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孔聞が愛する女?大和撫子!

官僚の天下りは、昔からずっと問題視されている。

しかし一向に無くなる気配がない。

それはどうしてだろうか。

ピラミッド型の組織ならば、上に行けば行くほど人は少なくなる。

官僚も同じで、上に行けば行くほど人が余ってくる訳だ。

余れば当然要らなくなるわけで、かといってクビにもできない。

ならば方法は、(あま)った人の(あま)下りとなる訳だね。

まあでもそれだけなら大きな問題とはならない。

元官僚を本当に人材として欲しているなら、それはそれで誰も文句を言う筋合いはないのだ。

でも天下りを受け入れてもらう所に、既得権なんてものが生まれてくる。

天下りを受け入れてくれた会社などに、政策や税金を使って優遇するのだ。

分かりやすく言うと、天下りが続けば税は増え続け、国民の生活は苦しくなるばかりって話。

こういう問題は官僚だけの話ではない。

一般の企業でもそれは起こっている。

上が(つか)えていて若者が出世できず、給料が上がらず働く気力が低下する問題が起こっているのだ。

仕事に対するやり甲斐なんてものを、感じられる時代では失くなっていると言っていい。

会社が常に成長できるものならいいんだけどねぇ。

成長が止まった所でこの問題は必ず発生する。

政府はこの問題を『増税で政府規模を大きくする』事で凌いできたけれど、そろそろあり方を考え直す時が来ているだろう。

官僚への門をもっと狭くして、働きたい所まで働いてもらう形にしていくしかないよね。

今は要らない人材が政府に溢れているのだから。

何にしても上にあがって来る者が増えれば、バランスは崩れてなんとかしなければならなくなるって事。


本体の俺がイベントボスモンスターをなんとかしている頃、一寸神の俺は妖女隊と共に町の冒険者ギルドで話を聞いていた。

「この町で何があったの?‥‥モンスターが暴れた後みたいなの‥‥」

「ん~‥‥。説明は難しいんだけど、この世界ではモンスターが町で暴れるのは偶にある話なんだ」

偶にある話?

やはりこれもイベントという事だろうか。

「どういう事なのです?僕たちは助けたいと思って来たのですが、何かやれる事はあるのでしょうか?」

「いやいや、あのモンスターは冒険者が少人数で倒せるようなヤツじゃないんだよ。気持ちだけ受け取っておくよ」

「だったら誰がどうやって倒しているの?‥‥」

「そうです!気になるのです!」

俺も気になるわ。

冒険者以外に強いのがいる?

そう言えばゲーム時代にはゲームマスターがいた。

そして俺はこの世界のゲームマスターに会って、『垢バン』能力を拝借したいと考えている。

そんな能力が本当にあるのかは分からないけれど、それが神を倒せる可能性の一つになり得ると考えているからね。

「見れば直ぐに分かるんだけど‥‥。簡単に言えば町の人たちが命を懸けて倒すって事かな。この世界に住む冒険者以外の人には、そういう能力が備わっているんだ」

命を犠牲にイベントモンスターを倒すだと?!

それもまたこの世界の摂理なのか。

おそらくそれで犠牲になった人たちは、またこの世界の何処かで生まれてくる。

もう訳が分からない世界だよ。

「命を懸けるなんて良くないの‥‥今度出てきたら私がぶっ飛ばすの‥‥」

「ははは。流石に無理だよ。嬢ちゃんもよく第四大陸まで上がってきたと思うけれど、流石にここまでだよね。そろそろこの辺りで冒険者を引退する事を考えた方が良いんじゃないかな?」

「辞めないのです。必ず第五大陸に行くのです」

「そうか‥‥。それは残念だ。そうそう、もしも町に出るモンスターを見たいなら、今晩この町に泊まるといい。そしたらきっとモンスターは現れるよ」

モンスターがこの町に又現れる?

どうしてそんな事が分かるのだろうか。

話の流れから考えると、町に冒険者がいると現れる?

よく分からないけれど、だったら狛里たちには此処に今晩泊まってもらうか。

いや、もしも冒険者のいる所に現れるのなら‥‥。

俺は狛里と想香にテレパシー通信で話しかけた。

『狛里、想香。一度この町は出よう。もしかしたら町で暴れたモンスターは、冒険者のいる所に現れる可能性がある。だから俺たちと合流してこちらで待つんだ』

『分かったのです。策也タマの所に行けばいいのでしょうか?』

『それでいい。今日は此処で待機するつもりだからな』

『分かったの‥‥そうするの‥‥』

『よろしく』

流石に町にモンスターが出るかもしれないのにそうする訳にもいかないよな。

町に被害を出さなくて済むのなら、それに越したことはない。

狛里と想香は冒険者ギルドを出ると、直ぐに町を出て本体の俺がいる所へとやってきた。

想香は一霊四魂の和魂(にきみたま)によって、俺との和が発動されるようにしている。

だからお互いの場所は直ぐに分かるようになっていた。

ちなみに俺や天冉は狛里との和を持っているので、狛里とは双方向で居場所が分かるようになっている訳ね。

「砦が壊れているの‥‥」

「何かあったのでしょうか?モンスターが暴れた後の様なのです」

「でっかいボスモンスターが三匹もいたのだ!でも策也と天冉ちんが簡単に倒してしまったのだ」

やはり天冉が『ちん付け』されて呼ばれるのは違和感があるな。

「それで今は闇太ギルドのメンバーが戻って来るのを待ってる所だ」

ボスは顎で少し離れた所に立っている孔聞を示した。

孔聞はただ立ち尽くし、微動だにせず待っていた。

俺は『みんなの家』をアイテムボックスから取り出した。

「今日は一日此処で待つ事になる。俺たちは中でのんびりとしよう」

孔聞に言ってもどうせ家には入らないだろうな。

後で飯だけは持ってきてやるか。

そう思っていたら、孔聞がこちらに歩いてきた。

「復活するまで六時間はかかります。今から待っていても仕方がないですね」

物思いにふけっているかと思っていたけれど、割と冷静だったみたいだ。

「そうだな。外で待とうと中で待とうと同じだよ」

「まあ自分は日頃の行いが良いので、撫子も他のみんなも必ず戻ってくると信じています。いえ間違いなく戻ってくるでしょう」

どれだけ自分の行いに自信があるんだ。

でもまあ既にこの惨状な訳で、これ以上悪くもならないとは思うけれどね。

とにかく全員集まって、今日は闇太ギルドの砦跡で一夜を過ごす事になった。

ほら見ろ、やっぱり『闇太(安泰)ギルド』なんて言うから安泰じゃなくなってたでしょ?

ヤバいフラグは立てないに限るよね。


辺りが暗くなって、孔聞は再び家から出て外で待ち始めた。

ライトの魔法で辺りを照らし、『ここにいるよ』とギルドメンバーに伝えているようだった。

俺は一寸神を召喚し、家の外に出てそれを見ていた。

落ち着かないのか、奇乃子の作ったアイテムを確認するように試している。

俺はアイテムの能力について神眼で解析し理解はしているけれど、本当にどういう理屈なのか分からない。

魂を込めて作ったアイテムには魔力が宿る事はあるけれど、これには本当に魂が宿っているようだ。

俺はゴーレムを作る時、自分の魂の一つや魔獣の魂を宿らせていた。

そうすると意思を持ったゴーレムが作成できる。

或いは魂の残る魔石を使う事で、インテリジェンス武器の制作が可能だ。

だけどこの魂のようなものが宿る魔道具は、未だに理屈が分からなかった。

イスカンデルの生きた宝石もそうだったな。

錬金術師の能力には興味があるし、次に何かを作る時は見学させてもらおう。

そんな事を考えていると、間もなく近づいてくる魔力が俺の探知魔法に引っかかる。

誰かが戻ってきたか。

伺っていると林から一人の女性が出てきた。

見た目から察すると司祭のようで、髪の色は水色だけれどかなり清楚な感じのお嬢さんだった。

「撫子!」

やはりそうか。

アニメチックな容姿だけれど、大和撫子という名にピッタリマッチする感じだもんな。

「孔聞くん!やっと戻ってこられたのですね。ギルドのマスターの所に名前があったので、そうだとは思っていたのですが」

「あ、そうですか。海坊主さんがちゃんと登録し直していてくれたようですね」

孔聞は撫子に駆け寄って‥‥。

特に何もしなかった。

そこは抱きしめ合う所やないんかーい!

みんな気を利かせて家から出ずに外を伺っているというのに。

まあそういう関係でもないのかな。

「でももう他のメンバーは全て、ギルドからは抜けてしまいました」

えー?!

結局みんな辞めちゃってるのね。

なんかギルドを取り返した所で意味ないじゃん。

「いや撫子、君がいるじゃないですか。自分はそれだけでも‥‥満足‥‥です」

うわぁー‥‥。

全く満足できてねぇ~‥‥。

「そうですか。孔聞くんはギルメンみんなから嫌われていましたからね‥‥」

そして撫子容赦ねぇ~。

そんな事ハッキリ言う?

大和撫子っていうか、京都撫子って感じだよな。

「でも今は新たにギルドに入ってくれるメンバーがいるんです。今まで以上に強力になりますよ」

えっ?誰だ?

もしかして俺たちの事か?

まあ孔聞を助けるとは言ったけれど、もうコレ以上は関係なくね?

「そうなんですね。もの好き‥‥いえ、奇特な方もおられるのですね。良かったです」

だんだんこの撫子って子が分からなくなってきたぞ。

もの好きを言い直したかと思ったら、結局似たような意味の言葉でディスってるじゃん?

ちなみに『奇特』というのは、『他と違って優れていて感心な事』を意味する言葉とされている。

しかし大昔は否定的に『物珍しい』という意味で使われていたらしい。

奇特な人と言えば、『おかしな人』みたいな意味だね。

それがいつの間にが優れている方へと意味が変わり、そして今また『奇妙』という意味で使われ始めているとか。

もしかしたら『奇特』って言葉は、『気違い』と似たような言葉なのかもしれないな。

差別用語と言われ放送では使われない言葉ではあるけれど、一つの事に打ち込める天才の事を『気違い』と言ったりもする訳だし。

人とは、良い言葉に悪い意味を、悪い言葉に良い意味を持たせたくなるものなのかもしれないね。

話が脱線してしまったけれど、この二人の関係は本当に奇妙だな。

どういう関係なのかマジで気になるよ。

ただのギルメンって事では理解できない近さを感じる。

「撫子はこのままギルドに残ってくれるのですか?」

「もちろんです。わたくしの『神算鬼謀(しんさんきぼう)』によって、それが目的達成に必要なのです」

ほう、この子はかなりの策士なのか?

『神算鬼謀』ってのは、神や鬼などが考える人知を超えた優れた策略って意味だ。

実際の神はそれほど優れている訳でもないけれどね。

俺の(はかりごと)なんて大した事ないし。

「ああ。君のよく分からない占いの能力ですか。目的は達成できても普通以上の困難を乗り越えさせられるという」

なんだ撫子の能力の事なのね。

つかなんだよその能力の効果。

目的は達成できても、普通より頑張らないと駄目って事だよな。

なんとなく孔聞の『人を呪わばアナスタシア』と同じ匂いを感じるぞ。

最悪は回避できるけれど、決して良い方には導かない辺り。

でも面白そうだから、その能力は後で握手でもして盗ませてもらうか。

あっ、一応俺、相手がヒューマンなら触れる事で能力をコピーする事ができるからさ。

或いは神眼で解析できたらね。

「恋は困難が多いほど燃えるものなのですよ。相手を見つける為に困難に挑戦中ですので、まだ燃えてはいませんけれど」

もしかしてギルドに所属していたら、いい男に出会えるって話なのか?

つまり、やはり孔聞は眼中に無いと‥‥。

「自分の告白を十三回も断っておきながら、それができる撫子は自分にとって最高の幼馴染ですよ」

なるほど幼馴染だったのか。

距離が限りなく遠そうなのに近い関係に見えたのはそういう事なのね。

それにしても、十三回も振った相手のギルドにいるなんて、この子なかなか凄い子かもしれない。

「ところで砦の跡地に建っている家はなんでしょうか?」

「自分の仲間が所持している家です。そろそろみんなにも紹介しますから、どうぞ中へ入ってください」

いやもう紹介しなくても、みんな家から出て陰からやり取りを覗いていたようだよ。

そんな訳でゾロゾロと一同建物の陰から出てきた。

「そろそろいいかしらぁ~」

「話は全部聞かせてもらっていた」

「孔聞の彼女だと思っていたけど違ったみたいなのだ!見た目はとっても可愛い子なのだ」

「うん‥‥後光が差してるの‥‥」

「どうぞ中に入ってください。話はゆっくり中でするのです」

本体の俺だけは、野暮なことはしないと中で待っていた。

一寸神は見ていたけどね。

「この方々が新しい地獄行きのギルメンさんたちなのですね」

「あ、ええそうです‥‥。でも地獄に連れて行くつもりはないのですがね?」

「ふぅ~‥‥。その辺りも含めてお話した方がよろしいようですね。ギルドの砦がこのように襲われているのを見て、何も悟れない辺り孔聞くんは変わっていないのです」

「‥‥」

孔聞が完全に負けたように見えた。

この子、なかなか手ごわい子かもしれない。

そして見た目の雰囲気にある大和撫子は、単なる印象だけに終わりそうだ。

そんな撫子の前に狛里が立っていた。

「大丈夫なの‥‥。私たちは地獄には行かないの‥‥」

孔聞が馬鹿にされたように感じたのだろうか。

狛里は言い返していた。

「えっ?えっと‥‥。孔聞くんのギルド砦は、こんな風になっているのですよ?それでも大丈夫と言えるのでしょうか?」

対して撫子も状況を示して反論してくる。

でもさ‥‥。

「もう此処にはモンスターはいないの‥‥」

「あっ‥‥。もしかして‥‥アレらを倒したというのですか?」

「倒したのは私じゃないの‥‥」

「それってもしかして、孔聞くん?」

なんで孔聞くんやねーん!

孔聞くんはさっき言い返せなくなってたやん。

「はいはい!とりあえず中で話をしましょう~」

「早く入るのです!美味しいご飯もあるのですよ」

天冉たちに促され、撫子はみんなの家へと入ってきた。

俺はリビングダイニングのテーブルに料理を並べて座って待っていた。

「いらっしゃい。一応この家のオーナーである俺は此花策也だ。よろしく」

「この家のオーナー‥‥。わたくしは大和撫子と申します。ところで此花さんはお金持ちですか?」

いきなり何を聞いてくるんだ。

「いや別に金持ちってほどじゃないよ。持っている人から見れば俺は貧乏な部類だろうね」

「そうですか‥‥」

何か残念そうな反応だな。

もしかしてこの子、金持ちの男を探しているんじゃないだろうか。

危ない危ない。

本当の事を言ったら付きまとわれていたかもしれない。

此処は別の奴に押し付けるか。

「金持ちって言えば、ボスの方が持ってるんじゃないか?元ギルマスだし」

「いや俺は‥‥、単に使う事がねぇだけだよ‥‥」

この反応、結構貯めこんでいそうだな。

「ジー‥‥」

つか撫子がボスをガン見してるぞ。

もしかしたら狙い通り、この二人がくっつく未来があるのかもしれない。

面白くなってきたよ。

「策也タマ、恋愛は自由なのですよ。悪巧みはやめるのです」

「お、おう。そうだな」

いやいや、ついおっさん魂に火がつきそうだったわ。

危ない危ない。

そんな会話をしつつ、なんとなくみんながテーブルを囲って座っていた。

「それじゃ食事しながら皆さん話をしましょう~」

なんだかよく分からない感じで食事が始まり、皆はなんとなく自己紹介をしていった。

そしてその後、一体ギルドに何があったのか。

町に出るモンスターも含めて何か関係があるのか。

とにかく第四大陸に来たばかりで何も知らない俺たちは、撫子から話を聞く事にした。

「それでぇ~、闇太ギルドに何があったのかしらぁ~?」

「あんたいぎるど?ですか?」

「ええ。闇に昇る太陽、略して闇太ギルドなんだそうです」

確かにいきなり言われてもなんの事か分からないよね。

でもこのやり取りで分かったと思うけれど、このパーティーを仕切っているのは孔聞じゃないよ。

「そうですね。でもギルドの事を話す前に、まずはこの第四大陸の話からした方がいいでしょう。実は数週間前から、第三大陸から上がってくる冒険者の数が七人では済まないって話になっていました」

「えっとそれって、冒険者をまとめて第四大陸に上げる、俺たちの計画が漏れてたって話じゃねぇか」

「別に隠してた訳じゃないのだ。広く募集していたのだ」

そうだな。

別に隠していた訳でも無いし、そういう話が第四大陸に伝わっていても不思議ではないよね。

「そうすると困るのは、第四大陸の冒険者であり、更にその上の第五大陸の冒険者って事になる訳です」

「どういう事なのだ?どうして困るのだ?」

「なるほどそういう事なのねぇ~。つまり仕事が失くなる第四、或いは今後に脅威を感じた第五大陸の冒険者が、このような方法でプレイヤーズギルドを攻撃している訳ねぇ~」

天冉、察しが良すぎるぞ。

とはいえ、一を聞けば十とは言わないまでも五や六くらいなら理解できる人はいる。

此処まで聞けば大体分かるか。

「つまり上はもう人が足りている訳で、これ以上の移民を拒否するって話か。或いは移民が来る分、先に減らしておこうと」

「おめぇら、よくこれだけの話でそこまで分かるな」

「まあだいたいそういう事です。でも少し違うのは、これは冒険者の意思ではなく、どうやらこの世界の文化といいましょうか。習わしとして根付いているのです。世界の意思と言ってもいいでしょう」

そう言えばそういう世界だったな。

全てが繰り返しのような世界。

その世界において偏りが生じれば、当然それを是正しようとする力も働くはず。

百万診はそこまで知っていたのだろうか。

知っていたからこそ自分の力で壊そうとしたのかもしれない。

「つまり世界の意思に逆らわないと、自分たちのギルドは維持できないって訳ですか?第五大陸を目指す事はできないって事でしょうか?」

「分かって頂けましたか」

まあ一応理解はしたよ。

でもさ‥‥。

「なんだそんな事なのだ!だったら大丈夫なのだ」

「そうだな。宇宙人もいるしな」

宇宙人はいねぇよ。

「えっ?話を聞いていましたか?もしかして理解力が足りないのでしょうか?わたくしたちには、もう冒険者を続ける選択肢は無いのです。此処でギルドは解散して、冒険者も辞めて、一般人となるしか道はもう無いと言っているのですよ?」

「モンスターを倒したのは誰なのだ?」

「えっと‥‥。民の方々にはあのモンスターを倒す秘策があると聞きます。命懸けの対応らしいですが、町の人々に倒してもらったのですよね?」

「ハズレなのだ!アレを倒したのは、策也と天冉ちんなのだ!」

「まさか‥‥」

奇乃子よ。

自分が倒したかのように胸を張るのはやめてくれ。

ちょっと恥ずかしいから。

日本人のオリンピック選手が凄い活躍をして、()も自分が活躍したかのように自慢しているようだぞ。

「それに砦だって、建てようと思えば直ぐに建てられるのです」

「ついでにモンスターに壊されないようにする事もできるの‥‥」

「僕たちが付いています!何も心配はいらないのです」

お前らも自慢したいんかーい!

まったく、とんだ子供だな。

でもまあ俺をヨイショしてくれる辺りは悪い気はしないけれどね。

いや想香の言った事は、今では自分でもできるようになっているんだよな。

想香の中の姫ちゃんは、俺とほとんど同じだけの事ができた訳だし。

「みなさんありがとうございます。という事は、闇太ギルドに入ってくださるという事で良いのですよね?」

「えっ?」

皆が一斉に孔聞を見た。

でもここまで自慢してしまったら入るしかないか。

というか助けるって約束だし、それが助ける事になるのなら仕方がない所だろう。

「あくまで萬屋としてよ~。私たちは萬屋ぼったくりってパーティーで、人助けの仕事をしているのぉ~。その仕事の一つとして参加する事にするわねぇ~」

「なのだ!」

こうして萬屋ぼったくりは、闇太ギルドのメンバーになる事が正式に決まった。

此処からは孔聞をギルマスとして、八人で第五大陸を目指す事になる。

さて、第四大陸では何をしなけりゃならないのかね。

とりあえずその辺りは、まずは撫子に聞いてみるとするか。

撫子は少し呆れたような、そして安心した表情をしていたのが印象的だった。

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