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レベル上げ三昧!撫子の力!?

人権とは『人が人間らしく生きる権利』である。

そして日本国憲法にある基本的人権とは『人間である権利』の事だ。

俺が暮らしていた日本では、基本的人権以上の権利を求める声が大きかった。

それは国が与えるべき権利ではないんだけれどね。

働かざる者食うべからずだし、人間らしい生活ってのも人それぞれあるだろうからさ。

だいたい人間らしく生きる権利を認めると、少数の意見を聞いて多数が虐げられる事にもなるんだよ。

だから憲法典には『基本的人権』と書かれているんだね。

しかしこの世界では、『人間である権利』すら存在しないかもしれない。

ほとんどの人間が、この世界ではモブキャラなんだ。

俺も心の中ではモブキャラとか考えたりもするけれど、世界にモブキャラなんてものは存在してはいけないと思うよ。


朝には天冉他四名に魔法無効化の腕輪を渡しておいた。

これで一応『ゲーム調整』や『強制ログアウト』の魔法には対処できるだろう。

今日も町でボスモンスター退治をする事になるのかどうかは分からないけれど、どうせやるならレベル上げになればと思う。

「それじゃ~、とりあえず洞窟の町にある冒険者ギルドに行きましょ~。聞きたい事もあるし、ダンジョン攻略の登録もしないといけないからねぇ~」

第四大陸の冒険者ギルドが、この事態について何か知っているとも思えない。

仮に知っていても話さないだろう。

だけれど町の民の行動は知っていたかのようなんだよな。

ゲーム世界だから決まった行動をするのかもしれないけれどね。

「じゃあ洞窟の町に飛ぶぞ!」

「オッケーボス!」

俺は皆を瞬間移動魔法で町の入口まで移動させた。

「今日の町は穏やかなの‥‥」

「今日これからやってくんのか。それとももう終わったのかねぇ」

「魔法を無効化する腕輪があるのだ。来ても問題ないのだ」

確かに問題は無いし、むしろ来てほしい気もするんだよね。

今日ならレベル上げもできるし、できればあの召喚に使われている法螺貝も確保しておきたい。

使い捨てアイテムみたいなんだけれど、何度も使えるようにできればレベル上げがしやすくなりそうだ。

「とにかくギルドに行きましょう~。まずはそこで色々と確認してからねぇ~」

そうだ。

ギルドの依頼で第五大陸からやってきた冒険者たち。

法螺貝の事。

民の行動の秘密。

聞きたい事は色々あるのだ。

天冉を先頭に、俺たちは町へ入って冒険者ギルドへと向かった。


今日は何事もなく冒険者ギルドに到着した。

既に朝のピーク時間は過ぎていて、人はそれほど多くはなかった。

それでも受付には冒険者が並んでおり、幾時か待つ事になった。

特に昨日の事を聞く者はいない。

あれほどの事があっても、それは日常という事なのだろうか。

スムーズに受付は進んでいった。

まもなく俺たちの番がやってきた。

「おはようございます。どういったご要件でしょうか?」

「ダンジョン攻略のパーティー登録のお願いねぇ」

「ダンジョン攻略ですか。そうですか‥‥」

受付嬢の反応が良くないな。

ダンジョン攻略には行かないでほしい。

そんな気持ちが伝わってくる。

受付嬢は用紙を取り出し、パーティーメンバーの記入を求めてきた。

天冉は記入しながら質問をした。

「昨日第五大陸から来た冒険者が、ギルドの依頼でこの町にモンスターを召喚したそうだけどぉ~、それってどういう事なのかしらぁ~?」

受付嬢は突然の質問に驚き、少し大きめの声で答えた。

「えっ!どこでそんな情報を!?えっと、いえ‥‥」

明らかに『知られたらマズイ』、あまり話せない内容のようだね。

「知ってるわよぉ~?本人がそう言っていたものぉ~」

「そんなはずは‥‥。少々お待ち下さい」

受付嬢は慌てる気持ちを抑えて、裏へと消えていった。

他の受付嬢を見ると、みんな目を逸らせていた。

どうやらこれはトップシークレットな話のようだ。

俺は少し気まずい中で、ダンジョン攻略の登録用紙に名前を記入しておいた。


受付嬢は結局戻ってはこなかった。

少ししてから代わりにやってきたのは、いかにもな感じのギルドマスターだった。

「おまたせした。私はこの冒険者ギルドのマスターである吉田だ。闇に昇る太陽の方々だね?」

この世界でも吉田かーい!

せめて増田にしろと‥‥。

「そうよぉ~。それでさっきの質問には貴方が答えてくれるのかしらぁ~?」

「その話だが、少し奥の部屋でさせてもらえないだろか?」

またギルマス吉田と応接室で話かよ。

ワンパターンにも程があるな。

でもそれもまた定め。

「分かったわぁ~」

天冉がそれを了承し、皆は吉田の後を付いて奥の部屋へと入っていった。

何処の世界もギルドの作りは似たようなもので、ぶっちゃけ見慣れた部屋といった感じだ。

世界を作る神も、こだわりのない所はオート制作が当たり前だからね。

俺たちはソファーに座った。

座る場所が足りないのもいつもの事なので、俺と狛里はテーブルを挟んで吉田の正面に立っていた。

自前の椅子、用意してなかったわ。

「ソファーが足りなくてすまないな」

「いや、別にいいよ」

「そうなの‥‥。問題ないの‥‥」

「そうか」

話は天冉がしてくれるだろうし、俺たちは聞いてるだけだしね。

「では話を聞かせてもらえるかしらぁ~?ギルドの依頼ってのはどういう事かしらぁ~?」

天冉がそう尋ねると、吉田は一息吐いてから話し始めた。

「実は‥‥。第四大陸のギルドマスターである私にもそんな話は聞かされていなくてな‥‥」

知らんのかーい!

もったいぶりやがって。

でも色々と疑いを持っていたって感じは伝わってくるな。

天冉が俺の顔を見てきた。

問題ないよ。

嘘は言っていないようだ。

俺は無言で頷いた。

「でも、町の人たちは対応が早かったわよねぇ~?どうしてかしらぁ~?」

「実は第五大陸の冒険者ギルドから、災厄予報というのが来ているんだ。それは民の間に直ぐに情報が行くようになっている」

災厄予報ねぇ。

つまり第五大陸でそんな依頼をしておいて、一応民には知らせておくって訳か。

変な話だよ。

「それでその話わぁ~、冒険者にはしないのねぇ~」

「聞かれる事もないからな」

いや、ギルドでそれっぽい事を前に言われた。

この町にいればってね。

なるほど災厄予報でギルド職員は知っていたんだ。

尤も、あの時もハッキリとは言わなかったし、聞いても教えてはもらえなかっただろう。

「そういう事なのねぇ~。それじゃぁ~次に町が襲われるのは何時かしらぁ~?」

「今は情報が入っていない‥‥」

嘘だな。

天冉が俺の顔を見てきた。

しかし困ったな。

嘘だって時はどうすりゃ伝えられる?

大丈夫な時はいつも頷いていたけれど、嘘を表す時には首を振るのか?

それだと『わからない』と伝わるかもしれない。

仕方がないので、俺は狛里の手を取って狛里の鼻に指を二本突き刺した。

「なにこれ?‥‥策也ちゃん‥‥」

「いや、ギルマスの吉田が嘘を言ったから、それを天冉にどう伝えようかと思ってな」

「そうなの‥‥だったら仕方ないの‥‥」

狛里がアホで良かった。

「いや、嘘と言うわけじゃ‥‥」

「ごめんねぇ~。嘘は分かっちゃうのよぉ~。本当の事を話してもらえるかしらぁ~」

「‥‥話せないのは察してもらえないか?」

つまりそういう情報があって、また町は襲われるのか。

民には伝わっているけれど、冒険者には話せない。

どう考えても狙いは冒険者なんだよなぁ。

となるとこの後、知らなかった事にしてダンジョンに潜る訳にもいかない。

というか、もうまもなくやってくる可能性がある。

「今日辺りまたぁ~、ホラ吹き冒険者が来るみたいねぇ~。あの法螺貝は一体なんなのかしらぁ~?」

「法螺貝か。アレは何処かのダンジョンでドロップする、モンスターを召喚する為のアイテムと聞いた事がある。それ以上は私も知らない」

そんなダンジョンがあるのか。

だったらそこで法螺貝を集めまくれば、レベル上げもやりやすそうだ。

「分かったわぁ~。とりあえず今日はこの町で待つ事にしようかしらぁ~」

「えっと‥‥。こちらからも一つ聞きたいのだが、この話を聞いた第五大陸から来たという冒険者。その者は今どうしているんだ?」

天冉が俺の顔を見てきた。

これは難しいな。

イエスノーで答えられるものではない。

俺は狛里の後ろに廻り、両手首を持ってゼスチャーでなんとか伝えようと試みた。

「なにこれ策也ちゃん‥‥どうかしたの?‥‥」

「いや、捕まえた冒険者の所在を天冉に伝えようとしているだけだ」

「そう‥‥なら仕方がないの‥‥」

やっぱり狛里がアホで良かった。

「策也ちん、代わりに説明してくれるかしらぁ~」

天冉の目が怖かった。

冗談はこれくらいにしておこう。

「第五大陸から来た冒険者は十人。全部俺が牢獄に捕らえてあるよ」

なんだ五秒の説明で済むじゃないか。

喋れば良かったんだな。

「捕らえてあるのか。あ、いや。君たちの魔力ならそれも可能なのだろう。そこでどうだろうか?そうだな。その十人をこちらに引き渡してもらえるなら、君たちと君たち、そして君は無条件で第五大陸に送ってやってもいいが?」

ほう。

指名したのは俺と姦し娘、そして奇乃子の五人だけだった。

この吉田にはある程度強さが見抜かれているみたいだな。

そういえばどことなくモブっぽくない雰囲気を感じる。

あれ?それに何処かで見た事がある顔だぞ。

「おまえ‥‥吉田晋作か?‥‥」

あっ、ヤベェ。

それゲームの時の名前だわ。

「えっ?ああ、そうだが‥‥」

やっぱりそうか。

吉田晋作ってのは、プレイヤーズギルド『松下村塾』のマスターだった男だ。

ゲーム内で話した事もないけれど、割と大手のギルドでマスターをしていたし、名前が印象的だったので覚えていた。

もちろんこの世界に、その頃の吉田がそのままこちらに転生してきた訳ではないはずだけれどね。

前に会ったゲストもそうだけど、あの頃のプレイヤーをモデルにした奴がこの世界にはいる。

俺がゲームをやめた後の事は知らないけれど、もしかしたら俺の知らないプレイヤーモデルのヤツは結構いるのかもしれない。

「いや、どこかでそういう名前の冒険者の話を聞いていてな。それに似ていると感じたから聞いてみただけだ」

「そっか。確かに私は元冒険者だが、一体誰がそんな話を?」

「悪い。町の酒場で聞いた話だから俺もよく覚えてないんだ。所でその十人を引き渡したら、そいつらはどうなるんだ?」

話を逸らさないと。

説明した所で理解しがたい話になるし。

「それは当然裁かれる事になるだろう。アレだけの事をして民も失踪している。おそらく‥‥」

そこまで話した所で吉田は口を噤んだ。

死刑?なのか?

いや、言えなかったって事は別の何かがあるんだ。

おそらくそれは強制ログアウトによるリセット。

第五大陸の十人をリセットできれば、十人は上に上がれる事になるのかもしれない。

もしも上級の民しか行けない世界があるとしたら、それは健全な世界なのだろうか。

その為に人の人生がリセットされるのは、流石に違うのではないだろうか。

転生前の世界だと、一応どんな国に行くのも概ね自由ではあった。

もちろん暮らすとなると、その国の人と上手くやっていく必要があるから、条件はあって当然だけれどね。

でもこの世界の住人は、皆が日本語を話し同じような価値観を共有している。

ならは自由でもいいはずなんだ。

「その辺りの話わぁ~、必要ならまたこちらから伺うわねぇ~」

「そろそろ嫌な予感がしてきました。町に魔力の高い人が入って来ているのです」

想香も気がついたか。

今じゃ俺と同等に近い能力を持っているからな。

「とりあえず俺は戦いてぇんだ。今日こそはやるぜ」

「自分は弱く見られるのが嫌なのでですよ。ならば今日は第五大陸の冒険者を倒したいと思います」

「皆さんがばってください。蘇生ならできますから」

「みんなやる気なのだ。今日は俺が全部倒すのだ!」

奇乃子も含めてみんなやる気だな。

若干一名やる気がなさそうにも感じるけれど、まあ前線で戦うタイプでもないしこんなもんだろう。

「それじゃぁ~、みんな行くわよぉ~」

何か言いたそうなギルマスを置いて、俺たちは冒険者ギルドを後にした。


町に出ると、今まさに強そうな冒険者たちが法螺貝を吹こうとしていた。

今すぐ時を止めれば法螺貝を手に入れる事も可能だけれど、ギルマス吉田は何処かでドロップするって話をしていたよな。

ならばおそらくこの先、手に入れられる事もあるだろう。

今は無理をしなくてもいいな。

そんな訳で俺たちは第五大陸の冒険者と、召喚されてゆくボスモンスターとの戦いに突入していった。

とりあえず俺や姦し娘たちはバックアップに徹する。

できれば奇乃子・土筆・孔聞・撫子の四人に頑張ってもらって、レベルを上げられるだけ上げておきたい。

法螺貝を手に入れられる所で、どのくらい手に入れられるのかも分からないからね。

ゲームの頃にも似たようなアイテムは言われていたけれど、かなり集めるのは大変だった。

そんなに集められないと考えていいだろう。

複製や改造もゲームの頃は当然できなかった。

それをドンドン使ってくれる訳だから、レベル上げにはもってこいだ。

この機を逃す手はない。

ただし町の民がやってくる前に倒さないと、強制ログアウトが待っている。

町の人たちを強制排除してもいいんだけど、流石にモンスターを倒そうとしている人をそうする訳にもいかんよね?

その分町には、それなりに被害も出る訳だしさ。

「それじゃぁ~、私も行ってくるわねぇ~」

「お、おう」

そう言えば天冉も、このレベル相手ならまだレベルを上げられる余地は残されていたな。

尤も、二桁も上げられはしないだろうけれどね。

「僕たちは暇なのです」

「うん‥‥私たちも遊びたいの‥‥」

遊びじゃないんだけどな。

そうだな、撫子がサポートをしているのが勿体ない気がする。

彼女も戦えるのならもっとレベルが上げられるはずだ。

女性だから神を倒す事は不可能でも、ダメージを与える事はできるかもしれないのだから。

「撫子の七変化!光属性!みなさんに祝福をー!」

この撫子の七変化は優秀だ。

リスク無く特定の属性を強化できる。

いや、或いはこの強化した状態こそが撫子の力なのかもしれない。

その飛び抜けた部分を入れ替える事ができる能力と言った所か。

この能力は俺も既に解析を済ませていて使えるので、一寸神七人を七変化状態で召喚できるようにしていた。

色分けされて分かりやすくもあるからね。

「撫子!お前は戦う事はできないのか?できるのなら、俺たちがサポートに回るからやってみないか?!」

「そうですねぇ。わたくしだけ置いていかれるのも少し悔しいと思っておりました。では、サポートをお任せしてよろしいですか?」

おっ!?

言ってみるもんだな。

実は戦えるとか、これは見ものだ。

「オッケー!じゃあ想香と狛里は、みんなのサポートを頼む」

「任せておいてください。完璧なサポートをお見せするのです!」

「分かったの‥‥。とりあえず全部の敵を瀕死にするの‥‥」

‥‥。

「いや狛里は此処で応援していてくれ‥‥」

「‥‥一人ぼっちは寂しいの‥‥」

「俺も此処に残るから‥‥」

流石に狛里にやらせたら、みんなの経験値全て持っていかれそうだしな。

俺は仕方なく一寸神を二人だけ召喚してサポートに付けさせた。

さて撫子は一体どんな戦いを見せてくれるのだろうか。

「撫子が戦うのですか?ちょっと待ってください。せめてこいつのトドメを刺してからお願いします」

「どうしたのだ?孔聞の顔色が悪いのだ」

「嫌な予感しかしねぇ。とりあえずさっさとこいつは倒すぞ」

なんだか孔聞の様子がおかしいな。

撫子が戦うと何かがあるのだろうか。

天冉のようにバーサクするとか?

その場合は静寂の魔法もあるし、最悪孔聞にキスさせればなんとかなるだろう。

そんな安易な事を考えていると、撫子が何やら能力を発動した。

絶対共産主義(まっかなおんなのこ)!」

なんだかとんでもない名前の能力が発動されてしまったぞ?

撫子の全身が、七変化の炎属性よりも更に真っ赤になっていた。

神眼で解析した所、どうやら俺たちから少しずつ魔力を拝借しているようだな。

少し狛里の能力にも似ている。

「これは相手の強さに合わせて、味方から少しずつ魔力を拝借する能力です。つまりパーティーメンバーから少しずつ魔力をいただきますので、皆さんお気をつけください」

「なんでぇそりゃ?」

「魔力が取られているのだ!俺が少しずつ弱くなるのだ!」

「みなさん!ドンドン敵を倒してレベルを上げていかないと、魔力を取られて弱くなってしまいますよ!」

三人は今まで以上に必死に戦い始めた。

これは良い傾向だな。

俺なら魔力を吸われるのを止める事もできるけれど、これは逆に与えてしまった方が良いだろう。

俺はノーガードで魔力を吸わせていった。

「凄い!力がみなぎってきました。今ならわたくし一人でもボスモンスターが倒せそうです!」

これは仲間がいないと使えない能力だ。

だけれど俺たちの中にあれば、この力はかなり強力と言えるだろう。

相手なりに強くなれるとしたら、神にだって致命傷を負わせる事ができるかもしれない。

ならばその後で、土筆なり孔聞なりにトドメを刺させればいいのだ。

それにこの能力、もう一つ別な効果もあるのかな?

術式の中に解析困難なものがある。

単純に読み解くと、金持ちに対しての攻撃力が上がるとか?

その辺りは後でじっくり解析しておこう。

「こんな能力を隠し持っていたとはな。こりゃ案外楽にミッションも達成できるかもしれない」

「でも魔力を集めるの‥‥時間がかかりそうなの‥‥」

狛里の言う通り、確かにこのスピードだと時間がかかりそうだ。

ボスモンスターくらいなら元々そんなに大きな差は無いから、倒せるレベルにもなれるだろう。

しかし相手が神となればそうもいかないか。

とは言え戦い方如何ではなんとかなるかもしれないし、対応策も見つかるかもしれない。

今までよりもゴールは近くなった気がした。

撫子の戦い方が圧倒的に変わった。

どうやら体の強化に優れている能力らしく、前線に出て殴る蹴るを繰り返す。

司祭というか、完全に修道僧だな。

ただ魔力は上がってもそこは素人と言った感じがある。

殴る蹴るでダメージを与えると言うよりは、それに重ねてゼロ距離からの魔法をぶち込むような感じか。

赤華(せきか)!」

石化じゃなく赤華ね。

殴ったり蹴ったりした場所が赤く華が咲いたようになっている。

属性付与の効果があり、後からジワリジワリとダメージを与えているな。

冷めるまでは状態異常効果も望めそうだ。

ならば奇乃子や土筆との相性もいいだろう。

思った通り状態異常を得意とする土筆や、それに合わせている奇乃子によってモンスターは弱っていく。

戦闘の展開が早くなっていった。

四人の連携は洗練されて行き、倒す速度も上がってゆく。

まだ時々土筆や孔聞は殺られたりもするけれど、俺たちが直ぐに蘇生をするから問題はない。

順調にレベルを上げていった。

そして天冉も一人で寄ってくるボスモンスターを倒してゆく。

四人が一体ずつ確実に倒していけるように戦っていた。

「なんだこいつら?第四大陸にこんなのがいるのか?」

「聞いてねぇぞ!第五大陸にいる冒険者と比べても遜色ない。いやむしろ上回っている奴もいる」

「やることやったら帰るぞ!関わったら駄目だ!」

第五大陸の冒険者か。

捕まえた所で得られる情報は無さそうだけれど‥‥。

俺は捕らえられそうな者たちだけは捕らえていった。

戦いは順調に進んでゆき、そして終わった。

俺たちが知らない所では民が消えて行ったかもしれない。

しかし目の前で強制ログアウトさせられる事はなかった。


戦いが終わった後、捕らえた冒険者に話を聞いてはみたけれど、新しく得られた情報は二つだけだった。

前の冒険者には聞くのを忘れていた法螺貝の情報と、この町の襲撃は何時まで続くのか。

どうやら第五大陸で何かを達成すると、法螺貝がドロップするダンジョンに行けるようになるらしい。

但し捕らえた冒険者たちは、その何かを達成しておらずあくまで情報として知っているだけのようだった。

法螺貝は第五大陸の冒険者ギルドで高く買い取られ、それを任務の為に支給されていたとか。

そしてこの町の襲撃は、おそらく今日で終わりとの事。

冒険者ギルドにある法螺貝の在庫が、今回の分で尽きたという話を聞いていた者がいた。

それで決めつけるのも問題かもしれないけれど、とりあえず明日様子を見てから、明後日の午後辺りにダンジョンに入れば問題はないだろう。

美味しいレベル上げタイムはどうやら終わったか。

俺はこの日捕らえた冒険者を収監し、二日後の昼までこの町でのんびりとするのだった。

多分‥‥w

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