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調整は続くよ何処までも?

世界の人口が増えすぎて、減らさなければならないと感じたらどう対処するのだろうか。

俺はワクチンで死んだ訳ではなく、あくまで『ワクチンをきっかけに死んだ』にすぎない。

その日に死ぬ事が十二年以上前から決まっていたからね。

一応言っておくけれど、それを決めたのはみゆきではない。

それ以前から決まっていた運命だったらしい。

だったらもしかしたら『ワクチンで死んだ』可能性はないのだろうか。

今となってはどっちでも良いけどさ。

ただ増えすぎた人口を減らす為に、ワクチンを利用するって話は以前から存在する。

わざと死ぬようなワクチンを打たせるのは陰謀論かもしれないけれど、そういう陰謀を予見していた人はいる訳だ。

だからこそそんな陰謀論が広まったりもする訳で。

だとしたら、疑いを持って真偽は確認するべきなのだろうな。

尤も俺は既に死んでいるのだから、その後の地球がどうなっているのかは分からないんだけれどね。

他にも人口を減らす方法として『戦争』が言われている。

殺し合いをさせれば人口は間違いなく減るのだから。

そう仕向ける人が少なからずいるという話はあるし、実際に『対立を煽る』人は存在する。

わざわざ対立の火種を作る人もいる。

それが殺し合いをするきっかけになっているのかは分からないけれど、それは仕方のない事なのだろうか?

出来る事なら、俺は対立したり人口を減らすのではなく、みんなが生きられる方法を考えて対処したいね。


この日の朝、孔聞が青い顔をしてリビングダイニングに入ってきた。

「小便が真っ赤になっていました。自分はもしかして死ぬのでしょうか?」

どうやら血尿が出たようだね。

確かにそんな小便が出たらショックを受けるのは分かる。

俺も最初に出た時はかなりショックを受けたものだ。

だけど大人になってしょっちゅう血尿が出るようになってからは、正直慣れっこだったよ。

「血尿か。出る原因はいくつかある。ヤバい病気の可能性もあるけれど、まあ問題はないよ」

「そうなのですか?」

癌や腎炎なんかも考えられるが、大抵は結石か、赤血球や筋肉が壊れた事が原因だ。

激しい運動をすれば、赤血球が破れてヘモグロビン尿になったり、筋肉が壊れてミオグロビンが尿に交じる。

どれが理由にしても、この世界じゃさほど心配はないだろう。

結石はクエン酸を摂る事で予防もできるし、魔法で砕く事も可能。

激しい運動によるものなら、それは放っておいても直ぐに止まるはずだ。

「直ぐに治したいなら私が診ましょうかぁ~?」

天冉は百万診の依代となった事で、あらゆる聖職者系魔法やスキルを取得していた。

魔法一つで一気に体の不調も解消させる事ができるだろう。

でもそれだと原因が分からないから、本人の不安は解消されないかもしれない。

「その前に、一応原因だけ調べておいてやろうか?」

「えっ?はい。よろしくお願いします」

孔聞の返事を受けて、俺は魔力を操作し体内を診てみた。

結石も無いし、体に異常もないか。

「今朝も模擬戦とかやっていたのか?」

「はい。もちろんです。強くなる為に毎日鍛えなくてはいけませんから」

「だったらこれは、激しい運動のしすぎだな。血の赤血球(あかいの)が壊れて尿に混じっただけだよ。直ぐに治まるし心配はない」

「そうなんですね。死ぬのかと思いました」

コレだけ血を見る世界にいても、やはり血尿って怖いのかねぇ。

「私の出番はなさそうねぇ~」

特に問題が無いことを確認すると、天冉はそう言って再び朝食の続きへと戻った。


さて今日はダンジョン攻略に向かう。

ダンジョンの場所は既に確認済みだけれど、【緑の里】からだとかなり遠い。

別に瞬間移動魔法で町までは直ぐに行ける訳だけれど、この場所にとどまる理由ももうなくなった。

ならば崩壊した砦を残して土地を維持しておく必要もない。

俺たち闇太ギルドメンバーは八人しかいないのだから。

そんな訳で俺は、砦の瓦礫などを解体してアイテムボックスにぶち込んでいった。

更地にしたら、後は土地の売買管理をしている商人ギルドに明け渡す。

その為に一旦緑の町へと寄った。

この所町にボスモンスターは現れていない。

それぞれのプレイヤーズギルド砦、特に闇太ギルドを標的にしていたように思う。

でもそれも収まり、俺たち以外のギルドメンバーも町に戻ってきているようだった。

「他の冒険者も、考えている事は同じみてぇだな」

「今日からみんなダンジョン攻略に向かうのだ?」

「ダンジョン攻略とは限りませんよ。その為のレベル上げなんかをする人もいると思われます」

「この町にいる人はおそらくそうでしょうね。みなさん弱そうですもの」

撫子の言う通り、この町に来ている冒険者はみな弱そうだった。

おそらくダンジョン攻略に向かっても、きっと何もできないだろう。

「この町にいる冒険者は、きっと何度も死んでいるんじゃないでしょうか。魔力が小さいのです」

「ギルド砦に一体でもボスモンスターが来たら、普通のギルドメンバーじゃ大変よねぇ~」

「でも倒せたギルドメンバーはきっと強くなっているの‥‥」

「つまりこの第四大陸の冒険者は、強弱二極化してそうだな」

当然俺たちは強くなった方だ。

尤も俺と姦し娘たちは元々強いんだけどね。

土筆・奇乃子・孔聞・撫子は強くなったもんなぁ。

中でも奇乃子は別格だ。

正直第五大陸に行っても上位だと思うよ。

そんな話をしながら商人ギルドに行って、土地を引き取ってもらった。

これでいよいよ、お待ちかねダンジョン攻略だ。

「それじゃ、早く洞窟の町に行くのだ!」

「慌てなくても洞窟は逃げませんよ。つまり慌てても仕方がないって事です」

『慌てる乞食は貰いが少ない』って諺もあるしな。

落ち着いて普通に行動するのが一番いいだろう。

つっても魔法で移動するだけだけれどね。

「じゃあ行くか!」

俺はみんなの顔を見てから、瞬間移動の魔法を発動した。

まもなく俺たちは洞窟の町の入口近くに立っていた。

「それでダンジョンとは何処にあるのかしら?」

撫子の問に土筆が答える。

「ダンジョンの入口は町の中心にあるって話だぜ。そしてダンジョンの攻略は冒険者への依頼となってるみてぇだから、冒険者ギルドでの登録が必要だぞ」

なんか面倒な感じだよな。

ダンジョンに潜ったっきりでは第五大陸には行けないと聞いている。

色々と外でもやる事があるからとか。

そうなると冒険者ギルドが関わっているのは当然といった所か。

それにゲームがモデルの世界だ。

第二大陸のように直ぐにクリアされても困るんだろうけれどね。

尤も、第二大陸はあれで結構なトラップ世界なんだけどさ。

あそこで生活をしていたら、十分に幸せな生活ができるだろうから。

一生第二大陸で暮らそうと思う者も大勢いるはずだ。

「それじゃ冒険者ギルドに行くのだ!」

そんな訳で俺たちは、洞窟の町にある冒険者ギルドへと向かうのだった。


町に入ると、比較的レベルの高い冒険者が多く集まっていた。

「これ全部ダンジョン攻略に行く奴らか?」

「でしょうね。この町にダンジョンがあるのですから、この町に来る冒険者は皆ダンジョンに向かうと考えられます」

この数を見ると、確かに世界の調整が入るのは分からなくはないか。

あまりにこの町に人が集まりすぎている。

そして多くがやがて第五大陸に行く事になるのだ。

大陸ごとに国と考えたら、現地人の生活を脅かす移民と見る事もできる。

土地には限りがある訳で、何処までも人口を増やせるわけじゃないんだよな。

食料確保だって難しくなってゆくだろう。

この大陸に人が多いのは、自由に行き来ができない弊害か。

でも第一大陸にも行く事はできる訳だし、そちらで暮らすって手もありそうなんだけれどね。

瞬間移動魔法は誰にでも使えるものではないけれど。

とにかく俺たちはダンジョン攻略の為に、冒険者ギルドへ歩いていた。

その時だった。

突如地響きと共に大きな揺れが起こった。

「何事なのだ?」

奇乃子の一言が終わる間に、次から次へと同じような地響きと揺れが起こる。

「これわぁ‥‥、大きな魔力が感じられるわねぇ~」

次々と起こる地響きと揺れの中、その数だけ大きな魔力を持つ何かが増えていく。

「召喚魔法ですか?!あの法螺貝召喚がこの町で次々に行われているみたいなのです」

みたいじゃなくて、想香の言う通りだろう。

しかも今までのボスモンスターよりも強力な感じがするな。

そしておそらくだけれど、法螺貝を吹いている者たちのレベルも、今までより高いのではないだろうか。

第四大陸にいる冒険者のレベル以上。

いや、第五大陸でもあまりいないレベルの者に感じた。

ほとんど神クラスに近いレベルだからね。

尤もまだ第五大陸に行った事はないので、あくまで俺の推測だ。

考えている間にも、モンスターは増えてくゆく。

当然のように目の前にも、建物を壊して次々とモンスターが現れていた。

「おいおいマジかよ。こんなのがこの勢いで増えていったら、町は全滅じゃねぇか!」

「みんなで倒すしかないのだ!」

「どうやら私たちを第五大陸へは行かせたくないようねぇ~」

今日はこの町に、第四大陸の強者が集まってきている。

ようやくボスモンスターの召喚が終わったように見られていたからだ。

そこに本気の召喚が行われてきた。

天冉の言う通りか。

「町を破壊するのはいけないの‥‥ぶっ飛ばすの‥‥」

「僕も流石にプチキレました。召喚者も捕らえるのです」

そう言って妖女隊はモンスターに向かっていった。

ほとんどドラゴンのようなモンスターだけれど、今までのとは格が違う。

だけれど妖女隊にとって差はなかった。

「何者だあいつら?」

「このモンスター相手に全く引けを取らないだと?!」

「それどころかゴキブリを殺すようにアッサリと倒しているぅー!」

そりゃ当然みんな驚くよな。

第四大陸に一緒に上がってきた者の中には、強さを知っている者もいるけれどさ。

想香はともかく、神よりも強い女性の狛里がいるのは助かる。

この世界の神だって混乱するだろう。

強い異世界の神が来たとなれば納得もできるだろうけれど、その者は女性で刺客の神とは違う訳だからね。

「俺たちは召喚者を捕らえるのだ!」

「逃さねぇ」

「でもどう見ても自分よりも格上に見えます。つまり無理ではないでしょうか」

「孔聞くん、数的優位を活かしましょう」

奇乃子もいるし、一人二人相手なら大丈夫だろうな。

「俺たちも手伝うか。天冉?」

俺たちだけ見ていたら、その分町が多く壊される。

そう思って天冉を窺うと、天冉が怪訝な表情をしていた。

「ちょっとどういう事かしらぁ~?気がついたら民はいないわねぇ~。町にいるのは冒険者だけじゃないかしらぁ~?」

天冉にそう言われ改めて町の様子を見ると、確かに町の人たちはいなくなっていた。

もちろん冒険者だけが戦うのは当然だけれど、それにしてもこれほど鮮やかにいなくなるものなのだろうか。

やはり此処はゲームモデルの世界という事なのだろう。

尤も頻繁にこのような事が起これば、対応も身について当然かもしれないけれどね。

「今はとにかくモンスターを狩ろう。町から人がいなくなったのは、後で誰かに聞けばいいだろう」

俺はそう言ってモンスターを狩りに行こうとした。

その時だった。

五人の民が視界に入った。

なんだろうか。

凄く嫌な予感がする。

俺はとっさに声を上げていた。

「みんな!一旦引け!今すぐだ!」

「どうしたの?‥‥」

「策也タマが言うのです。とりあえず引きましょう!」

「俺は知ってるのだ。こういう時はまず行動が先なのだ」

そうだ。

こういう時、理由が知りたくて直ぐに行動できない者は大抵やられる。

幸いうちのメンバーは、だいたい俺の言葉に従ってくれていた。

狛里は動き出さず、想香は遅れているけれどね。

でもまあこの二人なら大丈夫だろう。

そう思った直後、五人の民が何やら魔法を発動した。

「強制ログアウト!」

強制ログアウトだと?

俺は神眼で解析した。

おそらくこの魔法では死にはしない気がする。

でも異世界人の俺たちが食らえば、元の世界に戻される?

或いはこの世界の者が食らえば、最悪ゲームのスタート時に戻される可能性も?

つまり『リセット』か。

魔法はモンスター以外にも、何人かの冒険者を巻き込んでいた。

幸い奇乃子たちは逃げられたけれど、その中には狛里と想香もいる。

果たしてどうなるんだ?

「これはかなり強力な魔法なの‥‥」

狛里はそう言ってカチューシャを外した。

狛里がカチューシャを外さなければならない魔法なのか?

だとしたら想香は!?

「ドラゴンの英知が自動で発動したのです!」

「ふー‥‥。想香も助かったか。しかしドラゴンの英知が発動したとなると、この魔法は特別って事だ」

次の瞬間、五人の民以外にも、そこにいた冒険者数名とモンスターは一瞬の内に消滅していた。

五人の民が消えたのは、魔法発動の代償だ。

そしてモンスターは消滅、冒険者は‥‥おそらくゲームリセット‥‥。

この魔法ヤベェだろw

奇乃子たちが食らえば、此処まで来たのが全て水の泡だ。

魔法無効化の腕輪を作って、ヤバい魔法だけは登録しておく必要がありそうだな。

尤も、ドラゴンの英知を俺が発動すれば無効化はできそうだけれど。

想香はあの状態だと、自分に襲い来る脅威に対して自らを守るくらいにしか対応が間に合っていなかった。

タイミングが遅れたらヤバいしね。

「結構ヤバい魔法だったの‥‥カチューシャを付けていると危険なの‥‥」

「僕も『奇魂』によってドラゴンの英知が自動発動しなかったら、死んでいたかもしれないのです」

「そんなに危険なのかよ‥‥。此処にいるのはヤベェんじゃねぇか?」

カチューシャを取った狛里と、一霊四魂をコピーしている想香なら大丈夫だろう。

オリジナルの一霊四魂を持っている天冉もなんとかはなるかもしれない。

『奇魂』だけでは回避不能でも、自分への不幸を周りに背負わせるような『幸魂』があるから。

でも当然被害を周りが受ける訳だから、天冉が魔法を受けるのは問題がある。

「此処で戦えるのは、狛里と想香、そして俺だけだ。天冉たちは一旦町を出て、第一大陸の初めの村に行ってくれないか?」

「そうみたいねぇ~。それで初めの村に行くのはどういう事ぉ~?」

「さっきの魔法を食らった冒険者は、レベルが壱になって初めの村に飛ばされる可能性がある。天冉なら巻き込まれた冒険者の顔は覚えているだろ?それを確認してもらいたい」

「そんなとんでもない魔法があるのだ?!」

「それがあるのかどうか。確認してきてほしいって事ねぇ~」

もしも本当にそんな魔法だったら、俺たちを元の世界に戻す魔法でもあるかもしれない。

イスカンデルでは、元の世界に戻す魔法は解析が不可能だった。

能力者を捕まえてゆっくり研究する事もできなかった。

この世界でそんな魔法が得られたら‥‥。

とにかく天冉は奇乃子たちを連れて瞬間移動魔法で初めの村へと飛んだ。

「狛里はもうこれから先、カチューシャは付けない方が良いかもしれないな」

「うん‥‥魔力コントロールもだいぶできるようになったの‥‥。魔力レベル三百なら余裕になったの‥‥」

イスカンデルで狛里に会った時は、三百に抑えるのさえ必死だった。

だからカチューシャがないと思うように戦えなかったんだよな。

でも今ならカチューシャがなくても、三百くらいなら余裕で抑えられる。

もうカチューシャも必要ないだろう。

攻撃の際には、魔力が抑えられるアイテムもある訳だからね。

俺と妖女隊は直ぐに、町のモンスター狩りへと戻った。

町の人々は上手く難を逃れている。

しかし多くの冒険者が倒れ、そして強制ログアウトによって姿を消していた。

人生やり直しと言えば聞こえは良いけれど、今までの努力が水泡に帰すのは良いとは思えない。

それに民も強制ログアウトの魔法によって、人生が終わりリセットさせられているはずだ。

ゲームなら何も思う所は無かったけれど、現実世界でこれはやはり駄目なのではないだろうか。

そしてそれは、この世界の神によって起こされている可能性もある。

討伐されて然るべき神という事か。

そしてあいつらは神の使い、或いは神の手足として動く者なのだろうか。

ようやくモンスターを召喚している者たちを視界に捉えた。

「狛里!想香!あいつらを捕まえるぞ!」

召喚に使われている法螺貝も回収したいけれど、使い捨てのアイテムのようなんだよな。

今回も今目の前で使用されて法螺貝は消えていった。

「分かったの‥‥手足を捥いでも捕まえるの‥‥」

いやいやそこまでしなくても。

冗談だよな?

でもあいつらは冒険者っぽいし、謎の刺客とは明らかに違っていた。

「こいつら、並みの冒険者じゃねぇ!気をつけろ!」

「何故第四大陸にコレほどの奴らがいるんだ?」

「逃げるんだ!」

あいつらもしかして第五大陸から来ているのか?

逃さねぇよ!

「魔封じの結界!なのです!」

「この人たちそこそこ強いの‥‥殴っても大丈夫そうなの‥‥」

俺は妖女隊の二人が行動を制限していった者たちに、魔封じの手枷足枷を付けていった。

この手枷足枷は俺のオリジナルで、能力も封じられるヤツね。

こうして俺たちは、ホラ吹き冒険者たちを捕まえていったのだった。


町の騒動は収まっていた。

町はかなり傷ついていたけれど、思ったほどの被害はなさそうだった。

「とりあえずこれで終わりか」

とは言え結構な数の冒険者が、強制ログアウトによって姿を消したのではないだろうか。

そして町の人も百人近くいなくなった可能性がある。

「早速この人たちが何者なのか聞いてみるの‥‥」

「そうです!こんな酷い事をどうしてするのですか?!返答によってはお仕置きするのです!」

捕らえたホラ吹き冒険者は十人いた。

おそらくその倍はいただろうけれど、半分は捕らえる事ができなかったか。

でもまあ話を聞ければ良い訳だし、それ如何では対処を考えないとな。

「酷い事?これは冒険者ギルドの依頼なんだよ。この世界の秩序を守る為には必要な事なんだ」

「そうそう。俺たちは世界の為に仕事をしたんだ。そんな俺たちを捕まえるとは何事だ?」

「仮にこれが間違えていると言うなら、冒険者ギルドに直接言えばいいだろ?」

全く反省の色はなしか。

それが当たり前、或いは間違いだと思っていても『仕事』なら自分に責任はないと考えてしまう。

大阪では信号無視が当たり前だから、道路交通法違反でもやる。

犯罪の手伝いをするバイトも、仕事だったら平気でやってしまう。

自分の頭で考えられない人は、こういう間違いを犯すんだよな。

それにしても冒険者ギルドか。

だから町の人たちはこうなる事を知っていて、それで直ぐに町からいなくなっていたのだろう。

「じゃあお前たちは、冒険者ギルドが町の愛する人を殺せと言っても従うのか?!」

「ぼ、冒険者ギルドがそんな依頼をする訳ないだろ」

確かに普通はそうなんだよね。

でもホラ吹きだってそもそもあり得ない依頼なんだ。

あり得ないがあり得たからこそ、自分の頭で常に考える必要があるんだよ。

そしてこれは、俺たちの正義からは反する。

一応俺は神として、こいつらを裁くよ。

「反省はしていないようだな。だったら‥‥」

俺は捕らえた十人を第三大陸へと連れて行き、バグ世界の牢獄へと収監した。

禁固刑だよ。

ただこの世界の場合、こいつらもいつの間にか此処からいなくなるかもしれないけれどね。

流石に冒険者まで消えていなくなるって事はないと思いたいが‥‥。


その後俺たちは第一大陸で天冉たちと合流した。

「予想通りみたいよぉ~。みんなレベル壱からスタートのようねぇ~」

「死ぬよりはマシって程度だな」

「恐ろしいのだ。何より記憶もないみたいなのだ」

「あんな魔法がこの世界に存在するなんて。つまり自分たちももしかしたら、(かつ)てそうなっていた可能性もあるって事です」

「わたくし、もう第四大陸で大人しく生活していた方がいいのでしょうか?」

死ぬよりもマシだけれど、生き地獄の方が恐ろしい気持ちにもなる。

死んだらそれで終わりだけれど、苦しい事を繰り返すのは実感を持って嫌だと感じるからなぁ。

こうして多くは第五大陸に行くのを諦め、第四大陸でこの世界の歯車に変わってゆく。

それでも再びこの世界じゃ人生をやり直す事になるんだ。

第一大陸で腐っている奴らも、第二大陸でのんびり過ごす者たちも、もしかしたらなんとなく分かっていたのかもしれない。

そして第三大陸で嫌になる戦争を繰り返す事もそうだ。

もしかしたら全ては、第五大陸で生きている上級世界民の為にあるのかもしれないな。

「俺は必ず第五大陸に行くのだ!そして必ず男になるのだ!」

奇乃子はブレないか。

もしかしたら奇乃子も、繰り返しの中で前は男だったのかもしれない。

だから何か思いのようなものが残っている可能性もありそうだ。

「俺は奇乃子に付き合うと決めてんだ。問題はねぇ」

「自分だって、別に冒険者を辞めるつもりはありません。つまり第五大陸に行きます」

「わたくしも闇太ギルドの方針には従います。それがわたくしの幸せの為ですから」

奇乃子の言葉で、みんな恐怖を振り払えたようだな。

「まあ安心してくれ。この魔法について理屈は分からないけれど、術式に関しては解明できている。明日までには魔法効果を無効化する腕輪が作れるだろう。もう一度明日洞窟の町にいくぞ」

「そんな物が作れるのだ?」

「策也ちゃんなら作れるの‥‥」

「そうだったな。最近慣れてきてはいたが、こいつらチートだったわ」

「ではとりあえず今日は何処かでゆっくりしましょう!明日はどうなるか分かりませんが、町に何事も無ければダンジョン攻略です!」

そんな訳で俺たちは明日に備えるのだった。

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