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想香と俺がマジでハーフ?狛里対ギルマス!

物事を判断する時、常識を持って考える事は大切である。

常識とは先例の事であり、先祖代々生き方が違えば常識も変わるものだ。

俺には日本での常識が染み付いており、それはアルカディアやこのウインバリアでは常識ではないのかもしれない。

しかしアルカディアもウインバリアも、おそらく元日本人の神様が創った世界だ。

ならばきっと、完全に俺の常識から外れたものも少ないだろう。

クリアできないゲームなんて無い。

あればそれはバグっているだけだ。

そしてクリアする為の方法は、決して全うなやり方だけとは限らない。


この日はいきなり想香がやってきて騒いでいた。

「僕の種族が『妖精人間』になっているのです!」

つまり妖精と人族のハーフって事かな。

二日前に姫ちゃんと一つに戻った訳で、それくらいはまあ予想していたよね。

「って、俺も『妖精人間』になっているぞ?!」

いや予想はしていたけれど、実際に見るとやはり驚きはあるな。

そして此処にオリハルコンアメーバ神という妖凛要素も加わるんだけどさ。

「なんとなくこういうのを見ると、此処がゲーム世界だと納得するのです」

「確かになぁ。妖精が人間(ヒューマン)として扱われているし」

尤もエルフやドワーフも、妖精の一種と言えばそうなんだよね。

でも地球でそれを人間(ヒューマン)にしてしまった奴がいた。

誰だか知らないけれど、そいつのお陰で今の異世界が成立している。

エルフやドワーフが人間であるのは、今ではもう常識なのだ。

ただし妖精はまだそこまではいっていない。

ウインバリアから始まって、いずれはそうなる日もやってくるのかねぇ。

さて今日もやる事は特にない。

少し国家予算も増えて兵を増員はしたけれど、必要なものは既に昨日作り終えてしまった。

仕事ができるってのもちょっと考えものかもしれない。

直ぐにやるべき事が失くなってしまう。

天冉を不老不死にする方法も考えてはいたけれど、世界間移動は基本的に神のゲートと呼ばれる『異空間トンネル』を使う事になる。

俺自身それを作る事はできないんだよなぁ。

「ん?トンネルか‥‥」

「トンネルがどうかしたのですか?」

想香が俺の顔近くまで顔を寄せていた。

ちょっとなんか距離感が近くね?

姫ちゃんと一緒になった事で、想香との距離が近くなったのだろうか。

元々割と近かったけれど、もう想香は他人ではない気がする。

二人目のみゆきであり、俺の半身にもなってしまったのかもしれない。

「ほら、前に言ってなかったっけ?山にトンネルを掘って王都を最前線にすれば、狛里と想香を無双させられるって」

「言ってないですよ?策也タマの妄想なのです」

ヤバいな。

思考が多くて考え事が一瞬で終わるからか、だんだん現実と想像の区別がつかなくなっているような気がする。

いやそうではないか。

俺は日本で暮らしている時から、夢と現実の区別がつかなくなっていた。

だから北都尚成として二世界生活もできていたのだ。

それに姫ちゃんが俺の中からいなくなった事も、もしかしたら関係しているかもしれない。

魔法記憶と記憶整理は、姫ちゃんに任せていたからね。

これからはまた、寝ている間に夢として記憶整理が行われる事になるのだろう。

でもトンネルの事を考えていたのは、姫ちゃんに任せていた時だよな。

やはり誰かと共有していない記憶なんてものは、いずれ消えて行くって事なのだろうか。

「とにかくだ。俺たちは今何処にも攻められずに困っている。でもトンネル掘ってマップを繋げてしまえば、攻める事は可能なんじゃないかなって」

「その通りなのですよ!どうしてそれを早く言わないのですか?」

「ん?やっぱりできると思うか?」

「狛里さんならチョチョイのちょいで山もアーチに変わるのです」

やっぱりそうだよな。

ゲームだという考えが、リアルの常識を忘れさせていたか。

いやでもクリアできないゲームを無理やりクリアするには、データを書き換えるってのも普通にありえる話だよね。

『ん?どうした妖凛?』

俺の中で妖凛が何かを伝えてきていた。

『ふむふむ。俺の中の悪しき心は妖凛ストレージに移動させていた?』

なるほど。

俺の記憶が少し曖昧になっていたのは、妖凛のせいだったみたいだ。

と言うかおそらく親切心でやってくれていたんだよね。

『なになに?わたしは邪神だから、邪の心を食う事によって強くなれる。だから親切心って訳でもないと』

素直だなぁ。

こんな可愛い子が邪神なら、ほとんどの人が悪い人になりそうだ。

妖凛は偶々邪神として生まれてきただけで、根本的にはとてもいい子なんだよ。

そもそも神だろうと人間だろうと、完全な善も悪もない。

ただ善であろうとしてくれていれば、それでいいんだよね。

「まあどっちにしても、今は雄猫の返事待ちだ。ソロソロ答えを出してもらいたい所だけれど‥‥」

そんな事を考えていたら、遠くに高い魔力を持った何かを感じた。

この魔力は‥‥雄猫か。

どうやら話を付けて報告に来てくれたようだ。

俺は直ぐに砦の中に招き入れて、応接室で話を聞くことにした。


「それで結果は‥‥上手く話ができたみたいだな」

雄猫を見て、俺はなんとなくそう確信した。

「分かる?そうだね。一応等々力に味方する事で話はついたよ」

一応?

雄猫の応答は少し歯切れが悪いように感じる。

「何か問題でもあったのか?」

「問題というかね‥‥。ギルマスから条件を付けられたんだよ」

条件か。

今回は協力するから、次は俺たちに協力しろとでもいうのだろうか。

「条件ってのは?」

俺がそう尋ねると、雄猫はチラッと想香を見た。

「この子、もしかしてあの時の?」

「ん?ああ。そう言えば暗殺に来た時に見ているよな」

「そうなのです。僕がこの等々力王国の最高権力者、兎束想香なのです!」

いや別に間違っちゃいないけれど、やたらと偉そうだな。

「へぇ~よろしく。前よりもなんだか更に強くなっているように感じるんだけれど、気の所為かな?」

「気の所為ではないのです!僕は先日『人と妖精のハーフ』になったのです!」

「えっ?凄いね。確か種族変更はとてもレアなアイテムが必要だったと思ったんだけど。しかもそれが人と妖精のハーフならレア度も半端ないよ?」

そうなのか。

ヤバいな。

そんなの全然知らないんだけどさ。

「まあ方法は一つとも限らないしさ」

「まさか、えっ?でも第四大陸にはまだ行けてないんだよね?それに第四大陸の課金の湖で人種変更する場合、一千億円が必要になるのに」

「方法は二つとも限らないって事さ」

いや色々教えてくれてありがたいんだけど、そろそろこの話は忘れてほしい。

まさかそんなに人種変更が難しいとか。

いやコレは当然のはずなんだけどな。

そもそも人種変更なんて不可能なんだよ。

だけど何処かゲームモデルの世界ってのがあるから、割と簡単にできるものだと思ってしまう。

何が常識で何が非常識なのか。

異世界ではその区別が難しいよ。

「今更貴方たちの事に驚いても仕方がないよね。それでギルマスからの条件なんだけど、私が殺られたあのもう一人の子。その子と勝負がしたいみたいなんだ。それで負けたら協力するって事になった」

狛里と勝負だと?!

わざわざレベルを下げる選択をしなくてもいいのに。

なるべく手加減はさせるけれど、この世界は死んでも死なないからどうしてもストッパーは緩むんだよ。

しかしつくづく最強チートってのは、他人から挑まれる存在なんだな。

でも気持ちが分からなくはない。

俺もその辺り気にならないと言えば嘘になるからな。

多分俺なら狛里に勝てるとは思うけれど、単純に魔力なら圧倒的な差があるし、まともにやれば勝てる気がしない。

勝てると思っていても、魔力で押し切られて負ける可能性も十分に考えられる。

怖い怖い。

やっぱり俺は戦いたくなんてないよ。

もの好きってのはいるもんだ。

「狛里には‥‥えっとそいつ狛里って言うんだけど。手加減するようには言っておくけど、死ぬ可能性が高いぞ?」

「そうです。僕なんかミジンコ扱いされるくらいに強いのです。策也タマでも勝てるかどうか分かりません。今の竹槍策也タマなら負けるのです」

「そうなの?えっと、もしかして策也の方が強かったりするの?」

「状況によるかな。ただシンプルな強さは狛里の方が圧倒的に上だ」

「じゃあその狛里って子が一番強いって事でいいのかな?」

「問題ない」

「ならば‥‥」

そんな訳で俺たちが猫なめの協力を得る為に、狛里とギルマスの戦いが決定してしまった。


次の日、狛里対猫なめのギルマスとの戦いが行われようとしていた。

場所はエリア【砂浜の海岸】の北にある岩山砦の近く。

足場が悪く戦い辛い所ではあるけれど、心置きなく全力を出せる場所でもあった。

いや全力を出したらこの世界が吹き飛ぶかも知れないけれど。

幸い狛里は、広範囲を破壊するような魔法は持っていない。

そんなものを使わせたら、星がいくつあっても足りないよね。

ちなみに同じ魔法でも、世界によってその効果には多少違いがあったりする。

俺がこの世界を破壊するだけの魔法が使えるかどうかは、やってみなければ分からない。

ただ狛里が広範囲破壊魔法を使えたら、世界の消滅は間違いないとは思うけれどね。

「なんでぇ!相手は可愛い嬢ちゃんかよ。雄猫!お前はこんなのに負けたのか?」

「そうだよ。全く手も足も出なかったね」

「にわかには信じらんねぇなぁ。でも俺はこう見えてギルマスなんでね。油断せずにやらせてもらうぜ!」

「そうだね。そうした方が良いと思うよ」

こいつがギルマスかぁ。

雄猫のイメージとは全く違う印象だ。

山賊の親分って感じか。

完全な武闘派だ。

魔力はギルマスだけあって雄猫よりも上だけれど、それでも精々レベル二百三十くらいだろうか。

おそらく第四大陸でも最強レベルだとは思う。

だけど‥‥。

「それでは対戦を初めます!ルールは死ぬか降参した方が負けとなります。それ以外にはありません!それでは‥‥始め!」

一応審判役は猫なめのメンバーがやってくれていた。

と言っても、そんなものが必要なのは開始の合図だけだろうけれどね。

「‥‥」

狛里はいつも通り自然体だ。

相手から向かってくるのを待っている。

ギルマスくんは割と慎重だな。

迂闊には飛び込んでいかないか。

流石はギルマスと言った所なのだろうかね。

ちゃんと相手の強さは認識できているみたいだ。

「ちょっと待て、どういう事だ?こんな嬢ちゃんがまるで猛獣に見えるんだが?」

そう言ってギルマスは、後ろの岩まで跳躍して下がった。

そして吹き出す額の汗を腕で拭う。

「猛獣は失礼なの‥‥。むしろハムスターなの‥‥」

いやそれはないだろ。

見た目はそうでも、狛里がハムスターだったら全米が驚くわ。

魔力レベルは三十程度にしか見えないんだよな。

なのにこの圧力。

普通は混乱するか。

それにカチューシャを付けているにもかかわらず、魔力が抑えきれなくなっている?

「しかし俺もギルマスの頭をはってんだ。この程度のプレッシャーには負けねぇ。うおぉー!」

こりゃなかなかの魔力だな。

正にスーパーなんちゃら人の如く、魔力を外に吐き出した。

でも狛里にしてみれば『だから?』と思う程度だろう。

どちらかと言うとギルマスが勇気を振り絞る為のものだな。

まだ狛里は何もしていないけれど、見ている猫なめギルドのメンバーはかなり疲れている様子だった。

「俺はもう見てられねぇ‥‥」

「立っているだけで辛くなってきたぜ」

「ギルマスは弱くねぇよな?何か次元が違う感じがするんだが?」

「おいっ!しっかりしろ!メグミが倒れた!誰か回復を!」

「何を回復すればいいの?メンタル回復かしら?」

「こっちも駄目だ!担架だ!担架を持ってこい!」

なんかよく分からないけれど、大変な事になってきたな。

まだ何もしていないし、狛里はいつものまんまなんだけど。

それだけこのギルマスが強いと思われているのだろうか。

いや、そう言えば狛里には特殊な能力があったな。

狛里の常態能力に『狛里絶対固有』という絶対的な固有能力がある。

俺の魔法コピーでも取り込めない力。

この狛里の能力は、あの作品の『オラに力をー』な感じで気を集めるように、何もしなくてもみんなから魔力を集めてしまうのだ。

普段はほぼその影響を受けないけれど、戦いとなるとじわじわ魔力をドレインされる可能性がある。

狛里はイスカンデルが生んだバグの中のバグ。

あらゆる世界を見ても、此処まで大きな魔力を扱える者はまずいない。

既に神を超えた存在なのだ。

「俺はやるぜ!戦わずして負けるなんてありえねぇ!」

あーあ、ギルマスまで混乱しちゃって。

みんな離れて見ているし、大した被害はでないだろう。

ギルマスは初めて狛里にパンチの連打を繰り出した。

狛里は表情を変えずそれらを全て両手で止めていった。

衝撃波は狛里の後ろへと流され、そちらで見ていたギルメンたちがふっとばされていた。

「うお!」

「ギルマス!マジだぞ?」

「しかし‥‥。これだけの攻撃を受けて‥‥あの子は何故立っていられるんだ?」

「もしかして勝利を信じる心か?」

「いやそんなんじゃねーし。普通に涼しい顔をしたままだし」

此処まで強いとみんな混乱するしかないのだろう。

だけれど常識を大きく逸脱しすぎたら、それはもう一周回って納得するしかなくなってゆく。

「この人結構強いの‥‥だから倒す為には攻撃が必要なの‥‥でもどれくらいで攻撃していいか分からないの‥‥」

つまり中途半端に強いから、それなりの攻撃をしたいけれど死線(デッドライン)が分からないと。

ギルマスは攻撃するまでに時間をかけすぎたんだ。

だから狛里の魔力が練り上げられすぎた。

狛里と戦うなら、早急に手を出させないと駄目って事か。

「狛里!ゆるーくだ!ゴキブリを指で弾くくらいで試してみろ!」

これくらい弱い攻撃から始めないと、今の狛里は危険極まりない。

「対ゴキブリ用コンパチなの‥‥」

あれ?ゴキブリ相手じゃマズかったか?

アリンコくらいにしておくべきだったかもしれない。

襲いくるギルマスの額に、狛里は一発コンパチを入れた。

またの名を『デコピン』とも言うアレね。

ギルマスは一瞬で吹き飛ばされていた。

額が陥没している。

こりゃ死んだか?

攻撃面積が少ないのはマズかったかもしれない。

審判役の子がギルマスに駆け寄った。

脈を見て手を振る。

どうやら決着がついたみたいだな。

女性が一人ギルマスの所に駆け寄っていた。

そして急いで魔法をかける。

蘇生できるギルメンがいるみたいね。

良かった良かった。

しかし狛里は戦闘モードに入ったら、直ぐに魔力を使わせないと危険だと分かったのは収穫だな。

一応カチューシャで魔力レベル三百そこそこには抑えてあるはずなんだけれど、今回は魔力レベルの高い者が百人以上集まっていたのがいけなかったのかもしれない。

絶対チートに磨きがかかってきているよなぁ。

魔力をべらぼうに食うマジックアイテムでも付けておいてもらおう。

俺は心底そう思った。


戦いの後、雄猫との約束は交わされた。

少し苦笑いする雄猫が印象的だった。

雄猫ですら思った以上の差に驚いたのだろう。

いや俺も驚いているからな。

これはもしかしたらの可能性なのだけれど、狛里の寿命が短くなった事も、不老不死になるのが難しいイスカンデルに産まれた事も、この強さが理由だったのかもしれない。

さて約束の内容だけれど、今後俺たちは前もって雄猫に情報を伝え、そして山ノ内を攻めるのを手伝ってもらう。

基本的には兵を最小限まで減らし、できるだけ戦わないようにするって話だ。

或いは戦うにしても、兵は全て町の外で戦わせる事になる。

これで割と簡単に領地を奪っていけるだろう。

全てが決まった後、俺は一人闇の魔法実験場に籠もった。

狛里の魔力を抑える為の新たな装備を作る為だ。

普段はどちらかというとコントロールしやすくするもので、武器として使えば力を抑えられるようにしよう。

魔力を抑えてしまうと、いざって時に対応が間に合わなくなる可能性があるからね。

しかしみゆきの時にも頭を悩ませたように、魔力コントロールってのはアイテムじゃ難しいんだよな。

それにみゆきと同じ方法は使えない。

クラーケンの腕輪のような生きたアイテムに、魔力を食わせるのが一番簡単で効率はいい。

なんせその魔力によって身を守ってくれる、ある種のマジックプロテクションみたいだからね。

でもそれは既にリビングバンテージで行っており、強化改造するとなると今の相性の良さが一度リセットされる可能性がある。

別の生きたアイテムを追加するのも、競合というか本人とリビングバンテージ両方の相性が問題になってくるだろう。

ちょっと勿体ないけれど、無駄に魔力を使う方法で調整できるようにするか。

ならば大した魔石も必要ないし、狛里も気に入ってくれる物が作れそうだ。

基本の形は妖糸で作るセーラー服の赤いスカーフにする。

リビングバンテージがそこも今までは形作って来たけれど、その部分を減らす事で他にリソースが回せるはずだ。

パリィディフェンスのレベルも上がるだろう。

装備した状態でできる事は、スーパーなんちゃら人のように体から光りのオーラを吹き出させるものにしよう。

さっきのギルマスみたいに、相手を威圧する為に使える可能性も微レ存あるかもしれない。

だけど強そうに見えて、『実は魔力を無駄に使って弱くなってますよー』みたいな。

ちょっとネタも入っていて面白いかもしれない。

ダンジョンでライトの魔法すら使えない狛里にとっては役立つだろう。

目がいいから暗いくらいは問題ないだろうけれどね。

全属性付与は付けた方がいいかな?

カチューシャを外した時用に‥‥。

いや、確かもう狛里は全属性付与できたはずだ。

それはいいだろう。

そしてスカーフを外せば木刀になるのはどうだろうか。

コレがまた硬いだけの木刀で、攻撃力がメチャメチャ弱くなるようにする。

普通に戦っても相手を殺さずに済むなら、狛里もきっと戦いを楽しめるはずだ。

弱くなる為の魔道具を作るとか、なんだか少し笑えてくるな。

でも割と楽しいぞ。

俺はいつも以上にアイテム作りを楽しんだ。


「という訳で、狛里にコレをプレゼントだ」

「策也ちゃん‥‥ありがとうなの‥‥これ、とっても凄いの‥‥」

狛里はそう言って、まずは木刀を高速で振り回していた。

「どうだ?」

「全力で振っても木刀が止まって見えるの‥‥」

いや流石に止まってないぞ。

でも狛里にしては明らかに威力が落ちている。

これだけ抑えられれば十分だ。

そしてスカーフを装備すると、リビングバンテージが作っていたスカーフは‥‥消えた。

ちゃんと空気を読んでくれているじゃないか。

優秀なリビングバンテージだ。

「魔力を送り込んでみてくれ」

「分かったの‥‥。あわー‥‥なんか格好いいの‥‥」

「どこまでもただ魔力を光りに変えてくれる。魔力調整に使えそうか?」

「ちょっと試してみたいの‥‥」

「よし!来い狛里!」

俺は両手のひらを狛里に向けてパンチを要求した。

ミットは無いけれど大丈夫だよな。

カチューシャを付けている今なら、魔力では俺の方が圧倒的に上だし問題はないだろう。

まずは普通にパンチしてくる。

流石狛里だ。

魔力差があってもパンチが重い。

パンチを打ちながらも魔力を集めているというのか。

或いは俺の魔力も持っていかれている感じがある。

俺なら止める事もできるけれど、今はお試しだしそのままにしておこう。

今度は少し時間を置いてパンチしてくる。

やはり先程よりもパンチが重くなった。

俺じゃなきゃみんな死んでるよコレ。

そして今度は光を発してパンチしてきた。

おっ!最初のパンチよりも弱いぞ。

光を発して逆に弱くなるとか、スーパーなんちゃら人もビックリの仕様だろう。

「策也ちゃん、これ面白いの‥‥。もっと遊びたいの‥‥」

「そうか。それは良かった。これから戦争も再会する予定だし、狛里にも働いてもらう事にするよ」

むしろ今まで戦わせないで良かったな。

まあ冒険者は殺しちゃっていたけれど、兵まで相手していたらヤバかったかもしれない。

当然足を狙って戦うにしても、足がモゲて吹っ飛べば死ぬのも出てくるだろうし。

何にしても、こうして戦争再会の準備は整った。

俺は狛里が楽しそうに光っているのを見て、笑みが抑えられない気持ちになっていた。

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