりこの深雪はみゆきなんだよ。

俺の心が凪いでいる。

狛里や想香、或いは少女隊と一緒の時もそうだけど、やはりみゆきは別格で。

深雪もそれに近い。

「深雪なんだな」

「わたしも策也といるのが自然に思えてきたよ」

深雪は、今の俺の容姿から見れば年上女性って感じだ。

でも見た目は関係ないんだな。

前に言っていた事とは矛盾するけれど、事実そうなのだから仕方がない。

俺たちは自然と同じソファーに座り、なんとなく寄り添ってマッタリするのだった。


三日が過ぎた。

新年祭もそれなりにやって、俺たちは【砂漠の地】に来ていた。

「霧雨には感謝だな。新年祭も普通に楽しめたし」

「そうだねー。まさか新年をみんなと祝えるとは思っていなかったよー」

「全ては日頃の行いなのだ!俺たちはついてるのだ!」

それを自分で言うのはどうかと思うけれど、案外声に出して言った事はその通りになったりもする。

言霊だな。

だから『自分は日頃の行いがいい』くらいは言っておいてもいいかもね。

さてここに来ているのは、最強ダンジョンに入った者だけ。

撫子を除くいつものメンバーだ。

そこに深雪も加わっている。

深雪は魔法を使って記憶を消し再び離脱しようとしていたけれど、既に魔法は盗ませてもらって解析しているんだよね。

俺は触れた相手の魔法を自分のモノにできてしまうのだ。

そんな訳で俺には、深雪の魔法は効かないし引き止めさせてもらった。

尤も魔法記憶もあるし、深雪の魔法でどうこうされる俺じゃないんだけれどね。

『悪いけど、みゆきの事はもう二度と忘れたりしないんだ』

我ながら恥ずかしいセリフで引き止めたものだ。

深雪は少し驚いて、直ぐに俺の希望を受け入れてくれたよ。

やはり魂の欠片でも、深雪はみゆきなんだよね。

まさか異世界でみゆきに会えるとか。

そんな幸せを思っていなかった俺は、割とテンション上げ上げだった。

「楽勝ムードみたいだけど、霧雨よりも強いのが三人ほどいるって話だよ」

「アーニャン。そのくらいなら問題ない。今の俺は絶好調だ」

「一応その人物の情報だけ話しておくね。一人目の名前は‥‥」

「ちょっと待て!」

「何?」

「名前は言うな。そしたら万一負ける可能性もゼロにできる」

「なにそれ?」

アーニャンよ。

お前も異世界転生組なら分かるだろう。

「名前の無いキャラはモブキャラだ。モブキャラは俺たちユニークキャラには絶対に勝てない事になっている」

「そ、そうね‥‥」

流石はアーニャンだ。

分かってくれたか。

それにここは香の創った世界である可能性が高い。

ならば当然、この理屈は通る。

なんせMMORPGの世界に(いざな)ったのは俺なのだから。

「変なのー!だけどわたしもなんとなく分かっちゃうんだねー!」

深雪にも日本での記憶が少しは残っている。

理解はできるようだな。

俺は深雪の頭をポンポンとした。

「ずるいのです!ポンポンは僕にするのです!」

「想香ちゃん違うの‥‥。最初は私なの‥‥」

想香も狛里も子供かよ。

こいつらが本気で言っているのかは置いといて、こうやってじゃれ合うのも良いものだ。

深雪がいるからだろうけれど、今の俺はマジで無敵モードな気がするぞ。

そんな事を考えていると、遠くに冒険者たちの気配が感じられるようになってきた。

四方から感じられる所をみると、正々堂々という訳ではなさそうだな。

だからと言って、俺たちが負けるなんて事は絶対に有り得ない。

絶対は絶対にないけれど、時にはあるんだ。

天冉も今日は力を開放するつもりだし、奇乃子も落ち着いている。

敵の最高レベルと比べれば弱いくせに、土筆と孔聞も今日は負ける気がしない。

左之助はなんだかんだやるだろうし、アーニャンも‥‥。

まあ霧雨くらいなんとかやってくれるだろう。

霧雨の相手は、今日はアーニャンがする事になっている。

黒川の相手は左之助だ。

そして後は適当に。

この辺りには俺の一寸神もつけておくし、妖凛と冥凛にもサポートを頼んである。

俺の出る幕はきっと無い。

「遠くで魔力が高まっているよー!」

「慌てる事はないさ。狛里!なんでもできちゃう謎のバットは預けておく!」

「分かったの‥‥。今日はちゃんと打ち返すの‥‥」

「頼むぞ」

いやしかし、今回はどこに打ち返せばいいのかな。

ピッチャー返しでいいか。

流石に今日は、反対側に人はいないと。

いやいや、ファールチップする方が難しいんだけどね。

一応学習はしているのか?

「神様、ご先祖様、わたしを見守っていてください」

深雪は手を合わせ、空に向けて祈りを捧げていた。

こういう所は日本人としての記憶がしっかりと残っているのな。

日本の文化そのものである宗教は『神道』だ。

そして神道とは、神様、そしてご先祖様を拝む。

ご先祖様への感謝の気持ちを忘れないのが日本人。

そう言えば、俺の両親は今も元気に生きているのだろうか。

時々思い出すけれど、年齢的には生きているかどうか際どい所だな。

「来るのです!狛里さん!」

「分かっているの‥‥。任せるの‥‥」

町を攻撃してきた時と同じように、巨大魔法が今放たれたようだ。

規模はあの時よりも大きい。

この辺りは破壊してしまっても良いって事か。

村があるけれど、どうやら住民は避難させているみたいだしね。

「来た!頼むぜ嬢ちゃん!」

「狛里なの‥‥」

狛里は土筆に呼び方の訂正を要求しつつ、飛んできた魔力の塊に向かっていった。

そして今度はジャストミートで魔法を打ち返す。

向かってきたスピードよりも速く、一瞬で魔法は術者のいる所へと着弾していた。

大きな爆発が地面を揺らす。

風が一瞬で通り過ぎた。

四方から、無数の冒険者たちが接近してくる。

「妖凛!これだけ冒険者がいれば、特殊な魔法を使う者もいるはずだ。厄介なのは全て無効化してくれ」

「コクコク」

「冥凛もお願いするのです。負ける可能性はそこしかないのです」

「ん‥‥」

力の差は歴然。

その中で俺たちが負ける可能性があるとしたら、それは特殊な魔法以外にはない。

そこを二人がケアする事で、負ける可能性は完全に失くなる。

まあ俺もそこは警戒しているんだけれどね。

それよりも、それ以上にイレギュラーがあった場合に俺は対処する。

この戦いは、天冉が本気になり、狛里もそれなりに力を出す事になるからな。

味方のやり過ぎの方が恐ろしいよ。

「霧雨の気配はこっちだ。行ってくる!」

まずは単身、アーニャンが跳んでいった。

「想香は一対一で戦えるようについて行ってやれ」

「オッケーボス!」

後に想香が続いた。

おそらくアーニャンなら霧雨を倒せるとは思うけれど、ヤバい時には想香の出番もあるかな。

「黒川を見つけた。倒してくるか」

今度は左之助が別の方向へと跳ぶ。

正直こちらは力が五分だ。

しかも相手は転生者。

普通に考えれば負ける可能性の方が高い。

「深雪、頼めるか?」

「オッケーボス!」

自然とこのセリフが出る辺り、やっぱりみゆきなんだよなぁ。

深雪は笑顔一つ残して左之助を追っていった。

深雪の能力については一通り確認しているので、強さは把握しているつもりだ。

それでも一応、一寸神は付けておく。

実際に戦いを見た訳じゃないからね。

心配はあるのだ。

後はやってきた者たちを、とにかく薙ぎ払っていく事になる。

「久しぶりに開放するわよぉ~!ふふふふふ~」

ヤバい。

天冉が荒魂を発動したか。

この中で土筆や孔聞はどれだけレベルを上げられるだろう。

奇乃子も含めて、できれば左之助レベルには強くなってもらいたいんだけどさ。

それにしても、本当に一万人以上集めたんだな。

第五大陸の冒険者にしてはかなり弱いのも含まれている事から、もしかしたら第四大陸からも連れてきているのかもしれない。

ギルド関係の者なら行き来できそうだしね。

俺は全体の様子を、沢山の思考で監視する。

この辺りに集まってきてる敵は、そんなに強くはなさそうだ。

まずはアーニャン狙いなのだろうか。

ちょっと想香には頑張ってもらわないと。

そして一部、特に強い者は黒川と共にいるようだ。

おそらくこいつらが例のモブキャラだな。

深雪は大丈夫だろうか。

俺は一寸神で見守っていた。

「あなたたちモブキャラの相手はわたしがするよー!」

「なんだ?モブキャラだと?俺の名前は‥‥」

「あーあー!聞こえなーい!」

‥‥。

紛れもなくみゆきだな。

僅かな記憶でも、深雪はかなりみゆきに近い。

どうしてここまでみゆきなんだろうな。

人の存在は、記憶が担っている。

本人の記憶もそうだけれど、もしかしたらこの世界には、みゆきをよく知る人も転生してきていたりするのかな。

香か‥‥。

二人はあの時何を思っていたんだろう。

今になって分かる香の気持ち。

そしてみゆきは俺から離れていった。

二人は仲良くしているように見えていたけれど、其の実裏ではバチバチとやりあっていたのだろうか。

みゆきも俺と同じで誰とでも仲良くする方だったから、自分の気持ちを押し殺していた可能性は高い。

おそらくいがみ合っていたって事はないはずだ。

ならば割と良い友人関係だった可能性もある。

だから深雪はみゆきとそっくりになった。

だったら北都尚成だって、俺に似たんじゃないだろうか。

深雪がずっと一緒なら。

だけれど香と一緒になる事で深雪は離れ、尚成は俺にはなり得なかった。

もしそうだとしたら、俺を作っているのはみゆきって事か。

まあでも確かに納得かな。

アルカディアに転生した頃の俺は、今の俺とは違った気がするから。

「トドメだよー!えっ?かわしちゃうのー?」

おっと、ちゃんとしないと。

俺が見ていなくても、きっと狛里や妖凛がなんとかしてくれるとは思うけれどね。

それにしても、深雪の頃はまだスォードを使っていたか。

RPGが流行りだした最初の頃は、基本的に勇者プレイって感じだもんな。

そこから刀を持つ職業(クラス)が流行って、武器を持たない、或いは特殊武器に移っていった。

だからこの世界の深雪は、出鱈目な強さじゃなく全うな強さって感じだ。

その分弱いようにも見えるけれど。

ふむ。

流石にモブキャラらしからぬモブキャラ三人を相手にするのは難しいみたいだな。

少しだけ手を貸してやるか。

俺は遠くから妖糸で援護した。

軽く敵の動きを制限するだけで、力のバランスは変わるのだよ。

「そこだー!」

ほらね。

深雪が一人、強敵なモブキャラを仕留めていた。

いや普通に深雪は強いよ。

作られたキャラではないって事だ。

おそらくあのモブキャラ三人衆や霧雨辺りが、この世界の普通の住人としてのトップクラス。

深雪は世界創生の頃からいるだろうから、魂が無くともトップクラスではあったろうけれど、魂がある分一歩抜けている。

アーニャンは後から転生してきた転生者だから、伸びしろはあってもまだそこまでは強くなっていない。

そういう事だな。

黒川は知らんけどw

あれ?そう考えると、北都尚成ってどうして強いんだろうか。

俺の魂が憑依しているとは思えないし、普通に考えれば深雪よりも弱いはず。

せいぜいモブキャラ三人衆や霧雨レベルが限界なんじゃないだろうか。

強くするにはそれなりの理由みたいなものがあるはずなんだよね。

しかもそれが人ならざる者の領域なら尚更だ。

香が本当に創造の神なら、尚成をこの世界の神にしていても不思議ではない。

ただ世界の神は、俺がこの世界に来たように仕事で長く異世界に行く事にもなるから、ずっと一緒にいたいなら神にはしないだろう。

仮に、それでもずっと一緒に暮らせる理想の世界を維持する為にそうしたとしても、尚成はむしろこの世界を壊す方向で行動しているように感じる。

そしてそれは、いずれ来る敵に味方しているようなものだ。

自殺願望があるのなら死ねば済む話だし、そんな面倒な事をする意味はない。

だから尚成がこの世界の神である可能性は限りなくゼロに近いとは思うんだけれどさ‥‥。

モブキャラ三人を仕留めた深雪の魔力は、既に大神クラスでもトップレベルだと感じられた。

ちなみに大神クラスってのは、俺の決める魔力レベルで三百五十以上四百未満ね。

それを超えたら、そこはもう真の神だけがたどり着ける領域。

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