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大荒れの国盗りクエスト!

『憲政の常道』とは、第二次世界大戦前までの政党政治における政界の慣例の事だ。

特に文書として記されてはいないので、無視しようと思えば無視できなくはないルールと言えよう。

それは普通に考えて守るべきものだったはずなんだけれど、日本の混乱時期にはそれが守られなかった。

今も『法律に無いからやっても良い』なんて常軌を逸した事をする人はいるけれど、当然やってはいけない当たり前の事は多々ある。

時に道徳や倫理の問題としてやるべきではないし、常識は文書に記されていなくても守られる前提のもの。

異世界は現代日本と違って、それほど多くのルールは決められていない。

でも人が共に暮らす以上、同じくらいの問題はあるはずなのだ。

だから理不尽な事も多々起こり得る訳だけれど、普通に暮らせるだけの秩序はある。

もしかしたら異世界の方が、常識が民に浸透しているのかもしれないね。


光の町で起こった民の暴動は、話し合いののちに収まった。

これを話し合いで収めたと言うのは違う気もするけれど、狛里が納得していればオッケーだろう。

世界は狛里を中心に回っている。

或いは涼宮なんちゃらさんが憂鬱になるくらいのインパクトを持っているからね。

当然他の町も、精一杯の暴力の後に話し合いで収めた。

更にそれから一週間ほど、同じような事を繰り返す日々が続く。

俺たちは一体何をしているのだろうかと思わなくも無かったけれど、奪った金を貸し付けて騒ぎは収まる方向へと向かっていた。

しかし期待通りとは行かなかった。

とうとう上水流の王都で暴動が起こったのだ。

狛里は早速上水流の王都がある、マップ【上水流の地】へ向けて飛び立った。

『まさか王都で暴動とはね』

『今度も話し合いで解決させるの‥‥』

王様は領主と違って一筋縄ではいかないだろう。

民が暴動を起こせば、当然命の危険を感じる。

国家体制そのものが脅かされる恐怖にも駆られる。

民に対しての対応もその分強くなるはずだ。

酷い事になっていなければ良いけれど‥‥。

上水流王都の上空へと到着した時には、既に町は半壊した状態だった。

民と兵が戦闘を行ったに違いない。

そしてフリーの冒険者は、おそらく民に味方する。

兵が沢山いればいるほど、暴動は大きなものとなるだろう。

狛里は町の入口に降り立つと、直ぐに城へと向かった。

防壁も崩壊していて、町には誰もが自由に入れる状態だ。

あちこちに傷ついた民や兵が倒れている。

治療を施したい所だけれど、まずは一刻も早く止めなければならない。

狛里は城へと急いだ。

既に民は城への侵入を果たしており、兵は民の数に押されていた。

人が通るのも難しい状態だな。

狛里は影に潜った。

普段は影に入るのをあまり好まないのだけれど、こういう時は行くしかないか。

一寸神の俺は、狛里と共に多くの民と兵を通り越して、王のいる謁見の間にやってきた。

さて、此処でも一寸神は通用するのだろうか。

俺は影から浮かび上がるように姿を晒した。

「俺は一寸神!暴徒と化した民がソロソロここまでやってくるぞ。民と話し合い歩み寄って対応すると言うのなら、力を貸してやる。どうする王よ!」

狛里も一緒に現れて、下手な演技で後押しする。

「おお!今巷で有名な一寸神様なの‥‥なんまんだぶなんまんだぶなの‥‥」

今更だけど、よくこんな演技にみんな騙されてくれてたよな。

そこそこ一寸神が有名になってきているのもあるけれど、現代日本ならあり得ないだろ。

尤も小人が実際に現れたら、神と思う人もいるかもしれないけれどね。

「最近よく聞く一寸神か」

「でも話し合いはできないんだよな」

オロ?神パワーが足りないのか?

というかこいつらは上水流の将棋駒たちだもんな。

モブキャラのようには騙せないみたいね。

「なんでだ?話し合いは大切だろ?」

「どうやら一寸神は本当の神ではないようだ」

「この第三大陸に住む王族の慣例を知らないみたいだね」

王族の慣例か。

つまり何か暗黙のルールがあるって事になる。

国家運営には付きもので、日本でも憲政の常道だったり、皇位継承の慣例ももちろんあった。

それらは大抵とても大切なものだ。

憲政の常道が守られなくなり日本の政治は崩壊し、アメリカとの戦争へと向かっていった。

逆に皇位継承は慣例で男系男子が守られてきたから、国内での無駄な争いや分断を避けられ平和な国が造られた。

失敗も成功も、慣例が守られるかどうかにある場合が多いんだよな。

ならば慣例はできるだけ守られるべきものなのだろう。

「そうか。ならその慣例に従うがいい」

俺がそう言うと、王がこちら側に歩いてきた。

そのタイミングで後ろの扉が開け放たれ、民が謁見の間に入ってくる。

王は声を上げた。

「民よ!私はどうやら間違っていたようだな。ならば本日を持って私は退位し、我が息子に後は任せる!新しい王は民の味方だ。要望は全て受け入れられるであろう!」

なんじゃそりゃ?

これがこの第三大陸にある慣例なのか。

おそらく王が民から認められなくなった時、退位して王子に譲位する。

そして民が望む国にするというのか。

ちょっと待て。

それってかなりヤバくないか?

民の要望は『戦争をヤメロ!』も含まれるよね。

つまり王都で住民が反乱したら、そこでゲームオーバーになるのがこのクエストなのか。

だとすると、民の事を考えてクエストを進めてきたのは間違いではなかったようだ。

しかし今回暴動が起こったのは、俺たちがバグを起こしたからでもある訳だけれど‥‥。

王を脅して思い通りにしたのは、かなりこの世界に変化をもたらしている。

「そんな訳で俺たちは、今回のクエストを此処で放棄するよ」

「キミらが何処の勢力かは知らないけれど、上水流は終わったよ。早く攻め込む準備に戻った方がいいんじゃないかな?」

いやそう言われても、俺たちは上水流に隣接地を持ってないんだよね。

攻め込みたくても攻め込めない。

いやちょっと待て。

金を貸して領地を担保にしていたよな。

こうなった状況では返済もできないはずだ。

領地で返してはもらえないだろうか。

駄目だ。

相手が返せないと分かっていても、支払いには猶予がある。

支払いが滞るまで領地を守ってやらなければならないのか?

奪われるかもしれない領地なんて、そもそも担保にしたのが間違いだったという事だね。

一寸神の俺と狛里は、とりあえず皆が集まる麓の町へと戻るしか無かった。


俺たちが麓の町に戻った頃には、新たな事件が上水流領内で起こっていた。

会議室に入って間もなく、やってきたギルメンから報告が入る。

「緊急報告です!上水流各地の町の領主たちが、此花さんが貸したお金を持って逃げ出しているそうです」

「マジかよ‥‥」

もう無茶苦茶だな。

一つのバグでゲームが違う物になっているよ。

これはもう借金が返せないものと見て、上水流王に請求できるか?

などと思っていると更に別のギルメンが会議室に入ってくる。

「更に緊急報告です。御手洗王国でも王都で民が決起しています」

こりゃ上水流だけじゃなく世界が大荒れだ。

貸したお金はもう戻ってこないと考えた方がいいな。

お金は一応国に対して貸しているけれど、それらの国がおそらくは滅んでゆく。

とは言え俺たち以外にも生き残る国はあるだろう。

住民が暴動を起こす前に対処できる国はきっとあるから。

民の救済と減税をすれば良い訳だし、今混乱している国々を侵略して金を集める事で対処は可能。

せっかく中国のように、金を貸し付けて領土を奪う作戦だったのだけれど、失敗に終わりそうだな。

かなり賢いやり方だと評価していたんだけれど、この世界のこのクエストでは通用しなかったか。

「それでどうする?動くなら早い方が良いかもしれないよ」

「御手洗王国王都での暴動はおそらく、上水流と同じように王子が王位を継承して一旦は収まるでしょう。でも上水流同様にお金を持ち逃げされるのなら新しい王はきっと何もできません。つまり民との約束は果たされないまま終わるのです」

「そうなると再び暴動が繰り返されるんじゃねぇか?或いは国が持たねぇ」

「どうしたら良いのだ?お金を出して止めても更に酷くなっているのだ」

「その国の王でもどうにもできないものを、他国がどうこうできる訳がないわ。状況を見て対処しましょう」

「いっそ混乱を加速させたらどうだ?多くの国はもう持たねぇーだろう。だったら待つんじゃくて、早急に引導を渡してやればいい。はっはっはっはっ!」

上水流で領主が金を持ち逃げしたって事は、この世界なら他でも同じ事が起こるはずだ。

つまり金を貸して暴動を止めても、更に状況は悪化してゆく。

返済も期待できない。

だったらこの機に乗じて侵攻するか。

そうすれば、領土拡大は今までよりは楽にできる。

けれど、滅びゆく国と戦う必要もないだろう。

それにそれでも狛里は、困っている人を助けたいと考えているに違いない。

それともう一つ。

悪い奴には天誅か。

民を助けるのが難しいなら‥‥。

「とりあえず一寸神の俺と狛里は、お金を持ち逃げした領主を捕まえる。貸したお金はきっちり返してもらわないとな」

「分かったの‥‥。悪い人はお仕置きするの‥‥」

「想香は悪いけどそのまま本国の守りを頼む」

「仕方がないのです。『ゴキブリはどうして動きが速いのか?』研究して暇を潰すのです」

いやマジであいつら動きが速いよなぁ。

人間サイズなら新幹線並みのスピードで走りやがる。

マジで恐ろしい。

それは良いんだけれど、想香は本気でそんな研究をするのか?

「答えが分かったら教えてくれ」

「‥‥。『どうしてメロンパンは美味しいのか?』研究して暇を潰すのです」

美味しいからに決まっているだろう。

まあやらないとは思っていたけれどね。

「私たちはどうしようか?侵攻するのか。それとも様子を見るのか。或いはやはり民の決起を助けるのか。はたまた混乱を大きくするのか」

雄猫たちには協力してもらっている訳だし、奇乃子たちにも何か活躍してもらいたい。

とはいえ此処で議論を続けたら、おそらく結論は『民を助ける』に決まるのだろう。

お金を貸すとそのお金を廻って問題が起こる。

これ以上お金を出しても、意味が無いどころか逆効果だ。

その選択をしないのなら、侵攻するか何もしないか、或いは混乱を大きくするのか。

俺としては今は様子見してほしい。

滅びゆく国と戦ってこちらに犠牲が出るのは避けたいし、混乱を大きくするのは本意じゃないからね。

滅んでからゆっくりと領地としていけばいい。

でも残る国もあるだろうし、そこに先を越されたくないという考えもある。

後はどうしたいか、それぞれに決めてもらえればいいだろう。

「とりあえず、俺と狛里は直ぐに発つ。後の議論は雄猫と‥‥百万診に任せるよ」

百万診と言ったのは、暗に考えを支持しているからさ。

「一応確認なんだが、このクエストでの立場はそっちの嬢ちゃんが一番上だ。そして強さはそっちの嬢ちゃん。それでちぃとの神様が実質のトップだと理解すりゃいいのか?」

結局俺が勝手にやる事を決めてるからな。

他所(よそ)のギルマスとしては、その辺り確認しておきたいか。

「時と場合によってはな」

「今がその時である理由は?」

狛里の機嫌を悪くさせないような選択が必要‥‥だとは言い辛い。

「それは私のせいなの‥‥策也ちゃんは私がやりたくない事はやらないようにしてくれているの‥‥」

狛里もそりゃ分かっているか。

イスカンデルで旅をしていた頃、狛里は常に天冉を守るよう俺に言っていた。

その理由は天冉の荒魂が暴走するから。

では天冉は何故、常に狛里の思いを汲んで依頼を選んでいたのか。

やはり何か理由があるのだろう。

なんとなく想像はできるよね。

力を抑えて戦って、殺さない事にこだわって。

この世界では生き返らせる事もできるし、冒険者はレベルが下がりはしても死なない。

なのに攻撃力を落とす木刀に喜んで。

狛里は強すぎる。

だから俺と一緒にいるんだ。

イスカンデルに帰る事もできるのに。

誰かの役に立ちたい。

誰かを助けたい。

誰かに必要とされたい。

強すぎるからこその強い思い。

「大丈夫だ狛里。俺はお前の味方だからな」

「僕も味方なのです。百万診さんも奇乃子さんもそうなのです」

「勝手に決めないでもらえるかしら?私は孔聞様に常に賛成よ。でも孔聞様を第四大陸に連れて行く為に全面的に味方をするわ」

「俺も問題ないのだ。狛里ちんとはだいたい選択が一緒なのだ」

「俺は奇乃子に付いて行くって決めてっからな。問題ない」

「自分は女神さまにお任せしています。つまり皆についていきますよ」

なんだかんだ俺たちはまとまっているんだな。

「みんなありがとうなの‥‥だったら‥‥」

「そんな訳で俺と狛里は行ってくる!後は任せたぞ!」

「わーったよ。結局強い嬢ちゃんにみんな付いて行くってこったな」

分かってないけどギルマスが納得してくれて良かった。

つか狛里。

後の事はみんなに任せような。

狛里の事だ。

どうせ『だったら民を助けてあげてほしいの‥‥』とか言うつもりだったのだろう。

もうお金を貸すのも問題があるし、そんな事をしたら余計に混乱が大きくなる。

そしたら死者もきっと増えるのだ。

大切なのは狛里のバイオリズムを最高の状態に保ちつつ、良い結果を出す事。

決して狛里の言う通りにして破滅する事ではないってね。

そんな訳で後はみんなに任せて、一寸神の俺と狛里はお金を持ち逃げした領主を探しに行くのだった。


大陸の大きさは、だいたい日本本土が長方形型になるように海を埋め立てたくらいだ。

だから俺が本気になれば、一度会った事のある領主を探索魔法を使って見つけるくらいは容易い。

直ぐに一人目の領主を見つけられた。

海老嶋領の最北にある、とある村を歩いている所だった。

俺たちは空から領主の前に降り立った。

「お金を持ち逃げした領主、見つけたの‥‥」

「お前は、あの時の神の使いか?!」

「そうなの‥‥。貸したお金を持ち逃げは許さないの‥‥」

「これには訳があるんだ。そ、そう。王は代わり、上水流はもう持たない。だから俺は海老嶋に、助けを求めようと向かっている所なんだ」

何をどう助けてもらうのやら。

町ごと売り払おうっていうのか?

「そうするとどうなるの?‥‥」

「町も民も助かる!みんなが助かるんだよ!」

「そうなの‥‥」

おい狛里。

嘘に騙されるんじゃない。

おそらくこいつは、自分だけが助かろうとしている。

俺はなんとなく嘘は分かるのだ。

それに町と民を助けるには、町を海老嶋に移譲しないと無理だろう。

しかしこのクエストでは、領地を譲る事などできない仕様のはず。

つまり他国に町を助けてもらうなどありえない。

「でもその金を持って行かれたら、困るのは上水流の王だろ?俺たちも貸した金が返って来なければ困る。金は置いて行け。町を移譲して助けてもらうと言うなら、俺たち等々力が助けてやるよ」

「くそっ!俺は生き残るんだ!お前らは死ね!」

あらあらアッサリと本性を現しましたか。

一応領主もそこそこ強いんだよね。

でも俺たちの敵ではない。

「いきなりなんなの‥‥暴力は駄目なの‥‥」

いや狛里がそんな事言っちゃ駄目だろ。

領主は腹に木刀をぶち込まれ、倒れて悶絶していた。

木刀は相手なりに威力を弱めるみたいだな。

だから強い相手にはそこそこの威力で攻撃してしまうみたいだ。

まあ普通でも木刀で頭を思い切り殴られれば死ぬ可能性がある訳で、それと同じくらいには攻撃できるんだよ。

「なんだかまた死にそうなの‥‥」

狛里が訴えるような目で見てきた。

「どうやらその木刀は、相手なりに攻撃力を抑える所があるみたいだな。でも腹なら死んだりはしないよ」

とは言え領主は苦しそうだ。

俺は少しだけ回復魔法をかけてやった。

「はあ、はあ、はあ、はあ‥‥」

「金を返すなら見逃してやるぞ?」

「分かった‥‥。金は返す」

領主はそう言って、アイテムボックスから金を取り出した。

そう言えば王族も領主もアイテムボックスが使えるんだよな。

ただそこに金を入れるというのは自分のものにするのと同義だから、町の財源を入れる事は普通ないらしい。

完全に自分のモノにしていたよね。

俺は狛里の受け取った金をアイテムボックスに入れた。

「じゃあこれで‥‥」

「いやちょっと待て」

去ろうとする元領主を俺は止めた。

「な、なんでしょうか?」

「お前民を見捨てて来たんだよな。その罰は受けてもらわないと駄目だ。なあ狛里」

「悪い事をした人にはお仕置きするの‥‥痛い思いをしたらもう悪い事はしなくなるの‥‥」

「許してください。何でもしますから」

元領主は力の差を分かっているみたいだな。

ならばおそらく裏切る事もないだろう。

「お前、俺たちの所で働け。戦闘員として雇ってやる。期限は俺たちが第四大陸に行くまでだ。どうだ?それで全て帳消しにしてやる。いい話だろ?」

「それはもう、喜んで仕えさせていただきます」

元王よりも少し弱いけれど、冒険者と比べても上位の強さを持っている。

こういう奴は味方にしておいた方がいいよな。

「それじゃ山の砦に言って此花策也を訪ねてくれ。全てそこで登録するから」

「分かりました。では今すぐ向かわせていただきます」

「逃げても無駄だからな。裏切ったら次は処刑だぞ!何処に隠れても俺は見つけられるからな!」

「はい!」

元領主はそそくさと逃げるように去っていった。

「悪いが狛里。これでいいか?」

「今度こそちゃんと民の為に働かせるの‥‥裏切ったら私が罰を与えるの‥‥」

元領主のおっさん。

裏切ったら死ぬより辛い事になるから気をつけろよ。

俺はなんとなく、おっさんが裏切らない事を祈るのだった。

このような感じで、俺たちは次々と逃げた領主を捕まえてはお金を取り返した。

そして皆を仲間にしていった。

そんな中でも領主が逃げたという情報は続いて入って来ており、俺たちは一日中大陸を飛び回っていた。

「とりあえず全部片付いたな」

「お金を持って逃げる領主が多すぎるの‥‥この世界おかしいの‥‥」

そりゃまあゲームモデルの世界だからな。

王が代わった時の行動がある程度同じになるのは仕方がないさ。

それにどうやら裏では海老嶋が動いているみたいなんだよね。

『お金を持ってきた領主は助けてやる』とかなんとか工作しているみたいだし。

さてソロソロ麓の町まで戻るか。

皆は結局いくつかに別れてやりたいようにやっていた。

お金を貸す事はできなくても、民を助け話し合いを手伝ったり。

百万診は様子見を訴えていたけれど、結局孔聞に付き合って奇乃子たちに付いていっていた。

そして猫なめ連中は、早く俺たちが大陸統一できるように、簡単に落とせそうな所を攻略に向かっていた。

全く今攻めても結果はさほど変わらないだろうに。

奇乃子たちもそうだけれど、じっとしていられなかったんだろうな。

まあとは言え、俺たちが手を出す事で混乱は更に大きくなる。

手出しできない海老嶋だけが、やはり最後まで残るのかな。

そんな事を本体の俺が考えている時だった。

百万診に付いていた一寸神の俺から、訃報が入ってきた。

別にこの世界、生き返る事ができるのだから大した話でもないだろう。

でも等々力所属の将棋駒にとっては、それはゲームオーバーという事になる。

殺られたのは孔聞だった。

「話し合いだと?笑わせるな。こっちはもう三十回もこのクエストに挑戦してんだ。そう簡単に第四大陸に行かせられるかよ」

勝ち目が失くなったからといって、素直に戦いを降りる冒険者ばかりではない。

悔しくて相手を道連れにしようと考える者もいるのだ。

そしてそんな思いを隠し、虎視眈々命を狙っている者もいる。

孔聞はそんな奴に騙されて殺られていた。

百万診はそんな敵を蹴散らして、直ぐに孔聞に駆け寄った。

「孔聞様!回復が効かないわ‥‥。蘇生‥‥」

蘇生された孔聞が目を開いた。

「女神さま‥‥また騙されたみたいです」

それぞれがやりたいようにやって、だいたい上手く行っている最中の事だった。

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